心臓を摘出した男性が人工心臓のみで1年以上過ごしたのち心臓移植手術を受け成功
by Ritesh Man Tamrakar
10代のころに心疾患の診断を受け、心臓移植手術を受ける必要があった男性が、ドナー待ちの間に心臓摘出手術を受け、555日にわたって人工心臓のみで過ごした末に、無事、移植手術を受けて心臓を手に入れたという事例が報告されました。
From a heart in a backpack to a heart transplant -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/06/160603072131.htm
Brothers without hearts: Man makes history at U-M Hospital as first patient discharged with Total Artificial Heart | MLive.com
http://www.mlive.com/news/ann-arbor/index.ssf/2015/01/brothers_without_hearts_man_ma.html#incart_most-read
2007年、当時16歳だったスタン・ラーキンさんはバスケットボールの試合中に意識を失って医師の診断を受け、スポーツ選手の主な死因の1つにも挙がる不整脈源性右室異形成(ARVD)心筋症と診断されました。
この病気は遺伝性であることから、家族も診断を受けたところ、1つ下の弟・ドミニクさんも同じARVD心筋症であることがわかり、2人は除細動器の埋め込み手術を受けました。当然、スタンさんはバスケットボール選手の夢を絶たれることに。
しばらくは除細動器のおかげで日常生活が送れていたのですが、2012年4月にスタンさんの状態が一気に悪化。医師は心臓移植手術を施すことを決めますが、長い順番待ちがあるため、「完全人工心臓」の取付を決めました。補助人工心臓は心臓の働きを助ける目的で使われますが、スタンさんの心臓はもはや「補助」ではもたないところまで来ていたため、摘出してしまって、人工心臓にその役割を切り替えることになったわけです。
2014年11月7日に手術は無事成功。「ビッグ・ブルー」という200kg近くあるコンプレッサーがスタンさんの心臓の代わりを務めることになりました。ちょうど時期を同じくして、重さがわずか6kgで「ビッグ・ブルー」と同等の能力を持つ「フリーダム・ドライバー」と呼ばれる携帯型の完全人工心臓がアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を受けたため、スタンさんは心臓をこちらに切り替え、「フリーダム・ドライバー」の中西部で初の利用者となって、帰宅することができました。
by University of Michigan Health System
ちょうどこのころ、スタンさんの弟・ドミニクさんの状態も急激に悪化。2014年12月11日に、スタンさんが使っていた「ビッグ・ブルー」がドミニクさんに取り付けられました。しかし、ドミニクさんは適合する心臓が見つかり、ビッグ・ブルーでの生活は手術を受けるまでの数週間でした。
しかし、スタンさんは「フリーダム・ドライバー」のまま次の心臓を待つことに。すでに心臓を摘出済みのスタンさんは週7日・24時間ずっと「フリーダム・ドライバー」をつけていなければならず、2016年5月9日に手術を受けるまで、実に555日間にわたって体内に心臓がないままで過ごし、無事、新たな心臓を手に入れて「フリーダム・ドライバー」を取り外しました。
ミシガン大学フランケル心血管センターのジョナサン・ハフト医師はこのスタンさんの事例は、心疾患に悩む多くの人にとっての福音になると述べています。
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