サイエンス

彗星探査機ロゼッタが最後のミッション「彗星落下」に成功、相棒フィラエとともに12年の任務を終える


2016年9月30日、欧州宇宙機関(ESA)の無人探査機「ロゼッタ(Rosetta)」が12年に及ぶ任務の総仕上げとなる「67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」への衝突に成功しました。彗星着陸機「フィラエ(Philae)」とともに世界初の彗星への着陸という偉業を成し遂げた任務は、これで全て完了しました。

Mission complete: Rosetta’s journey ends in daring descent to comet / Rosetta / Space Science / Our Activities / ESA
http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Rosetta/Mission_complete_Rosetta_s_journey_ends_in_daring_descent_to_comet

グリニッジ標準時の2016年9月30日11時19分、日本時間だと同日の20時19分にドイツ・ダルムシュタッドにあるESAの管制センターではロゼッタからの信号が途絶えたことを確認。これを受けてロゼッタの運用責任者であるSylvain Lodiot氏がミッションの正式な終了を発表しました。その瞬間、管制センター内では、大きな拍手があがり、スタッフ同士が静かに抱き合ってお互いをたたえあう様子がみられました。


ロゼッタは、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に秒速90cmという、人間の徒歩ぐらいのスピードで接近してそのまま衝突したとのこと。ロゼッタには衝突の衝撃を和らげる着地装置が備わっていないため、衝突と同時に機体は破壊されたものとみられています。


衝突の瞬間に電波が喪失したことを示すグラフの様子がコレ。山のように中央が盛り上がっていたものが、平らに変化した様子がわかります。


ロゼッタから送られてきていた数々のデータ通信パケットを表示した画面がコレ。データの説明や生成時刻と受信時刻などが表示されています。


そして、「ロゼッタから受信した最後のパケットのスクリーンショット」という画面がこちら。画面の右下では最後の受信時刻である「2016年の274日目、11時19分36.541秒」という表示を確認できます。


ロゼッタ最期の瞬間はインターネットでライブ中継されたほか、ESAのロゼッタ用Twitterアカウントでもカメラが捉えた画像が公開されました。22.9km離れた地点から撮影した彗星の様子がこれで……


少し近づいて衝突地点を撮影した画像がこちら。


「ワオ!11.7km地点から見える素晴らしい影の様子を見てよ!」というツイート。彗星に近づくにつれ、地表の様子が鮮明に見えるようになってきます。


高度5.8km地点に接近。


上の写真から約90分後、さらに地面が近づいてきました。


高度1.2kmにまで接近。空気のない宇宙空間ということで、影の面は恐ろしいほどの漆黒の闇。


そしてついに最期の瞬間を迎えるロゼッタ。高度わずか51メートルの地点からの画像がコレ。秒速90cmという速度から考えると、この画像から約57秒後にロゼッタは彗星に衝突したものと考えられます。


ロゼッタのミッションでユニークだったのが、ロゼッタとフィラエのキャラクターが存在していたことでした。ミッションが完了した後には、世界各国の言葉で「任務達成」と語りながら、これまでの経緯を振り返るツイートが投稿されました。

打ち上げの様子とともに、イタリア語で「任務達成」。


ロケットからの切り離しに成功した様子でしょうか、管制センターが歓喜に沸く様子とともにスペイン語でも「任務達成」。


タンデム飛行するロゼッタとフィラエが彗星に接近。(スロベニア語)


彗星に近づいて、地表をスキャンしてフィラエの着陸点を探す2人。(フランス語)


着地点が決まり、準備を進めるフィラエ。(チェコ語)


そしてロゼッタからフィラエが切り離され、7時間にわたる着陸フェーズに入ります。(ギリシャ語)


着陸時に噴射装置がうまく作動しなかったことから、フィラエは数度バウンドして予定とは異なる地点に着陸。(ノルウェー語)


不幸にも、着地地点は太陽の光が届かない場所でした。そのまま太陽が当たらないと電力が枯渇してしまいますが、フィラエはデータをロゼッタに送信。(ハンガリー語)


しかしやはり、電力が不足したことで、フィラエは一時的に眠りにつくことに。(マルタ語)


「大丈夫かなぁ……」と心配な様子のロゼッタ。その後、太陽への接近とともに一時的にフィラエの機能は復活しましたが、本格的な復活は絶望的な状況になったため、ESAはフィラエの運用継続を断念しました。(ラトビア語)


中国語で「成功です」というツイートには、彗星とそれに近づくフィラエ、そして着地に失敗して岩陰に隠れてしまったフィラエの様子がアルバムに収められている画像。


ヒンディー語の「ゴールしました」というツイートには、地球からの「さようならロゼッタ!」という画像。


日本語の「任務達成」というツイートには、これまでに数々の偉業を成し遂げた探査衛星とともに写るロゼッタの姿。ロゼッタとフィラエも、歴史に残る探査機になったことを示しています。


そしてついに最期を迎えたロゼッタ。落下地点はフィラエの近くということで、寄り添うように眠りについた2人の様子が描かれました。


なお、これにあわせてフィラエのアカウントでは、ロゼッタの着地に気づいたのか「ロゼッタ、君なの?」というフィラエのメッセージが投稿されていました。地球から遠く離れた場所でつながりあう2人の様子に涙腺崩壊する人も多いはず。


人類初の「彗星着陸」というミッションに成功して観測を行い、太陽系形成の謎の解明にむけてデータを収集した大きな功績とともに、キャラクター化されることでこれまでの探査ミッションとは比べものにならないぐらい感情移入してしまえたのがロゼッタとフィラエのミッションのユニークなところでした。フィラエの着陸ミッション、そして彗星への落下までの2年に及ぶロゼッタの時間をまとめた以下のムービーも必見です。

The amazing adventures of Rosetta and Philae - YouTube


ちなみに、@ミートボールPさんによると、ロゼッタと一緒に描かれていた衛星は以下のとおりだそうです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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