38億年かけて改良され続けてきた自然界の機能美を工業デザインに取り込むバイオミメティクスがPCに応用されている例
長い進化の過程を経てたどりついた生物の生体の持つ構造を模倣することで、高い機能性を持つ製品を開発する手法は「バイオミメティクス(生物模倣)」と呼ばれており、工業デザインや先端技術の開発の現場で取り入れられています。コンピューター製造のLenovoが、製品作りでのバイオメティクスの取り組みを紹介するムービー「Surrounded by Genius: Nature’s Take on Engineering」を公開しています。
Surrounded by Genius: Nature’s Take on Engineering - YouTube
自然の素晴らしさには、学ぶべきことがたくさんあります。
サメの肌には抗菌作用があります。
ハスの葉は自浄効果があり……
クジャクの羽根には色素がなくても発色する構造色があり……
ヤモリはガラス面でもひっつくことができます。
バイオミメティクスを研究するマリア・オーファレルさんは、まず自然が持つ美しさに目を奪われるとのこと。
そして、美しさの次に、自然が持つさまざまな機能性に魅了されているそうです。
「38億年かけて変更されてきた『自然』という優れたデザインを、工業デザインに応用するのが私の仕事です」とオーファレルさんは話します。
「エンジニアの仕事とは、作っては調べ、作っては調べという『反復作業』にあります」と話すのはLenovoで働くケビン・ベックさん。
反復作業によって製品は改良されていきます。
「この反復作業を、自然は38億年も積み重ねてきたのです」
「自然のデザインから学ぶことで、改良の過程を大きくスキップして近道できることがあります。これこそがバイオミメティクスの大きな役割です。自然のデザインに学んで、技術的問題を解決するのです」とベックさんは話します。
「Lenovoの製品開発にバイオミメティクスが活かされた一例をご紹介しましょう」
ある技術者は、新型のディスプレイ一体型PCを開発中でした。新型2in1PCでは、薄さだけでなく静かであることも求められていました。
開発者は休日に息子と一緒に水族館に行きました。
そこで、イルカショーを見ているときに、イルカがジャンプして水から出るときも水に入っていくときもほとんど水しぶきをたてないことに気づきました。
そして、その原因がイルカの体の形にあると考えました。
抵抗の少ないイルカの体の形状は、自分が取り組んでいるファンの開発に役立つと考えた開発者はイルカの体の形を参考にして……
抵抗が少なく風切り音の小さいファンを設計することに成功しました。
「バイオミメティクスを活用したLenovo製品は他にもたくさんあります」
スムーズに回転するスタンドは……
ランの茎を参考にしています。
薄型ノートPCの静音ファンは……
フクロウの羽根を参考にして作られました。
またPCの排熱スリットは……
蜂の巣の構造を模しています。
人間は自然界の一員ですが、人工的にさまざまな物を作り出してきた点で「自然と決別した存在」です。しかし、自然界では"若い"種である人間が、古くから生きてきた"先輩"である自然の生物から学ぶことで技術的な問題を解決できるようになったことは、人間の自然回帰現象として喜ぶべきことなのかもしれません。
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