脳信号で動物にキーボードを打たせて文字入力させることに成功、手足が動かせない人でも意思疎通できる方法へ

by Steve Petrucelli

脳に移植した電極を用いて「考えるだけ」でロボットアームを自在に操り、ステルス戦闘機F-35を飛ばす女性が登場していますが、スタンフォード大学の研究者によって、新たに「考えるだけ」で言葉をタイピングできる技術が開発・改良されています。研究では、サルがハムレットの一節を考えるだけでタイピングすることに成功しています。

Technology For Typing With Brain Signals Could Allow Paralyzed People To Communicate | Scope Blog
http://scopeblog.stanford.edu/2016/09/12/technology-for-typing-with-brain-signals-could-allow-paralyzed-people-to-communicate/

Brain-sensing technology developed by Stanford scientists allows typing at a rate of 12 words per minute
http://news.stanford.edu/press/view/9839

「脳信号を元にタイピングを行う」という研究はスタンフォード大学のKrishna Shenoy博士とPaul Nuyujukian博士研究員によるもので、多電極アレイを脳に直接埋め込み、脳のうち、手や腕を動かすために使われる部分の信号を読み取るという方法を採用しています。

2人は過去に人間の被験者を対象にテストを行いましたが、タイピングのスピードは遅く、タイピングの結果も不正確に終わりました。そこで博士らは脳信号をタイピングに変換する方法のアルゴリズムを改良。その後、スクリーン上に表示された文字と同じ文字をタイピングするよう訓練されたサルを使い、ニューヨーク・タイムズやハムレットの文章を書き写させるテストを行ったところ、サルは「考えるだけ」で、かつて行った人間を被験者にしたテストよりも正確かつ速いスピードでタイピングが行えたそうです。アルゴリズムの改良によって、タイピングの速度はサルを対象にした初期のテストと比べると、およそ3倍もアップしたとのこと。

以下のムービーでサルの脳信号をタイピングに変換する様子が確認できます。

Stanford researchers develop technology that allows typing based on brain signals - YouTube


画面上にはアルファベットが並んでおり、左上の矢印だけが緑色になっています。

緑色の矢印キーに灰色のボールを持ってくると、キーの色が水色に変化。

正確にキーを押すと成功率が「100％」と表示されました。

しかし、「O」のキーが緑色になっている時に……

「O」の隣にある黄色いキーを触ってしまいます。

こうなると、不正解ということで成功率は下がります。

正しいキーを押すと成功率は再びアップ……というように、脳に埋め込まれたチップを通じて直接タイピングを行っていくわけです。

キーをタイピングしていると、キーボードの下に文字列が現れました。

「To be or not to be. That is the question.(生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ)」ということでサルがハムレットの一節をタイピングすることに成功しています。

この技術は将来的に手足が動かせない人々が言葉を表現するための手助けになる可能性があると見られています。一方で、動物テストでは1分間に12ワードをタイピングさせることに成功しましたが、人間が実用する際には「何を言うべきか」を考える必要がある分、タイピングの速度は遅くなるとのことです。