取材

1日1000個のA/Bテストを行う「Booking.com」の開発の裏話を聞いてきました【後編】


宿泊予約サイト「Booking.com」は1日1000個のA/Bテストを行っており全部で15ペタバイトにも及ぶデータを有しているとのこと。Booking.comのサービスを支えるサーバーシステムや、開発を行うエンジニアたちを含めた組織作りはどうなっているのか、最高情報責任者(CIO)のブレンダン・バンク氏に詳しく聞いてきました。

国内も海外も!ホテル・旅館の予約はBooking.com
http://www.booking.com/index.ja.html

ブレンダン・バンク(以下、バンク):
8年前、私がBooking.comに来た当時はかなりひどい状態で、30人のデベロッパーが各自やりたいことをやっていました。ただ、てんでバラバラなことをしているのに、それが機能しているのが非常に面白かったです。


さて、ここにある「Commercial awareness(商業的認知度)」「Craftsmanship(職人的技術)」「Creativity(創造性)」を「3つのC」と呼んでいます。この3つのCがそろっている人材に対しては、エンジニアとして手助けする必要はあまりありません。


職人として持っていないといけない技術には、コーディングも含めていろいろな要素があります。その中で重要なのはコミュニケーションを取ることです。デジタルな世界と現実世界にはさまざまな違いあり、アプリケーションに実際の生活を取り入れることについて、顧客に説明しに行かないといけませんから。スタートの時はひどい状態だったと先程お話しましたが、仕事をしているうちに自然とグループは固まってきました。これは、初めから3つのCに長けた人たちがいたからです。

Booking.comが欲しいのは下を向いて毎日コーディングだけをしているようなエンジニアではなくて、この3つのCの要素を持った人たちです。リクルートの時も、ボーナスの査定時も、必ずこの3つの点を見ています。

例えば、会社が拡大している中で、エジプトのデベロッパーを雇った時のことです。彼を雇った時、既にあったアラビア語のサイトを見て、彼は「なんだこれは、ひどいじゃないか」と言いました。日付の選択の方法が現地と全く違ったんだそうです。ネイティブスピーカー、つまりその国の人をチームに取り入れることで、より多くの改善ができることがその時に分かりました。


今、Booking.comが中東で非常に良い成績を出しているのは、その1人のアラブ語を話すデベロッパーが入ってきてくれたのが始まりです。なので、良い商品を作るためには、中国でも日本でも「ローカライゼーション」をして、そこの土地の人が参加するというのが重要になってきます。彼はアラビア語のサイトを直してもらうために雇った訳ではないんですけれども、たまたま母国語だったということでいろいろなアイデアが出てきた訳です。

また、1200人という中でそれぞれのエンジニアが上手く機能するのは、とても難しいことです。そこで、成果を上げるために、Booking.comは会社の組織を上下反対にしました。


このように、エンジニアに直接データを与える組織を作ることで、何かが上手くいかなかった場合でも、うまく解決できます。常に現場からデータが流れてきており、「どこが変化したか」や、「どこに効果が出たか」ということダッシュボードで確認できるようにしているためです。エンジニアにとって非常に働きやすい環境を作っているわけです。先ほど、「最初はひどかった」と言いましたが、今の状態はひどくないとは言えないものの、非常にしっかりと構成されています。エンジニアたちが邪魔されず、ずっとクリエイティブな考えを持ち、プロダクトを改善をし続けられるような環境を作っています。

この時、デベロッパーはどこかの隅に座って一人で製品開発をしている訳ではなく、デザイナーなどを含む自動操縦型の「チーム」が力を合わせてコミュニケーションを取りながら仕事をしています。例えば検索ボックスを作るチームの場合は、大体2チームぐらいでやりますが、そのチームが最初のアイデアを出すところから、製品の完成までの全てを担当します。チームは言ってみれば1つの零細企業のような形で機能しています。そして、先ほども言ったように、プロジェクトが上手く行っているか、どう動いているかというのは、ダッシュボードで常に見ることが可能です。

Q:
Booking.comの社内の文化に1人1人が起業家であるという「起業家精神」がありますが、その場合、意見が衝突することもあるかと思います。どのように調整をしているのでしょうか。


