メモ

自分で書いた本を守るために「呪い(ブックカース)」を本にかける方法

by Julio César Cerletti García

「1冊から」「数百円で」本が出版できる時代になりましたが、中世において「本を作る」という作業は数年がけで行われるものでした。そのため、本が盗まれたり破壊されたりするのを防ぐために「呪い」をかけることも。本にかけられた呪い、ブックカースとはどのようなものだったのか、Atlas Obscuraがまとめています。

Protect Your Library the Medieval Way, With Horrifying Book Curses | Atlas Obscura
http://www.atlasobscura.com/articles/protect-your-library-the-medieval-way-with-horrifying-book-curses


中世において「本を書く」となると、作業する時間は1日のうち自然光のある時間に限られました。夜でもろうそくに火を灯せば文字を書けそうに思いますが、ろうそくの火は書物を燃やしてしまう可能性があったためです。筆耕人(執筆・清書代行者)は限られた時間を使ってテーブルに向かい、書き損じがないように慎重に筆を進めました。当時の記録によると、筆耕人の作業は「目から光を失わせ、背骨を曲げ、腸や肋骨に悪影響を与え、痛みは腎臓にまでいたり、体全体の疲労を引き起こした」とのこと。

上記のような作業を経て作られた本は、非常に貴重であるがために、「保護」が行われました。当時の「保護」とは、言葉によるもの。つまり、本の最初と最後に盗人を脅迫するような「呪い」が付されたのです。呪いの内容には容赦がなく、もし誰かが本を傷つけたり盗んだりすれば、その人は悪魔に剣で真っ二つにされたり、手を生け贄として神に捧げなければならなくなったり、目をえぐられたり、地獄の火であぶられたりするように、というものでした。


当時は神や悪魔という存在が現在よりも信じられていたために、人々は苦悩の中で死ぬのを恐れて本を慎重に扱ったわけです。

Marc Drogin氏は1983年に、これら「本の呪い」を集めた「Anathema!: Medieval scribes and the history of book curses」という本を出版した人物。Drogin氏が発見した「破門の呪い」の一例は以下のようなもの。

May the sword of anathema slay
If anyone steals this book away.

Si quis furetur,
Anathematis ense necetur.


「もし何者かがこの本を盗み去ったら、その人は破門の剣で殺されることだろう」という、短い内容です。

さらに気合いを入れて呪いをかけたい時は、「anathema-maranatha」という、裁きの日(死)がやってくる呪いがかけられることも。また、「どのような苦しみか」といったような詳細情報を書き込むほど呪いの力は強くなるため、クリエイティブな筆耕人はより細かい内容を書き記したそうです。以下がその例。

“If anyone take away this book, let him die the death; let him be fried in a pan; let the falling sickness and fever size him; let him be broken on the wheel, and hanged. Amen.”(もし誰かがこの本を持ち去ったら、その人は死に至る。油で揚げられ、病と熱にうなされ、車輪で引かれて吊されるだろう。アーメン)


もっと長い呪いになると、以下のようなものがあります。

“For him that stealeth, or borroweth and returneth not, this book from its owner, let it change into a serpent in his hand & rend him. Let him be struck with palsy & all his members blasted. Let him languish in pain crying aloud for mercy, & let there be no surcease to his agony till he sing in dissolution. Let bookworms gnaw his entrails in token of the Worm that dieth not, & when at last he goeth to his final punishment, let the flames of Hell consume him for ever.”(もしこの本を盗んだり、借りた後に持ち主に返さなかったりすれば、本はヘビに姿を変え、盗人を引き裂く。盗人の体は麻痺し、仲間たちは爆破される。盗人は痛みにより衰弱し、慈悲を求めて泣く。盗人が死ぬまで痛みに終わりはない。チャタテムシが内臓を食い荒らし、最後の罰が下されるとき、盗人は地獄の炎に永遠に焼かれる)


もちろん全ての筆耕人がこれらの呪いを1から作っていたわけではなく、人気がある呪いは他の本に転用されることもあったとのことです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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