絵を描くことと良いプロジェクトマネージャーであることに共通する3つ要素とは?
By Hamza Butt
「仕事のプロジェクトを完結させることと、1枚の絵を仕上げることは、実は同じものである。」時おり耳にするこの考え方ですが、ITソリューションを提供する企業「ironSource」で製品開発を担当するDaniel Herman氏は、実際に絵画のレッスンを受けた経験をもとに、マネジメントと絵を描くことに共通する要素を3つのポイントで解説しています。
How learning to paint made me a better product manager
https://thenextweb.com/business/2017/07/04/learning-paint-made-better-product-manager/#.tnw_bhbiYIM9
◆一歩下がって大きな「絵」を眺めること
絵を学び始めた当初は「完璧な『手』の部分を描く」といった、部分に力を注いでいたというHerman氏でしたが、同じところばかり取り掛かってしまうので「これでは前に進めない」と感じるようになったとのこと。そこから、今度は一歩下がってキャンバス全体を眺めることで、ようやく真っ当な時間で1枚の絵を描き上げられるようになったそうです。
Herman氏は、プロダクトデザインにおいても同様のことが言えると語ります。あまりに細かい部分にかかりすぎると、プロジェクト全体が前に進まなくなり、「無限のループ」にはまり込んでしまうことで不満が募り、そして納期に遅れてしまう、という悪い結果しか残せない状況に陥ります。Herman氏がここから学んだことは、「全体の大きな絵は一定でも、細かい部分は常に変わり続けるもの。一歩引いて全体像を眺め、細かい部分と全体を『重要性』の観点で見極めることは、プロジェクトを成功に導く上で不可欠なものです」とのこと。
By jev55
◆忍耐強くなること:全てがスタートラインに立って揃うまでには時間がかかる
描き始めの段階で、最終的な絵の仕上がりを完全に予測することは難しいものです。しかしその段階においては、「結果が出るまでには時間がかかるもの」と理解しておくことが重要。仕事の仕上がり具合というものは、プロジェクトが終盤に差し掛かってきてやっとわかるもので、細かい部分の寄せ集めが1つの大きな製品になることを感じられるのは一番最後です。
絵を描く時でもこれは同じことで、全体の半分の段階ではどんな仕上がりになるのかはわからないもの。ここで「完璧なものの仕上げないと」という焦りが表れてブラシ使いが乱暴になってしまうと、最終的な仕上がりは雑なものになってしまいがちです。
何人もの人が関わるプロジェクトになると、それぞれに任せていたパーツが最終的に組み上がって機能することがわかるまでには時間がかかり、フラストレーションがたまるものです。しかし、ここで焦りに負けてしまうと手抜きが生じてしまいます。Herman氏はプロジェクトを統括する人として、「忍耐強くなって、全てが揃うまでには時間がかかることを理解すべき。素晴らしい未来が実現するまでには時間がかかるものである、というメッセージをチーム全体に届けることが重要です」と記しています。
By Thomas Hawk
◆時に振り返って評価を行う
絵を描くという行為は時間や労力、創造性を使います。そして、ひとたび作業を始めると一気に夢中になってしまうものです。しかし、ある時にふと振り返ってできあがったものを見つめ直すと、自分が望んでいたレベルに達していないという現実に直面せざるを得ない時があります。
自分では波に乗って描いていたつもりの絵でも、時間がたってから見ると実はごく普通の内容だった、という悲しい現実は絵描きだけでなく、自分で作曲している人や文章を書いている人であれば一度は経験したことがあるはず。これは仕事のプロジェクトでも同じことが言え、途中の評価を見誤ったがために、気がついた時には「どう修正していいか見当もつかない」という段階にまで達していることに直面することもあるもの。
Herman氏は、そんな時でも可能な限り客観的になり、「いま目の前にあるものを何とか直して最終形にもっていく」ことよりも、「ゼロから新しいものを再び作り直す」ことのほうがコスト的に有利であるかどうかを判断する必要があると説いています。確かに、エネルギーを注いで作ってきたものに見切りをつけ、完全に新しいものをゼロからもう一度作り始めるというのは物理的にというより、むしろ精神的な抵抗感が強く感じられるものです。しかし、より良い結果を出して最終的に「成功」の状態を達成するためには、時としてその辛い決断を下さなくてはならない時もあるものです。
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この時、「これまでにかかったコストのことを考えると……」と、路線変更に二の足を踏みがちで、さもすればすでに投資済みのコストを「やらない理由」にしてしまうこともあるものです。しかし、それらのコストはもう戻っては来ず、今から変えられるものではないので、今さら惜しんでも意味がありません。それよりも、プロジェクト全体としての機会費用を旗印に決断を下すことが重要であると捉えるべきです。
◆Herman氏のまとめ
このような観点から、Herman氏は「絵を描くことはプロジェクトをマネジメントすることと良く似ている」と語ります。どちらも、アイデアを実現するプロセスであり、そこには計画を立てることと求められる最終形を思い浮かべながら進める作業だからです。「アートは自分とは違う世界だから」と目を向けない人もいるものですが、実際には絵画を作り上げるプロセスからは、人生の新たな要素に目を向けさせてくれる重要なインサイト(ひらめき)を得ることができる、と語っています。
By judy_and_ed
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