GPSより精度の高い衛星航法システム「ガリレオ」の運用がスタート
衛星を利用した航法システム(測位システム)といえば「GPS」がよく知られています。もはや航法システムの代名詞のような存在となっていますが、あくまでGPSはアメリカ国防総省の運営するシステム。これに対してヨーロッパで民間主体の衛星測位システム「ガリレオ」の開発が進められ、2016年12月15日にとうとう運用が始まりました。
What is Galileo? / Galileo / Navigation / Our Activities / ESA
http://www.esa.int/Our_Activities/Navigation/Galileo/What_is_Galileo
Galileo navigation satellite system goes live | Science | DW.COM | 15.12.2016
http://www.dw.com/en/galileo-navigation-satellite-system-goes-live/a-36422029
衛星航法システムとは、複数の人工衛星から地上に向けて送信された信号を受信することで位置や進路を知るという仕組みのこと。アメリカ海軍が潜水艦発射弾道ミサイル・ポラリスを搭載した潜水艦に位置情報を提供するため打ち上げた人工衛星「トランシット」が草分け的存在として知られています。1960年に打ち上げられたトランシットは、テストを経て1964年に海軍で利用が始まり、1967年から1991年にかけては多くの民間船舶もこの恩恵を受けました。
一方、アメリカ陸軍は海軍のトランシットとは別に「SECOR」という衛星ナビゲーションシステムを作り、空軍も「621B」というプロジェクトを進めていて、さらに「Timation」という衛星同士の位置関係を正確に把握するシステムが別に作られていました。しかし、ばらばらに作っていては効率が悪いということで統合されて生まれたのが「NAVSTAR(ナブスター)」構想で、このシステムが「GPS」と呼ばれるものです。
同様に、主に軍事目的から作られた衛星航法システムとしてはロシアの「GLONASS」、中国の「北斗」があります。初めて民間主体で生み出された衛星航法システムが、今回運用の始まった「ガリレオ」です。
by Nedulous Productions
ガリレオプロジェクトが始まったのは17年前、1999年のことでした。アメリカ国防総省が運用するGPSへ頼ることをやめるためにEUと欧州宇宙機関(ESA)が威信をかけて取り組んだプロジェクトでしたが、アメリカの圧力や金銭的問題によって2002年の時点でプロジェクトの広報担当者が「ガリレオはほぼ死んでいる」と述べるような困難に見舞われました。
しかし、EUとWSAは諦めずにプロジェクトを継続し、2005年に最初の試験衛星を打ち上げました。このあと、さらに資金問題が噴出するものの、公金による追加支援を受けて2011年から実証衛星の打ち上げを、2014年からフル機能衛星の打ち上げを行い、運用開始にこぎつけました。2016年11月上旬時点で12機のフル機能衛星打ち上げに成功していて、2機が失敗。最終的には30機の衛星運用を計画しています。
ガリレオの特長は、GPSでは起こりうる軍事上の理由によるサービスの劣化・中断がない点、そして無料のオープンサービスでも精度が1mという高さである点。有料サービスの場合、精度は数cmまで高まる予定だとのこと。
2016年11月29日の打ち上げの様子はこんな感じでした。
Sit Ringside for a Rocket Launch in This Incredible New Video
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