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「囲碁AIはイ・セドルに勝てても私には勝てない」と発言していた中国の最強棋士がアルファ碁に破れる

by Jaro Larnos

Google傘下にある人工知能研究所DeepMindが開発したAlphaGo(アルファ碁)と、中国の最強棋士である柯潔(か・けつ)九段との試合が、現地時間2017年5月23日から中国で開催中の「The Future of Go Summit」で行われました。以前、「AlphaGoはイ・セドルに勝てても私には勝てない」と発言していた柯九段ですが、23日に行われた3戦中の1戦目はAlphaGoが勝利しました。

AlphaGo China | DeepMind
https://deepmind.com/research/alphago/alphago-china/


AlphaGoを巡っては2016年3月9日、トップ棋士・李世乭(イ・セドル)九段との対局が韓国のソウル市内で行われ、AlphaGoが勝利したことが世界中に衝撃を与えていました。AlphaGoが第1局目に勝利したことを受けて、当時18歳だった中国人棋士の柯九段は「イ・セドルとの対局からAlphaGoが私よりも弱いことが分かったので、AlphaGoとは対局したくありません。また、AlphaGoに私の打ち筋をコピーされたくありません」「AlphaGoはイ・セドルに勝てても私には勝てない」と発言。ただし、のちにAlphaGoがセドル九段に3連勝したことから「AlphaGoは完璧でミスをしません。もしも条件が同じ場合、私が負けることもありそうです」と発言を訂正していました。

「AlphaGoはイ・セドルに勝てても私には勝てない」とコメントした世界ランクトップのカー・ジエ九段がAlphaGoと対局 - GIGAZINE


そして、2017年5月23日に行われた第1戦目で、柯九段はAlphaGoを意識した「三々入り」と呼ばれる手を打ちました。三々入りは数十年前に好まれた手ですが、現在の対局ではあまり見られません。しかし、AlphaGoは三々入りを好み、非公開で行われたオンライン対局でAlphaGoが60連勝を記録したあと、棋士たちの間で使用されるようになったそうです。そして柯九段の三々入りに対し、AlphaGoは非常に「興味深い手」を返したとのこと。これに対し、中国プロ棋士の樊麾(ファン・フイ)二段は「AlphaGoの手は『こことあそこに陣地を作ろう』というものではなく、最も使い勝手のいい場所に碁石を置こうとするものです。『どこに陣地を作りたいか?』ではなく『どうすれば全ての碁石の全ポテンシャルを引き出せるか?』というのが根本的な理論なのです」と語っています。

対局は接戦したものの、半目差でAlphaGoが勝利しました。柯九段は「今日の対局に向けて、私は勉強し入念な準備を行いました。過去の対局で行われたAlphaGoが好む手をコピーしたので、対局の序盤で私は2つの三々入りを打ち、大きく攻めました。それに対しAlphaGoが予想しなかった動きを見せたのが非常に印象的でした。また、人間対人間ではあり得ない動きをAlphaGoが見せたことは衝撃でした。しかし、よくよくその手を分析してみると、2手も3手も予測した非常にいい手なのです。1つの石で2羽の鳥を落とすような。この手で、AlphaGoの強さを確信しました。AlphaGoが繰り出す手には価値のある学びと冒険が含まれています。AlphaGoの影響は甚大です。私たちは自分たちの思考を探索し、考え方を拡張するべきなのです」とコメントしています。


AlphaGoと柯九段の対局内容は以下のウェブサイトで再現することが可能。

AlphaGo China | DeepMind


また、DeepMindのデミス・ハサビスCEOは「偉大な対局を行った柯潔氏に敬意を表します。非常に接戦した、興奮する対局でした。柯潔氏がAlphaGoの限界を押し上げてくれたことにも敬意を表します!囲碁は可能性に限界がほとんどない、すばらしい題材です。AlphaGoは、囲碁棋士、そして囲碁コミュニティーを真の囲碁へと連れ出し、より多くを発見できるツールだと考えています。囲碁棋士たちは昨年の対局を楽しんでくれたものと思いますが、それがこの偉大なるゲームの理解につながったことを願います」とコメント。


なお、The Future of Go Summitは27日(土)まで続き、木曜日と土曜日にも柯九段とAlphaGoの対戦が予定されています。また、このほか、AlphaGoと中国のプロ棋士がタッグ組み、同じようにして組まれたAlphaGoと中国のプロ棋士のチームと対戦する「ペア碁」、5人の棋士たちがチームを組みAlphaGoと戦う「チーム碁」も行われるとのことです。

・追記 2017年5月25日 16:27
中国最強棋士・柯潔九段とAlphaGoとの第二戦が行われ、AlphaGoが連勝を収めました。第一戦は接戦の末、半目差でAlphaGoの勝利となりましたが、第二戦は柯九段が投了し、人間とAIの力の差を見せつける形でGoogleのAlphaGoの完全勝利となりました。「AlphaGoはイ・セドルに勝てても私には勝てない」とも発言していた柯九段ですが、2戦目の対局後に「AlphaGoは碁の神様のように感じられました」とコメントしています。


柯潔九段とAlphaGoとの第二戦の様子は、以下から見ることができます。

中国乌镇·围棋峰会, 柯洁对阵 AlphaGo:第二局 - YouTube


なお、Googleは2010年から中国でのサービス提供を打ち切っており、今回の対戦は今後の中国におけるGoogleのサービス展開の足がかりになる可能性がありました。しかし中国国営テレビは柯九段とAlphaGoの対局を初戦から放送しておらず、地元の放送局も「The Future of Go Summit」自体は取り上げているものの、Googleに関する言及はほとんどないとのこと。中国当局はAlphaGoの対局をネット中継することも禁止しており、中国国内からAlphaGoの対局を視聴することはできない状態です。AlphaGoが勝利するにつれ、Googleが中国市場に復帰するのは難しくなる可能性があることを示しています。続く第三戦は27日(土)に行われる予定です。

Google’s AlphaGo Continues Dominance With Second Win in China | WIRED
https://www.wired.com/2017/05/googles-alphago-continues-dominance-second-win-china/

China censored Google's AlphaGo match against world's best Go player | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2017/may/24/china-censored-googles-alphago-match-against-worlds-best-go-player

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in ソフトウェア,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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