「重力のおり」に閉じ込められた地球から脱出する方法を簡単に説明するとこうなる
地球に「重力」があることは今や誰でも知っていることですが、言い方を変えれば地球上の万物はすべて、「重力の刑務所」にとらわれているようなものです。地球の重力から脱出するには、大量の燃料を爆発させて炎を噴射する宇宙ロケットが必要になるのですが、地球になぜ重力が存在するのか、ロケットはどのようにして重力に打ち勝つことができるのか、ということがアニメーション付きで分かりやすく解説されています。
Why Earth Is A Prison and How To Escape It - YouTube
地球に住むものはすべて、刑務所にとらわれた囚人ともいえます。
人類という種を長きにわたって存続させるには、いつかこの刑務所を脱出する必要があります。
それでは、私たちを地球につなぎとめているものは一体何なのでしょうか。
話は45億年前に地球が宇宙に「借り」を作ったところから始まります。地球は「エネルギーで作られた刑務所」のようなものであり、宇宙に存在する質量を持つものは、お互いにものを引き付けあう性質を持っています。これが「重力」です。
もしあなたが巨大な質量を持つものに近づけば、より強力な重力によって引き寄せられることになります。
この現象が地球上のすべてを地球に縛り付けているわけです。「重力刑務所」にとらわれていることを想像してみてください。
重力刑務所は「重力井戸」という考え方でも説明することができます。
宇宙に存在するすべての物体は、勝手に移動したり、速度を上げたりすることはありません。
物体が移動するには何かしらのエネルギーが必要となります。
何十億年も前に、数え切れないほどのちりが太陽の軌道にとらえられ、重力によって無数のちりが固まり、地球などの惑星を形成しました。
惑星が形成されると、宇宙からエネルギーを借金して作られた「重力のくぼみ」が発生します。このように発生した重力の強さを簡単に表わしたのが「重力井戸」であり、深ければ深いほど重力が強いことを意味しています。地球の重力井戸を見ると、地球のすぐそばには国際宇宙ステーション(ISS)があり、さらに離れた場所に静止衛星が位置しているのがわかります。
そのため、地球から脱出するにはエネルギーの借りを同じだけ返す必要が生じます。
なぜならあなたの体の中の原子すらも、元をたどればエネルギーを借りて集まった宇宙のちりの一部であるからです。
簡単におさらいすると、宇宙の万物は勝手に動くことはありません。
物体を動かすにはエネルギーが必要になります。
重力はエネルギーを使ってちりを集め、地球を形成しました。
その結果、地球はエネルギーを借りた状態になり、重力という刑務所にとらわれたということ。
刑務所から脱出するには、エネルギーを返済する必要があるのです。それでは、どうすればエネルギーを返済できるのでしょうか?
宇宙に進出するためには、エネルギーを交換する複雑なプロセスが必要です。
このために開発されたのが「エネルギー返済マシン」です。
一般的には「ロケット」と呼ばれています。
ロケットにはいくつか種類がありますが、いずれも激しい化学反応を起こす燃料を爆発させ、制御することで宇宙に発進します。
これは化学エネルギーを運動エネルギーに変換していることになり、爆発によって生じたエネルギーを外部に排出することで、ロケットを地球から遠ざけます。エネルギーを放出するほどに「重力ポテンシャル(位置エネルギー)」が増加していきます。簡単に言えば、重力にエネルギーを返済しているというわけです。
実際には軌道に入るまでに、熱・排出・抵抗などで大量のエネルギーが失われるため、さらなる燃料が必要になります。
地球から脱出するのに必要なだけのエネルギーを持つ燃料の上に人が乗って大爆発させても意味がないように、爆発力を完全に制御する必要があります。それはロケットが非常に重くなることを意味します。
そしてロケットが重くなればなるほど、より大量の燃料が必要になります。
前述のように、物体を動かすにはエネルギーが必要ですが、これにエネルギーを発生させる燃料の質量が加わると、さらなるエネルギーが必要になります。
大きなロケットを動かすには大量のエネルギーが必要になるため、燃料タンクも大きくなってしまうというややこしい問題が発生します。
この繰り返しの果てに、地球を安全に脱出可能なロケットが完成するわけですが、ロケットはあなたが積み込む荷物の100倍の重量になってしまいます。例えば欧州宇宙機関(ESA)の最新ロケット「アリアン6」の総重量は800トンありますが、貨物の最大積載量は20トンです。
ロケットの最大重量には限界があり、さらに巨大な燃料タンクをつけたとしても、逆に十分な推進力を生み出すことができなくなります。この問題がロケット開発の難しいところであり、現代の科学力を持ってしても宇宙の旅が簡単ではないことを意味しています。
地球を飛び立ってからも、重力圏を離れなければ地球に引き戻されてしまうという問題もあります。
また、宇宙にとどまることは、たどりつくよりも難しいとされています。宇宙で安定した位置を確立するには、ISSなどが回っている低周回軌道に入る必要があり、低周回軌道に突入するだけでも大量の運動エネルギーが必要になり、高度100kmではロケットは秒速8kmという速度に達します。
秒速8km(時速2万8000km)とは地球を90分で一周できるレベルの速度です。
この問題を解決するため、ロケットはまっすぐ飛ぶのではなく、「横に飛ぶ」という作戦をとっています。なぜなら、地球は球体であるため、すごい速度で横に飛んでも地面に激突することはなく……
曲線を描いて「落ち続ける」からです。
ISSはこの方法を使って、地球の軌道上を時速27600kmで安定して周回しているわけです。
月の軌道よりもほど近い低周回軌道に突入するだけでも多大なエネルギーが必要になりますが……
他の星まで行くには、さらなるエネルギーが必要となります。例えば火星までロケットを送るには、地球の軌道に突入するだけでロケットの燃料の半分を消費してしまいますが、さらに残り半分の燃料で火星までの5500万kmの道のりを行くことになります。
ロケットが発射後にパーツを切り離しているのは、限られたエネルギーを効率的に使用するため。
大量のパーツを何度も切り捨てて、ようやく低周回軌道に宇宙衛星をのせられるくらいなので、いかに惑星間飛行が困難であるかがわかるはず。
この困難に立ち向かうのが「ロケット科学」なのです。
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