バンク:
エンジニアというのはコーディングには長けていますが、あまりコミュニケーションが得意ではない場合が多いので、衝突が起こった際に「どこが何か間違っているのか」ということを探し出すためのコーチがいます。エンジニアがITを選んだ理由は何かきっとあるわけですから。

Q:
具体的な規模やサーバーの数はどれぐらいなのでしょうか。

バンク:
最初は10個しかなかったのが、今は2万個ぐらいあります。毎週ハードウェアがどんどん入って来ますので。

Q:
ウェブサイトを運営し、膨大なデータを管理するサーバー、Booking.comのサーバーシステムはどのように進化してきたのでしょうか。

バンク:
私が来た時には100~200個ぐらいのサーバーがあって、利用者がログインする様な形でした。AmazonもGoogleもまだクラウドサービスとしてはなかった時代です。なので、クラウドベースのプラットホームを自分たちで作りました。今は全て自動化されて、システムがシステムを稼働させています。なので例えば50のデータベースが欲しいと思えば、かかる時間は2分かも2時間かもしれませんが、できます。

Q:
特定の場所に大きなサーバーセンターがあって、そこで運営しているという形でしょうか。

バンク:
アムステルダムとフランクフルト、ロンドンにデータサービスセンターがありますし、規模は小さいですが、香港やシンガポール、ニューヨークにもあります。でも、サービスのスピードは東京の方が速く、ポルトガルのポルトに行く方が遅いです。

Q:
他社が提供しているサーバーを使わずに自前でサーバーを用意するのには、どういう意図があるのでしょうか。

バンク:
スタートが違ったんです。クラウドがない時に始めましたので、自分たちでサーバーのシステムを作りました。今からそれをクラウドに移すとなると、今までのエンジニアを解雇するような形になりますし、それならばさらに良いものを作ったり改善をした方が良いという考えです。

Q:
蓄積されている膨大なデータについて、先程は15ペタバイトのうち20%ほどしか活用されていないというお話をされていました。そのデータをどのように活用していきたいと考えているのでしょうか。

バンク:
博士号を取ったデータサイエンティストなどに依頼して、難しい部分を分析してもらいたいと考えています。それによってまたサービスを向上させていくことができますし、より多い情報を提供することができるようになります。新しいツールやシステムがないと、ブラックデータを見ることはまだできません。

Q:
今もデータは解析が追いつかないスピードで増えていっているのでしょうか。

バンク:
まさにそうですね、追いつかないです。それに、追いついてしまえばそれもまた問題だと思います。


Q:
A/Bテストの話を先程伺ったのですが、「こうしたらホテルが選ばれやすい」という風なノウハウをたくさんお持ちだと思います。広告的に、たくさんお金を払ったホテルは選ばれやすいというようなこともあるということですか。

バンク:
Booking.comはカスタマーのためのサービスですので、お金でどうこうではなくて、必然的に良いホテルが上に出てくるという風になっています。

Q:
そこをコントロールする意図はブッキング・ドットコムには全くないということですか。

バンク:
Googleのアルゴリズムのように、自動で良いホテルが上に上がってくる仕様になっています。

Q:
安心しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「クリエイティブな人を生み出すオフィスとは?」を体感する宿泊施設予約サイト「Booking.com」オランダ本社の写真集まとめ - GIGAZINE

【1日230円の食べ放題ランチ編】「クリエイティブな人を生み出すオフィスとは?」を体感する「Booking.com」オランダ本社潜入レポート - GIGAZINE

Googleのラリー・ペイジがCEOに返り咲いた舞台裏と貫かれている思いとは - GIGAZINE

「大成功した卒業生の3つの秘密」をLinkedIn創業者が語る - GIGAZINE

ホテル業界に激震を与えた民泊サービス「Airbnb」はどのように始まったのか、創業者が語る - GIGAZINE

タブブラウザSleipnirのフェンリルがデザインにかける思いを具現化した「デザインスタジオ」写真集&デザインへのこだわりをインタビュー - GIGAZINE

タブブラウザ「Sleipnir」の「フェンリル」の知られざるオフィス写真集&1人の個人から100人を超える企業に成長するまでの物語 - GIGAZINE

in 取材, Posted by logq_fa

You can read the machine translated English article here.