人工知能パイロットが無人戦闘機の戦闘シミュレーションで元空軍大佐に勝利
Googleの人工知能「AlphaGo」がプロ棋士のイ・セドル九段に勝利し、人工知能が人間の職業に取って代わる日も近いといわれる中で、アメリカで開発された戦闘機向けの人工知能「ALPHA」が、無人戦闘機を使った戦闘シミュレーションで、元アメリカ空軍の大佐を打ち負かしました。
New Artificial Intelligence Beats Tactical Experts in Combat Simulation, University of Cincinnati
http://magazine.uc.edu/editors_picks/recent_features/alpha.html
Genetic Fuzzy based Artificial Intelligence for Unmanned Combat Aerial Vehicle Control in Simulated Air Combat Missions -.pdf
http://www.omicsgroup.org/journals/genetic-fuzzy-based-artificial-intelligence-for-unmanned-combat-aerialvehicle-control-in-simulated-air-combat-missions-2167-0374-1000144.pdf
AI fighter pilot wins in combat simulation - BBC News
http://www.bbc.com/news/technology-36650848
Drones Can Defeat Humans Using Artificial Intelligence - Forbes
http://www.forbes.com/sites/jvchamary/2016/06/28/ai-drone/
Fighter pilot AI proves unbeatable in aerial combat after besting US Air Force Colonel
http://www.ibtimes.co.uk/fighter-pilot-ai-proves-unbeatable-aerial-combat-after-besting-us-air-force-colonel-1567909
なお、戦闘シミュレーションの様子は以下のムービーから確認できます。
Flying in Simulator - YouTube
シンシナティ大学で航空宇宙工学の博士課程を修了したニック・アーネスト氏により創設されたPsibernetixという企業が開発している人工知能「ALPHA」が、元アメリカ空軍大佐のジェーン・リー氏ともう1つ別の人工知能を相手に無人戦闘機の戦闘シミュレーションを行い、見事に勝利を収めました。
戦闘シミュレーションは2機の戦闘機を従える青チームと、4機の戦闘機で青チームを迎え撃つ赤チームに分かれて行われ、人工知能のALPHAは赤チームの戦闘機の操縦を担当。青チームの1機はリー氏が操縦を、もう1機はアメリカ空軍研究所が開発した人工知能が操縦を担当しました。
戦闘シミュレーションでリー氏は何度トライしてもALPHAに撃墜されてしまったそうです。リー氏は、アメリカ空軍時代に何百もの戦闘機に搭乗し、かつ、戦闘機の自動操縦プログラムを相手にした戦闘シミュレーションを何度も経験しており、経験豊富なベテランパイロット。しかし、ALPHAとの対戦の後は負けを認め、「ALPHAの危険察知能力や反応は驚くべきレベルでした。こちらの意図に気づいているように見えたし、私の操縦の変化にすぐに反応していたように思えます。また、ALPHAは必要に応じて攻撃と防御を切り替えていましたよ」とALPHAを称賛するコメントを残しています。
リー氏によれば、人工知能やプログラムが操作する戦闘機は実際の戦闘レベルのスピードに付いていくことが難しく、経験豊富なパイロットを相手にすると頻繁に撃墜されてしまうそうですが、ALPHAはリー氏に撃墜されるどころかリー氏を何度も撃墜したくらいで、従来の戦闘機向け人工知能よりも優秀だと感じたとのこと。
人間相手に勝利を収めた人工知能のALPHAは、ファジィ論理のアルゴリズムの一種である遺伝的ファジィツリーという意思決定システムに基づいた行動を実行するとのこと。この意思決定システムは、「1m右へ寄ってください」という具体的な命令ではなく、「もう少しだけ右へ」「ものすごく高い高度を保つ」などといった曖昧な命令に対応できるアルゴリズムを採用していて、戦闘機の空中戦では人間と同じレベルの問題解決能力を発揮できるそうです。
しかも、意思決定を下すスピードが恐ろしく早く、今回のシミュレーションでは、まばたきより短い1ミリ秒という時間で4機の無人戦闘機がどのように飛行するのかを決めていたとのこと。また、ALPHAはたった500ドル(約5万1000円)で組み立てられたというデスクトップPC上で動作しており、安価なシングルボードコンピュータのRaspberry Pi上でも動作可能で、安価で高いレベルのパフォーマンスを発揮できるのも注目すべきポイントです。
ALPHAを開発しているPsibernetixのアーネスト氏は「私たちの目標はALPHAの開発をもっと進めて能力を拡張し、リー氏以外のベテランパイロットに勝利を収めることです」と話しています。
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