ダイソンの創業者が語る「組織を作る上で重要な要素」とは？

By Theater der Künste

ダイソンはエンジニアがリードする企業で、組織内のメンバーは実際に技術開発に関わるエンジニアであろうがそうでなかろうが、エンジニア的な問題解決方法をとるのが特徴です。そんなダイソンの創業者であるジェームズ・ダイソン氏が、ダイソン流の組織論を明かしています。

Organizational thinking: Why Dyson does it differently - The Globe and Mail
http://www.theglobeandmail.com/report-on-business/careers/leadership-lab/organizational-thinking-why-dyson-does-it-differently/article26014150/

◆専門家を疑う：一般的な方法とは異なる方法をとる

By Virtual EyeSee

ダイソン氏は常に「若さ」と「未経験」という2つの要素に信頼を置いているそうで、これはダイソン氏が数人の新卒エンジニアとダイソンをスタートさせた頃から変わらない考えだそうです。創業からダイソンは成長を続けており、現在では2000人あまりのエンジニアおよび科学者が企業内に在籍していますが、今なお雇用の半分は大学からの新卒採用でまかなっているとのこと。ダイソンでは未経験であることを過小評価せずに採用を行なうので、研究チームのメンバーの平均年齢は26歳と非常に若いそうです。

この他、ダイソンでは外部の専門知識を持つ数人の熟練の専門家も雇い入れるそうですが、基本的には雇用初日から若い人材に重要な責任ある仕事を任せる模様。若く未経験の人材に初めから責任ある仕事を任せる理由は、「『なぜこの仕事はこうなのか』と質問し、問題を解決することを期待しているから」とダイソン氏。ダイソン氏が期待しているのは「前回どうやってこの問題が解決されたのか」ではなく、「今回、どうやってこの問題を最善の方法で解決するか」であると語ります。これは、エンジニアにとっての「概略を作り、プロトタイプを作り、試験を行なう」という製品開発時のフローと同じものです。

この考え方はテクノロジー企業に限らず、多くの企業に利益をもたらすことができる、とダイソン氏。盲目的に物事を行なうのではなく、リスクを冒しても新しいアプローチをとることが、より良い成果を生み出すことにつながるとのこと。

◆長期的視点をとる

By Steve Jurvetson

ダイソンはファミリービジネスで、資産のほとんどを現金化していない、とダイソン氏。これにより、ダイソンでは長期的な視点をとることが可能になっている模様。「我々は毎日リスクを冒しています」とダイソン氏は語っており、タイムスケールを拡張することで短期的に見た時の問題の重要性が薄れ、より優れた機会にそれらの問題に取り組めるようになるとのこと。「我々には同族会社であるが故の、異なった視点から物事を考えることができる自由さがある」とダイソン氏。

ダイソンは必ずしも営利目的で動いているわけではありませんが、ビジネスでは利益を生み出す必要があります。そこで、ダイソンでは企業を成長させ、新たなアイデアや技術を生み出すために、研究開発に多額の資金を投入し、刺激的な研究を行なう大学等の研究機関との連携を図っている、とのこと。

なお、ダイソン氏によるとダイソンは未来の技術開発のために約27億ドル(約3100億円)もの投資を行なっており、次の4年間で100以上の新製品を世界中でリリースしていく予定だそうです。ダイソンでは投資効率についての研究を行なっていないそうですが、立証されていないアイデアにさえ投資を行なっているとのことです。

高効率の空気の流れを研究している際に偶然誕生した、トイレに設置されているハンドドライヤーの一種である「Dyson Airblade」は、こういった未知の部分から生まれた製品である、とダイソン氏。

◆他のものから学ぶ

By Steven S.

自分にとってのヒーローを持っていることはとても重要なこと。ダイソン氏にとってのヒーローはターボジェットエンジンの先覚者の1人であるエンジニアのフランク・ホイットルで、彼は直感的に驚くほど正しく物事を理解する、異常なほどの先見性を持っていた人物です。ホイットルは航空省が関心を失ったあともより良い航空エンジンを開発しようと研究を続けたため、マーリンエンジンが1万3000個もの可動パーツを持っているのに対して、フランフ・ホイットルが発明したジェットエンジンの可動パーツはたったひとつでした。ダイソンではエンジニアにとっての忍耐のシンボルとしてホイットルの開発したエンジンを購入したそうです。

それでも、最もインスパイアされるものは「若いエンジニア」だとダイソン氏は語っています。