サイエンス

Microsoftが1グラムのDNAに10億テラバイト=1ゼタバイトものデータを保存する「DNAメモリ」技術に出資

By Stuart Caie

全ての生物が持つDNAを科学的に合成することで、ごく微量の組織の中に極めて大量のデータを保存できる「DNAメモリ」技術を開発する企業「Twist Bioscience」にMicrosoftが資金を投じ、研究体制を構築する合意がなされたことが発表されました。この取り組みは、急激なペースで増加を続けるデジタルデータを保存するストレージ問題を解決する技術開発のためと見られています。

Twist Bioscience Announces Microsoft Purchase of its Synthetic DNA for Digital Data Storage Research – Twist Bioscience
https://www.twistbioscience.com/press/twist-bioscience-announces-microsoft-purchase-of-its-synthetic-dna-for-digital-data-storage-research/

Microsoft buys DNA from Twist Bioscience - Business Insider
http://www.businessinsider.com/microsoft-buys-dna-from-twist-bioscience-2016-4

Twist Bioscienceは現地時間の2016年4月27日、Microsoftが「オリゴヌクレオチド」の1000万個体をデジタルデータのエンコード技術開発のために購入することで合意に達したことを発表しました。このオリゴヌクレオチドは長い構造を持つ個体となっており、特殊なアルゴリズムで変換されたデジタルデータを塩基配列に組み込むことでデータを長期間にわたって保存することができるようになっています。

すでに知られているとおり、DNAは生物の誕生と成長、存続に必要な「設計図」が書き込まれた二重らせん構造の物質ですが、これは言い方を変えると、生命に必要な「データ」を保存するために生命が培ってきた「ストレージ(データ保存装置)」であるといえます。これに目を付けた科学者によってDNAをデジタルデータのストレージとして利用する研究が進められており、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類ある塩基をうまく使うことで、「0と1」のデジタルデータをDNAに書き込むことがすでに成功しています。


Twist Bioscienceのプレスリリースでも、DNAメモリに関する詳細に目を通すことができます。

Could DNA Super-Charge the Digital Revolution? – Twist Bioscience
https://www.twistbioscience.com/could-dna-super-charge-the-digital-revolution/


このようにしてDNAを使うストレージは極めて高いデータ容量が可能になるほか、従来のストレージ機器とはケタ違いの保存寿命を備えていると考えられています。そのデータ容量は、わずか1グラムのDNAの中に、10億テラバイト=1ゼタバイトという途方もないデータの保存が可能になるとのこと。また、発掘された動物の化石からDNAが採取されるケースからも分かるように、DNAは保存状態が整えば何千年という期間にわたって保存が可能。これは、従来のハードディスクが数年レベル、データ用CDが数十年~理論的には100年ぐらいという状況と比較すると、非常に長い寿命を持つストレージメディアであるといえます。

この技術が実際に世の中に登場するまでにはまだ時間が必要ですが、すでにTwist BioscienceとMicrosoftはDNAメモリでデータの読み書きを行うことに成功済みとのこと。2013年には、データ密度2.2ペタバイト/1グラムのDNAにMP3データを埋め込む技術も開発されていました。

MP3 files written as DNA with storage density of 2.2 petabytes per gram | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2013/01/mp3-files-written-as-dna-with-storage-density-of-2-2-petabytes-per-gram/


アメリカの調査会社「IDC」の予測では、2020年までに世界のデジタルデータ量は40ゼタバイトに拡大するとも予測されており、IoT(Internet of Things:モノがインターネットにつながる社会)時代が始まると急激なペースでデータ量が増加を続ける「データインフレ」に対応する技術の開発が課題の1つとなっています。

総務省|平成26年版 情報通信白書|ICTの進化が促すビッグデータの生成・流通・蓄積
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc131110.html

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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