Googleはクラウド経由で量子コンピューティングを提供予定

By Алексей М

従来のコンピューターをはるかにしのぐ性能を持つ可能性を秘めた「量子コンピューター」に関しては、Googleから世界初の市販量子コンピューター「D-Wave 2」が登場しているように、多くの企業や研究機関が研究・開発に取り組んでいます。そんな量子コンピューターの恐るべき性能を活かすべく、Googleは量子コンピューターによる計算能力をクラウド経由で提供するサービスを計画しているとBloombergが報じています。

Google’s Quantum Computing Push Opens New Front in Cloud Battle - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-07-17/google-s-quantum-computing-push-opens-new-front-in-cloud-battle

Google wants to sell quantum computing in the cloud
https://www.engadget.com/2017/07/17/google-puts-quantum-computers-to-work-in-cloud/

Googleは科学研究所や人工知能の研究者に向けて、量子コンピューターへの早期アクセス権を提供しています。この目的は、量子コンピューティング技術のためのツールやアプリの開発を促進し、最終的には既存のクラウドサービスよりも速くて強力なものを実現するためです。Bloombergが入手したGoogleのプレゼンテーションスライドには、「Embryonic quantum data center(初期の量子データセンター)」と呼ばれる新しい研究所を含むGoogleの量子ハードウェアに関する詳細が記されているそうです。また、その他のスライドには、開発者に量子コンピューターのコードを書かせるためのオープンソースの取り組み「Project Q」に関する情報も記されているそうです。

スタンフォード大学の量子コンピューティング研究者であるピーター・マクマホン氏は、「Googleが量子ハードウェアを開発していることは公然の秘密であり、将来的にはクラウドサービスとして提供されることになるだろう」「これらのシステムは従来のコンピューターでは扱えないような問題を解決するために利用されるでしょう」「量子コンピューティングはまだ長い研究段階の途中にあるので、その機能については熱く議論されているところです。それでも、量子コンピューティングを商業化しようとするGoogleやIBMの試みは、急速に成長しているクラウド市場における新たな競争段階を切り開くことになる」と語っています。

By IBM Research

また、ローレンス・リバモア・ナショナル・ラボラトリーのジョナサン・デュボイス氏は、Googleのクラウド経由で量子コンピューティングを提供する計画はかなり明確なものになってきており、政府と学術研究家は自由にアクセスできるようになる契約があると語っています。

量子コンピューターを運用するには大規模な冷却装置などが必要になるため、実際に購入して運用するよりも、インターネット上でレンタルして運用するという手法が主流になると考えられます。クラウドサービスの主流といえばGoogle Cloud Platform、Amazon Web Services、Azureの3つですが、量子コンピューターにより計算時間が大幅に削減できるようになれば、提供しているクラウドサービスの価格低下にもつながるため、競合他社と差をつけるためにも量子コンピューティングの実用化は重要なものになってくるはずです。

海外ニュースメディアのengadgetは「Googleにとっては量子コンピューティングの提供サービスは一刻も早く実現したいものであるはず」と記しているのですが、その理由はとても単純で、IBMは既に専用の量子コンピューティングプラットフォームへのアクセスを提供したり、業務用の汎用量子コンピューターを構築したりしており、Microsoftも同分野に興味を抱いていると語っているため。

Googleは多くの優れたクラウドサービスを提供していますが、量子コンピューティングを用いたクラウドサービスとなると、現在と同じようなシェアを獲得できるかどうかは不明です。「世界初の量子コンピューティングによるクラウドサービス」となれば、競合サービスよりも短期的にではあるもののメジャーになることが可能というメリットがあるため、多くの企業が実現に向けて開発を進めているとみられます。