VRの「360度ムービー」で視聴者は本当に360度すべての方向を見ているのか分析するとこうなる
By Samsung Newsroom
YouTubeが360度ムービーに対応するなど、左右前後すべてを見渡すことができるVRコンテンツが一般的になりつつありますが、「VRコンテンツの視聴者は360度の視野をすべて見渡せているのか?」という疑問を解決するべく、VRコンテンツの分析会社「Vrtigo」が1000万回もの動画ビューを分析し、視聴者が実際にどこを見ているのかがわかるデータを割り出しています。
Do People View All 360°?
https://blog.vrtigo.io/do-people-view-all-360-f60b858059fe#.aomwb3ins
3D空間で視聴者がどこを見ているかは「ヨー、ピッチ、ロール」の値で示されます。最も重要なのが視聴者の視野の上下の動きを示す「ピッチ(Y軸)」と、左右を示す「ヨー(X軸)」となります。
Vrtigoは視聴者が360度すべての視野角度を利用しているかを判断するため、視聴者がどの方向を見ているかを測定しました。以下の図は左側がX軸の視野を示しており、「0度」が真正面、「90度」が右、「270度」が左、「180度」が真後ろを表しています。右側はY軸を示しており、「0度」が真正面、「90度」が真上、「270度」」が真下、「180度」が真後ろを表しています。
動画ビューを1000万回分析したところ、ほとんどの視聴者はX軸に沿って中心から外れることはないという傾向にあることがわかりました。つまり360度を見渡せる仮想現実の世界で視聴者は左右に顔を振ることが多いものの、上下には注意を向けられていないということを示しています。Vrtigoが驚いたのは「真後ろ(180度)を向く人がほとんどいなかった」という結果とのこと。視聴者の50%はY軸で165度以上視野を動かすことはなく、360度の視野を余すことなく体験していたのは96パーセンタイルだけだったそうです。
ほとんどの視聴者が背後を見渡すことがなく主に前方を見ている理由についてVrtigoは、制作者の動画の作り方が原因と分析しています。ほとんどの360度ビデオはY軸の0度に視野が集中するように作られていたとのことですが、今後さらに360度コンテンツが人気を得るにあたって、効果的にオーディオキューやビジュアルキューを使用することで、視聴者の見る方向は360度に近づくことが期待されます。
◆カテゴリごとに視聴者が見ている方向を分類するとこうなる
Vrtigoの調査では、コンテンツのカテゴリやジャンルごとに視聴者の見ている方向に傾向があることがわかりました。以下はカテゴリごとに見たX軸のグラフで、「サイエンス&テクノロジー」や「旅行」のカテゴリでは、ほかのカテゴリに比べて顔を左右に動かす度合いが大きくなっているのがわかります。これはサイエンスやトラベルはシーンの移り変わりが少ないため、視聴者がじっくりと周囲の景色を探索するからと考えられています。
以下はカテゴリごとに分類した視聴者のY軸のグラフ。シーンの移り変わりが多い「アニメーション」「音楽」「映画予告編」などのカテゴリでは、視野が前方に集中しているのがわかります。また、X軸の傾向と同様に、「サイエンス&テクノロジー」「旅行」などのカテゴリは上下に視線を向ける機会が多くなるようです。
つまり、大半の360度コンテンツのユーザーは「360度」という前後左右に広がる視野を完全に楽しむことはできていないということになります。しかし、多くのユーザーは165度までの視野を体験していたことから、従来の動画コンテンツでは不可能な視聴体験を提供しているのも事実です。360度の視野でストーリーを盛り込みながらユーザーを誘導するのは難しい作業ですが、360度動画の制作者が今回のような分析データを参考にして動画作りを行い、360度メディアが成熟していけば、没入感あふれる新しいコンテンツが登場する可能性も秘めているというわけです。
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