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専用メガネなしでどの座席からでも映画が立体的に見える新たな裸眼3D技術「Cinema 3D」

by Evan

3D映画を見るときには、それぞれのシステムに応じたメガネをかけて見るものですが、MITのコンピューター科学&人工知能研究所(CSAIL)が、映画館のどの座席からでも専用のメガネをかけずに3D映画を見ることができる「Cinema 3D」という技術を開発しました。

New movie screen allows for glasses-free 3-D at a larger scale | MIT News
http://news.mit.edu/2016/glasses-free-3d-larger-scale-0725


Cinema 3D: Large Scale Automultiscopic Display - paperMain.pdf
(PDFファイル)http://www.wisdom.weizmann.ac.il/~netefrat/cinema3D/files/paperMain.pdf

専用メガネをかけて見る3D映画は、同じスクリーンに対して2つの微妙に異なる映像を投影しています。1つになった映像は、メガネのレンズを通るときにフィルタリングされ、左右で異なる映像として目に入り、「立体的な映像」として認識されます。


この技術の欠点は、まず専用メガネが必要になるという点。そして、観察対象の動きの速さの違いから遠近を把握する「運動視差」ではなく、単に右目と左目で見える像のずれを利用した「両眼視差」によってのみ奥行きを知覚しているという点です。

そこでまず、専用メガネなしで立体視ができるようになる技術として開発されたのがオートマルチスコープ・ディスプレイ(Automutiscope display)です。この技術は視差障壁(パララックス・バリア)を設け、同じスクリーンから複数の角度の映像を映し出すことで、裸眼でも映像が立体的に見える仕組みとなっています。

しかし、オートマルチスコープ・ディスプレイでも解決できない2つの問題があります。1つは、観客がスクリーンから最適な距離にいる必要があること、もう1つはすべての観客に適切な立体映像を提供するためには、映画館の広いシート全体をカバーするために、空間と角分解能の釣り合いを取る必要が出てきます。

Cinema 3Dは、このオートマルチスコープ・ディスプレイの問題点を解消しています。下記のムービーを見ると、それがどういうことなのかがわかります。

Cinema 3D: A movie screen for glasses-free 3D - YouTube


下の2枚の画像は、映画の中の同じフレームを別のアングルから見たところ。「同じフレーム」なのに、微妙にズレているところがポイントです。


「Cinema 3D」は映画館向けの、専用メガネなしで楽しめる3Dディスプレイシステムです。


オートマルチスコープ・ディスプレイは裸眼3Dを実現する技術ですが、映画館の観客全員が裸眼3Dを楽しめるようにするためには、どうしても映像の解像度が落ちてしまいます。


しかし、「Cinema 3D」は特殊な仕組みにより、座席1つ1つというごく狭い範囲に対して複数角度の映像を送り込み、それぞれの座席で自分のための映像を見ているかのように、全員が裸眼3Dを堪能できます。


Cinema 3Dの用いている「特殊な仕組み」というのは、スクリーンに対して傾斜したミラーと、角度を調整するためのレンズ。


プロトタイプはこんな感じ。


この仕組みにより「1列目7番」でも「5列目4番」でも、同じ3D映画を同じように楽しめるとのこと。


専用メガネなしでも立体映像を見られる裸眼3D技術としては、たとえばNHKのインテグラル立体技術を利用した「立体テレビ」などがありますが、大規模な裸眼3Dの実現はとても難しく、今回のCinema 3Dが初めて「メガネなし3D」を大規模に実現しうる技術的アプローチだそうです。

ただし、現時点ではまだ商業ベースに乗っているわけではないので、今後の発展が待たれるところです。

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in ハードウェア,   動画,   映画, Posted by logc_nt

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