「共感」が物事や世界を悪化させる理由
by Celeste RC
円滑な人間関係のためには相手に共感を示すことが大切と言われますが、「時に共感は最悪の結果を生み出すことがある」として、心理学教授のPaul Bloom教授は説いています。「共感が世界を悪化させる」というBloom教授の主張はどのようなものなのか、The Atlanticがアニメーションでわかりやすく解説しています。
Against Empathy
http://www.theatlantic.com/video/index/474588/why-empathy-is-a-bad-thing/
ムービーは以下から確認できます。
共感や感情移入は人間関係をうまくいかせるために重要なものだと言われていますが……
実はモラルの観点から見ると、共感はよいものではなく、世界をより悪い状態にすると言われています。
人は他人に共感すると、他人の身に起きていることをまるで自分のことのように感じます。
そのため、共感は他人を気に掛けたり、他人を助けたりという行動につながります。
ただし、共感は人を盲目にさせ、「長期的に見ると、自分の行動がどのような結果を生み出すのか?」ということについて見落としを生み出すとのこと。
自己の利益よりも他者の利益を優先する「利他主義」を実行する人の中には、実は「人に親切にすることで自分が温かい気持ちになって満足する」という動機を持つ人がいるのではないか、という説を唱える人もいます。Warm-glow givingというこのタイプは、色んなチャリティに少額ずつ寄付し、かつ使い道に対して興味を示さないとのこと。
盲目の子どもたちや……
農家
鶏に対してなど。多くの場合、チャリティに寄付されたお金は意味のあることに使われていくのですが……
ただのお金の無駄使いに終わることも。
一方で、効果的利他主義者は「世界には何が必要で、どこを手助けすれば状況がよくなるか?どうお金を使うべきか?」という、全体的な目線で物事を見ることができます。
このタイプの慈善活動は世の中をよくしていくことが可能です。
世界をよりよくしていくための行動がハッキリしましたが、では世界にとって最悪な行動は何でしょうか。
それが「思いやりによる行動」もしくは「早計すぎる道徳的判断」に当たります。
民主主義国家が戦争に向かうのは「苦しめられている人がいるから」です。イラク戦争は現地に苦しんでいるという理由で政府から支持されましたが、根本にある動機は「苦しんでいる人を助けたい」という「感情」でした。
もし別の見方ができたなら、「これから起こす行動で、どのくらい被害者が増えるのか?」と考えられたはず。
「共感」によって全体像を見落とし、物事の一部にしか焦点を当てなかった結果……
「苦しんでいる人を解放するために攻撃しなきゃ」という行動に結びついたわけです。
そして人々を救う名目の攻撃で国を崩壊させた後に、「なんてことだ、大勢の人が死んでしまった」と気付くわけです。
世界をよりよくするためには効果的利他主義者になり、その場の感情に左右されるのではなく「どうしたら人を助けられるのか?」ということを考えるべきなわけです。
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