土星の衛星「タイタン」には生命が無機物から自然発生するかどうかを調査可能な環境がそろっている
地球外生命体の存在についてNASAなど宇宙開発機関による調査・研究が進められています。土星探査機のカッシーニが収集したデータから、土星の第6衛星「タイタン」に生命が存在可能な環境がそろっていることが判明しました。
Polymorphism and electronic structure of polyimine and its potential significance for prebiotic chemistry on Titan
http://www.pnas.org/content/113/29/8121
Another good reason to sail the seas of Titan—life may exist there | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/07/titans-tidal-pools-could-support-some-forms-of-life-scientists-say/
土星最大の衛星「タイタン」は、太陽系の中で珍しい特徴を持つ衛星です。例えば「地上に巨大な湖があり、純度の高い液体メタンとエタンで満ちている」「厚い大気の層によって、地上の気圧が地球とよく似ている」「気温は摂氏マイナス180度と、非常に低い」といった特徴があります。また、地球を除くと、タイタンは地表に雨が降り液体が存在する太陽系唯一の星です。
by NASA
上記のような珍しい環境を持つタイタンに、地球外生命体が存在するかどうかという疑問は、長らくの間宇宙生物学者を悩ませてきました。しかし近年、カッシーニが収集したデータにより、タイタンの大気の大部分を構成しているシアン化水素が、地上に存在する他の分子と結合し、ポリイミンなどの重合体(ポリマー)を形成可能であることが判明しました。研究では量子力学計算を使い、「ポリイミンが電子を持っていて、非常に低温な状態で生物の自然発生を促進する潜在性がある」ことが突き止められています。
by Kevin Gill
この論文は科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されています。論文の執筆者は「ポリイミンが生物の自然発生を促進する可能性は非常に推論的であり、ある構造物のようなものが発生する兆候のようなものだと考えられます」と述べており、「ポリイミンは水や酸素が存在する温かい場所では形成できないため、将来に実施されるタイタンの探査ミッションにおいてのみ、『あらゆる環境下で自然化学系は化学的に複雑な構造を発展させることが可能である』という仮説が検証されることになるでしょう」と語っています。
by NASA
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