不評のため使用禁止運動まで起こったフォント「Comic Sans」を作ったデザイナー
Windows 95に採用され世界中に広まったフォント「Comic Sans」は、リリース以降もWindowsシリーズやmacOSシリーズに標準搭載されていますが、カジュアルすぎるデザインが原因でかっこ悪いと批判されることもあります。このComic Sansの開発者であるVincent Connare氏が、ITやゲーム文化の知られていない側面を伝えるメディアのGreat Big Storyで開発経緯について語っています。
Comic Sans: The Man Behind the World’s Most Contentious Font - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5l4sCaw71NE
リリースされたばかりのWindwos 95でWordを開いたとき。
ユーザーが搭載されている複数のフォントを見ていると、明らかに他のフォントとは異質なものが含まれていることに気づきました。
それは「Times New Roman」でも……
「ARIAL」でもありません。
ユーザーの目を引きつけたのは、字体からカジュアルさがしみ出すデザインの「Comic Sans」でした。
Comic Sansを開発したのは、当時Microsoftで勤務していたフォントデザイナーのVincent Connare氏です。
絵や記号を集めたフォントの「Webdings」や……
「Trebuchet」などもConnare氏の作品です。
Comic Sansのデザインを理解するには、Connare氏のバックグラウンドを知る必要があります。Connare氏は学生の時に美術を専攻していて、アートギャラリーに頻繁に足を運んでいました。
多数のアート作品を見たConnare氏さんが学んだのは「展示していても人に気づかれないような作品はダメ。人に気づいてもらえるようなインパクトのある作品が良い。そのインパクトはショッキングなことでも感動的なことでも何でもいい」ということ。この哲学が、Comic Sansのデザインに大きな影響を与えているそうです。
Comic Sansが開発されたのは、Microsoftが当時開発中だったWindows3.x向けのGUI「Microsoft Bob」に搭載する標準フォントを模索していたときのことです。Microsoft Bobは、実際の部屋を模したような見た目のGUIで、ホーム画面にはユーザーにシステムからのメッセージを伝えるRoverという犬が表示されていました。当初はTimes New Romanを採用予定だったのですが、犬のメッセージを表示するのにあまりにも固すぎるということで、Connare氏はTimes New Romanよりカジュアルなフォントの開発に乗り出しました。
Microsoft Bobに表示される犬のキャラクター。
犬というキャラクターの吹き出しに表示させるようなフォントが必要ということで、Connare氏はバットマンや……
ウォッチメンといったアメコミを参考にして、Comic Sansを開発しました。
しかしながら、Microsoft Bobの責任者であったRobert Norton氏はComic Sansのことを気に入らず採用が見送られることになりました。このときにConnare氏はNorton氏を説得するために「Microsoft Bobのフォントは『奇妙な(Weird)』もので、他のフォントとは全く異なるデザインにするべきだと思います。また、学校の教科書に採用されているような『つまらない』フォントではダメです」と話したそうです。
Microsoft Bobに採用されなかったComic Sansですが、Windows 95やMacintoshに採用されることになり、これをきっかけにして世界中で認知されるようになりました。
カジュアルすぎるデザインが原因でダサいと評され、Comic Sansの使用を禁止しようとする運動まで巻き起こりましたが、Connare氏は「Comic Sansへの批判が攻撃的だと思ったことはありません。むしろ、面白いと思います」と好意的に受け止めている様子。
Connare氏は最後に「Comic Sansはアート作品の傑作では決してありません。でも、コンセプトのデザインは自分が手がけた中でも最高のものだと思っています」と語りました。
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