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量子コンピューターは2017年に「研究」から「開発」の段階に移行するとNatureが発表

By CyberHades

物理的なコンピューターの限界を超えることができる「量子コンピューター」は、GoogleやMicrosoftをはじめ、IT企業の巨人やスタートアップによって実用化を目指して研究が進められています。そんな中、2017年は量子コンピューターが「研究」という段階を超えて「エンジニアリング」の領域に移行する年になるとNatureで語られています。

Quantum computers ready to leap out of the lab in 2017 : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/quantum-computers-ready-to-leap-out-of-the-lab-in-2017-1.21239


Googleは2014年から既存のスーパーコンピューターを超えた計算性能を持つ、超伝導を用いた量子コンピューターに取り組んでいます。対するMicrosoftは「トポロジカル量子コンピューター」の開発を進めているなど、異なる理論で動作する量子コンピューターの研究が進められています。量子コンピューターの研究に取り組むスタートアップも増えており、エール大学の物理学者であるRobert Schoelkopf氏が在籍する「Quantum Circuits Computer」や、IBMの元従業員である物理学者のChad Rigetti氏が率いる「Rigetti Computing」なども、近いうちに量子コンピューターの分野で技術的なマイルストーンに達すると言われています。

各所で行なわれている量子コンピューターの研究の多くは同じポイントにさしかかっているため、研究で論証された量子コンピューターの構成装置を使った物理学実験の必要性が生じており、Schoelkopf氏は「新たな挑戦は『エンジニアリング』にある」と述べています。


Microsoftが取り組むトポロジカル量子コンピューターは、まだ物理的実験が行える段階には達していませんが、Microsoftはデルフト工科大学からこの分野の第一人者であるLeo Kouwenhoven氏ら4人の研究チームを雇用したとのこと。Kouwenhoven氏は「私は生徒たちに『2017年は特別な年になる』と伝えています」と述べており、短期的な見込みが立っている模様。その一方で、アメリカ国立標準技術研究所のDavid Wineland氏は「(量子コンピューターの今後について)長期的には楽観的な見通しを立てていますが、『長期的』がどれくらいの期間になるのかはわかりません」と語るなど、慎重派の研究者も存在します。

量子コンピューターが実用化すれば、従来のコンピューターでは「0か1」かでしか存在できないビットが同時に2つの状態で存在できる「重ね合わせ」や、2つの量子ビットが同時に同じ状態になる現象「量子もつれ」によって、大量の計算を一度に行なうことができるようになります。詳しい量子コンピューターの仕組みについては、以下の記事を読むとよくわかります。

従来のPCの1億倍高速な量子コンピューターはどのような仕組みで動いて物理的限界を突破しているのかがわかるムービー「Quantum Computers Explained」 - GIGAZINE

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in ハードウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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