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思い込みが引き起こす「プラシーボ効果」がいかに強力かよくわかるムービー

By Tomaž Štolfa

薬効成分を含まない偽薬を薬と偽って投与された場合、患者の病状が回復するような治療効果を「プラシーボ効果」と言います。人間の「思い込み」が身体に巻き起こすこの効果について、「The power of the placebo effect」というムービーが解説しています。

The power of the placebo effect - Emma Bryce - YouTube


1996年に56人の被験者を集めて「Trivaricaine」と呼ばれる新しい鎮痛剤のテストが行われました。


試験では被験者の両手の人さし指を使います。一方の人さし指には新しい鎮痛剤「Trivaricaine」を塗り、もう片方の指には何もしないまま……


両方の人さし指に刺激を加えます。


その後の経過を被験者に報告してもらったところ、被験者たちは「鎮痛剤を塗った方の指は、痛みが少なくなった」と回答したそうです。


これは予定通りの結果にみえますが、実際に実験で使用された「Trivaricaine」は、実は鎮痛剤ではない偽物の薬(プラシーボ)でした。もちろん「Trivaricaine」に使用された成分には痛みを和らげる効果などは一切ありませんでした。


それでは何が被験者たちの痛みを和らげたのかというと、その正体こそが「プラシーボ効果」です。


偽薬自体は1700年代から医者が使用してきたことが明らかになっています。


適切な薬を入手できなかった場合や患者が「自分は病気だ」と思い込んでしまっている場合、それらの症状を回復するために、効果のない薬を「有効なもの」と偽って投与してきたわけです。


実際、プラシーボ効果の「プラシーボ(偽薬)」という言葉の語源は「喜ばせる」というラテン語で、これは困った患者の機嫌をどうにかとろうと奮闘してきた医者の頑張りがヒントになっていると思われます。


プラシーボ効果を狙うには、薬が本物であることに説得力を持たせるため、偽薬を使った治療でも本物の治療の過程を模倣する必要があります。そこで、医者は砂糖を薬の形に成形したり……


水を注射したり……


手術を行った「ふり」をすることで患者の目と心を欺いてきました。


また、これらの経験から医者は患者をだますことにはもうひとつの使い道に気づきます。


それは1950年代から行われているもので、新しい治療法や新薬をテストするためのツールとして偽薬が使われています。例えば、新薬の効果を評価するために被験者の半分には新薬を、もう半分には同じ見た目の偽薬を飲ませます。


被験者側は自分が新薬を飲んだのか偽薬を飲んだのかわからないため、実験結果にはバイアスがかからなくなる、と研究者は考えた模様。新薬と偽薬の効果を比較することで、薬の有効性が示されるわけです。


また、新薬と既存の薬の効果を比較したり、その他の薬との効果を比較するために偽薬が使用されることもあります。


しかし、前述の通り偽薬でも人体に影響を与えることがしばしばあります。例えば偽薬を与えられた被験者が、ぜん息の症状や心臓病の症状を回復させた、という事例が存在するとのこと。


また、プラシーボ効果を他の要因と混同してしまい、実際の症状とは異なる報告を医者に行ってしまう場合もあります。


一方、研究者の中には「もしも患者が偽の治療を本物と信じれば、回復への期待が生理的なトリガーとなって実際に症状が回復することもある」とコメントする者もいます。


実際、偽薬はうまく使えばエンドルフィンのように、血圧や心拍数を調整したり、苦痛を和らげたりすることもできます。


さらに、偽薬はストレスホルモンを減少させることで、病気の進行を緩やかにすることの手助けにもなります。


それでは偽薬さえあれば薬は要らなくなるのかと言えばそうではありません。


例えば偽の治療で症状が回復したと考える場合、それは何かしらの薬や治療の効果を見逃しているという可能性があります。また、偽薬によるポジティブな影響は、時間と共に減少していくことが多いのも難点です。

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in 動画, Posted by logu_ii

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