電子フロンティア財団認定の「今月の最も愚かな特許」に「クラウドからムービーを受信する方法」が選ばれる

電子フロンティア財団が毎月認定している「Stupid Patent of the Month(今月の最も愚かな特許)」に、「System and method for storing broadcast content in a cloud-based computing environment(クラウド環境で放送コンテンツを受信する技術)」が選ばれました。この特許は「とても2016年の特許技術とは思えないもの」と酷評されています。

Stupid Patent of the Month: Movies From the Cloud | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2016/11/stupid-patent-month-movies-cloud

電子フロンティア財団は、2016年11月に許諾されたアメリカの特許の中から「今月の最も愚かな特許」として、「US Patent No.8856221」(221特許)を選出しました。この特許技術は、クラウドコンピューティング環境で放送コンテンツを保存するための方法という、そのタイトル通りの技術であり、「少なくとも1つのサーバー」を使って、「メモリやプロセッサを搭載するメディアデバイス」と通信することで、映像データを受信するという内容とのこと。電子フロンティア財団は、221特許を、「1990年代中盤ならば新鮮なアイデアだったかもしれないが、2011年に特許申請された技術とは信じられないものである」と評価しています。かつてthe ONIONがYouTubeが誕生したのが2005年であることを前提として、「I Had The Idea For YouTube Back In 2010(私は2010年にはYouTubeを発明していた)」という"皮肉"をきかせた記事を掲載しましたが、まさにこれを体現するような話だと221特許を酷評しています。

なお、221特許は技術の詳細な説明内で、「月額制のシステムでは、顧客がほとんどコンテンツを利用しない場合でも割高な料金の支払いを要求されるが、(この技術では)ダウンロード数に応じた課金システムを使えるため優れている」という、2011年時点のコンテンツビジネスで当然のように普及していた課金方法を強調していますが、このような一般的な商慣習に特許が与えられて良いはずがないと電子フロンティア財団は批判しています。

また、221特許の特許請求の範囲の中には、「メディアデータにはコンテンツの長さを示す時間データが含まれている」という請求項がありますが、2011年の時点でオンラインレンタルサービスでは当然に使われていたものであり、単に目的が明らかですでに存在する技術を記述しているに過ぎないと一蹴しています。

221特許を取得したのはロスチャイルドBroadcast Distribution Systems(RBDS)というテキサス州に本拠を構える企業です。電子フロンティア財団は、221特許は、ロスチャイルドConnected Devices Innovations(RCDI)が2015年8月に受賞した「今月の最も愚かな特許」に勝るとも劣らないひどい技術だと酷評しています。

なお、RCDIの「ネット接続で遠隔操作するドリンクミキサーの特許」については以下の記事で解説しています。

ネット接続で遠隔操作するドリンクミキサーの特許が「月間最も愚かな特許」に選ばれる - GIGAZINE

電子フロンティア財団によると、RBDSの目立った企業活動はスターアップからウォルト・ディズニーという大企業にいたるまで合計25社に対して訴訟を行っていることだけだとのこと。電子フロンティア財団は、RBDSのようなパテントトロール企業の暗躍を許してしまっている現行のアメリカの特許システムを痛烈に批判した上で、抜本的な特許制度改革の必要性を訴えています。