2017年02月09日 06時00分サイエンス

「5000年前の古代のビール」をスタンフォード大学の学生チームが再現

中国で約5000年前にビールが作られていた痕跡を発見したという研究結果がアメリカ科学アカデミー紀要に掲載されました。研究チームの1人であるLi Liu氏はスタンフォード大学で中国考古学を教えている教授でもあるのですが、講義の生徒たちに中国最古のビールを実際に作らせるという試みを行いました。

Revealing a 5,000-y-old beer recipe in China
http://www.pnas.org/content/113/23/6444

Stanford students recreate 5,000-year-old Chinese beer recipe
http://news.stanford.edu/press-releases/2017/02/06/recreate-5000-yenese-beer-recipe/

Liu氏らの研究チームは、中国北部の採掘現場から見つかった陶器の内壁に付着していた残留物を分析し、約5000年前の中国で大麦などの穀物を発酵させてビールを作っていたという痕跡を発見しました。これまで中国で見つかっている最古の大麦種子は4000年前のものであるため、さらに古い時代から大麦が食用ではなくビール造りに使われていたことを示す貴重な発見となっています。太古の中国人は主にキビ・アワや大麦などの穀物や、アジア原産のイネ科植物ジュズダマなどを使ってビールを作っていたと見られており、ヤマモモやユリ根なども微量に混ざっていたとのこと。

古代のビールのレシピは文字などでは残されてはいませんが、残留物の分析結果をもとに、当時作られていた太古のビールを再現するという講義がスタンフォード大学で行われました。Liu氏の講義を受けた生徒のグループは、最初に麦・アワ・大麦種子を使って太古のビールの再現に挑戦。まずは穀物類を水洗いすることで発芽させるという「麦芽製造」を行い、発芽した穀物と砕いた大麦種子を水に浸しました。

次に穀物と水を入れた容器をオーブンに入れて、65度で1時間加熱し「糖化」を促します。その後容器をラップで密封し、室温で1週間発酵させれば完成とのこと。

さらに講義では中国最古のビールのほか、ペルーやボリビアで飲まれる「チチャ」の製法を使って、キャッサバで作るビール造りも行われました。作り方は口の中でキャッサバを噛んで吐き出し、ほかの材料と一緒に煮沸して発酵させるというもの。

こうして再現された「5000年前の中国のビール」は、発酵のために加えられた材料をろ過せずに飲むため、一見するとおかゆのような見た目となっています。ストローのようなものを使って上澄みを飲んでいたと考えられ、酸っぱい匂いが強いものの、味わいは現代の苦みの効いたビールよりも甘くてフルーティーとのこと。同様の製法で小麦を使って作った生徒もおり、小麦のビールはフルーティーな香りとかんきつ系の味わいがあり、サイダーのようだったそうです。

一方でキャッサバを使った「チチャビール」を作ったマドレーヌ・オタさんは、「食物を噛み戻してビールを作るのはとても奇妙な体験で、『なぜアルコールが発生するのだろう』と不思議に思いました」とコメントしています。オタさんいわく「ファンキーなチーズ」のようなにおいで、作った本人も味を確かめる気が起きなかったそうですが、オタさんは「両方の実験の結果が出て報われました」と話しています。