大麻が合法的に吸える「コーヒーショップ」が次々に閉店している理由、そして浮かび上がる問題点とは
By Julie °_°
オランダのアムステルダムに旅行したことがある人ならば「コーヒーショップ」が「合法的に大麻が販売されている場所」であることを耳にしたことがあるはず。世界的にもめずらしい施策が取り入れられ、世界中から多くの「観光客」が訪れるアムステルダムのコーヒーショップですが、近年は店をたたむケースが次々と起こっているといいます。
The Economist explains, man: Why Amsterdam’s coffeeshops are closing | The Economist
http://www.economist.com/blogs/economist-explains/2017/01/economist-explains-man
Why Amsterdam’s oldest cannabis 'coffeeshop' has been forced to close
http://www.telegraph.co.uk/travel/destinations/europe/netherlands/amsterdam/articles/amsterdams-oldest-coffeeshop-mellow-yellow-is-forced-to-close/
2016年12月31日、コーヒーショップの中でも有名な存在だった「Mellow Yellow」が営業を終了しました。50年以上にわたって営業を続けてきた同店ですが、政府の規制強化の影響を受けて店をたたまざるを得ない状況になったとのこと。お店のオーナーだったJohnny Petram氏は「なんとかしようと思ったが、人生で最悪の日になってしまった。Mellow Yellowはアムステルダムで最も古いコーヒーショップだったが、これで終わりだ」と語っています。
アムステルダムでは、Mellow Yellowのように閉店に追い込まれる店が少なくありません。1990年代には350軒を数えたコーヒーショップですが、今やその数は170軒足らずにまで半減したといいます。これは、大麻に対しては寛容とされてきたオランダの政策が変化してきたことの表れでもあります。
オランダでは1970年代の法改正などにより、大麻などの「ソフトドラッグ」に関して寛容な政策がとられてきました。これは、「規制により薬物を完全に排除するのは不可能である」という前提にたち、ソフトドラッグを厳格に管理したうえで流通させることで、より被害の深刻なコカインなどの「ハードドラッグ」の蔓延を未然に食い止めるという狙いがあったためです。大麻の販売については「宣伝を行わない」「一度に販売する分量に上限(5グラム)を設ける」などの制限を課した上で、これを容認するという施策がとられてきました。
By Marco Galasso
宣伝を行わないという前提に立つコーヒーショップでの大麻販売ですが、特にオランダを訪れる人の多くにとっては半ば「常識」と言えるレベルで世界的に有名になっています。アムステルダムの観光当局の調査によると、同市を訪れた観光客の4人に1人はコーヒーショップを訪れているという統計もあるほど。事実、この記事を作成している編集部員がドイツからオランダに行く飛行機に乗っていた時などは、アムステルダムに着陸した瞬間に同乗していたドイツ人の若者の集団が異様なテンションで「ウエエエエエエーイ!」と盛り上がっており、他の都市とは明らかに違う雰囲気が漂っていたことを思い出します。
寛容な施策を行ってきた政府当局ですが、この姿勢に異論を唱える意見が存在していなかったわけではありません。立地条件などの規制が強化され、営業を続けられなくなった店が次々に閉店するに追い込まれてきました。今回のMellow Yellowの一件は、「250メートル以内に学校が存在していないこと」という規制が適用されたことで、店から230メートルの場所にある美容師専門学校の存在によって閉店を余儀なくされたとのことです。
このような立地条件の規制により、アムステルダムでは20軒のコーヒーショップが閉店に追い込まれたほか、合法的風俗街として有名な「レッドライト・ディストリクト」、通称「飾り窓」のエリアでも、街の浄化を理由に30軒のコーヒーショップと、150軒の飾り窓が閉店を余儀なくされたとのこと。さらに、行政機関は新規にコーヒーショップの営業許可を出さない施策を行っているため、仮に店をたたんでも別の場所で新たに営業を再開することもできないという状況になっているそうです。
By vittorio sciosia
このような施策について、評価する声がある一方で、その有効性について疑問を唱える見方も存在しているとのこと。規制の強化により行き場を失った客と、商品を卸していたソフトドラッグのディーラーが地下に潜り、非合法な形で売買と使用を行っていることも明らかになっているといいます。コーヒーショップで販売されるソフトドラッグは分量が規制されていたため、使用に関しては一定の抑止力がありましたが、何の規制も受けない非合法販売が増えると取引量が増加するとともに、より危険性の高いハードドラッグへのエスカレートも懸念されています。
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