「スーパーマリオ 3Dワールド」に学ぶ「起承転結」を取り入れたゲームデザインがよくわかるムービー
「スーパーマリオ 3Dワールド」などでディレクターを務めた林田 宏一氏は、ゲームデザインに「起承転結」を取り入れるという手法を採用しており、プレイしていくだけで「次に何をするべきか」などを理解できるような構成になっているとのこと。複雑なゲームシステムをチュートリアルだらけにならずにわかりやすく作り上げられた「スーパーマリオ 3Dワールド」のゲームデザインをわかりやすく解説した日本語字幕付きムービーが「Super Mario 3D World's 4 Step Level Design」です。
Super Mario 3D World's 4 Step Level Design | Game Maker's Toolkit - YouTube
ゲーム制作者向けの動画を投稿しているGame Maker's Toolkitが、今回はスーパーマリオ 3Dワールドの「4段階のゲームデザイン」について解説するとのこと。
スーパーマリオ 3Dワールドにはさまざまなアイデアが盛り込まれています。
目の前を通り過ぎようとすると攻撃してくる「ツッコンドル」
上を歩くと色が変わっていく「フリップパネル」
マリオを分身させる「ダブルチェリー」
持ち運んで攻撃する「ほうだいボックス」
乗っている方向に進んでいく「スイッチボード」
消えたり出現したりを繰り返すブロック
つかまって振り子のようにジャンプできる「空中ブランコ」など、新しいシステムだらけのゲームになっています。これだけのシステムを盛り込みながら、どうして無駄が多くなったり、わかりにくくなったり、チュートリアルだらけになったりしないのでしょうか。
この疑問に最も熟知しているのが林田 宏一氏。林田氏はほかにも「スーパーマリオギャラクシー」シリーズなどを担当したディレクターで、自身のゲーム開発の経験から「新要素を立て続けに導入する」というデザイン哲学を考案したとのこと。
林田氏の考案するデザイン哲学とは、1つのステージを4つのパートに分けるというもの。5分ほどでクリアできるステージに新しい要素を盛り込み、どのようなシステムなのかを教え、発展させ、転調を加えて決着させるというのが基本になっています。各ステージはまず安全な環境から導入され……
少し進むとステージの「仕掛け」が登場します。以下のステージでは、先に進むために段差をジャンプする必要があるのですが、ジャンプするとパネルが連動してひっくり返ることを学習できるようになっています。
序盤では「ジャンプするとパネルがひっくり返る」ということを学習するだけで、もし落下しても死んでしまうことはありません。
先へ進んでいくと学習した「仕掛け」の発展形が登場し、落下すると死んでしまいます。
さらに平面から崖を登っていく場面が続くなど、方向性はそのままに難易度が上がっていきます。
崖を超えると転調が始まり、これまでとは異なる「仕掛け」が加えられ……
終盤近くになるとここまでに登場した仕掛けが複数一気に登場するなど、別の視点から考えさせるような内容に変化していきます。
最後は旗をとるためにパネルをうまく操作する腕試しもあり、結末に至るわけです。
林田氏はゲーム開発者マガジン・Gamasutraとのインタビューで、これらのコンセプトは「起承転結」から影響を受けたと話しているとのこと。
どのステージも基本は同じで、「導入・展開・転調・結末」という構成になっています。
以下のステージでは蹴ると飛んでいって爆発する「爆発ボール」を導入し……
ボス戦のクッパをたおすために活用させるという結末につながります。
また、一度導入した仕掛けは別のステージで登場させることも可能で、ゲームの終盤のステージになると経験済みの仕掛けがぞろぞろ出てくることも。
なお、林田氏はスーパーマリオ 3Dワールド以前に「スーパーマリオギャラクシー」のディレクターも担当していますが、起承転結のコンセプトは採用されていません。
例えば、序盤で空を飛べる「フワフワ草」が登場しますが……
途中から移動手段がツルになり、最後にはウサギと競争するという内容です。予測できないことがスーパーマリオ 3Dワールドとは全く異なるプレイ体験になっているものの、スーパーマリオギャラクシーの長所にもなっているとのこと。
一方で、それはシステムを十分に活用できていないことも意味しており、プレイヤーは一度に導入される仕掛けの数に混乱してしまうこともしばしば。そのため、普通のチュートリアル方式に頼る場面もいくつか存在します。
同じく林田氏がディレクターの「スーパーマリオギャラクシー2」では、単一の仕掛けを扱うステージが多いとのこと。ここで起承転結のコンセプトが姿を現し始め、仕掛けの安全な導入・展開・簡単な転調などが盛り込まれています。
そんな林田氏の哲学がより強く採用されているのが「スーパーマリオ 3Dランド」。ステージごとに出現する仕掛けがまとまっているとのこと。この次に発売された3Dワールドでは、より起承転結がはっきりしているわけです。
この考え方は、あまり厳格に適用されているわけではないものの、スピンオフ作品の「進め!キノピオ隊長」でも体験することができます。
なお、マリオ作品がプレイヤーに自然な形でプレイ方法を学習させるスタイルは、最初期のスーパーマリオから見られます。
スーパーマリオの生みの親である宮本茂氏は「キノコ=味方」「クリボー=敵」ということをわかりやすく教えるための工夫を凝らしているとのこと。
最初のステージでキノコを出すと、土管に跳ね返ってプレイヤーの方向にキノコが進んでくるようになっています。
これが敵か味方かわからない初プレイでは、ジャンプしてキノコを避けようとするのですが……
頭上のブロックにぶつかってキノコに当たってしまうように構成されています。するとマリオが大きくなり「敵じゃなかった」ということが自動的にわかってしまうわけです。
一度しか登場しない「クリボーの靴」などの使い捨てのアイデアもありましたが……
基本的に任天堂は別のタイトルになっても再利用できる便利な構造を開発したことになります。「起承転結」はシンプルな考え方で誰でも使える方法ですが、応用するには「上手なアイデア」と「面白い転調」が必要とされます。
なお、この解説を行ったGame Maker's Toolkitが、マリオメーカーを使って「任天堂らしいステージ」を作るにはどうすればいいか分析している日本語字幕付きムービーもあります。
Analysing Mario to Master Super Mario Maker | Game Maker's Toolkit - YouTube
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