ハードウェア

1円玉以下の極小ロボットが自分たち専用の道具を自作したり合体して別のロボットに変身するムービー


1946年にスタンフォード大学が設立した世界一大きな研究機関のひとつが「SRIインターナショナル(以下、SRI)」です。このSRIでは、アメリカの10セント硬貨(日本の1円玉よりも小さな硬貨)よりも小さなロボットを作成しており、この極小ロボットたちはさまざまな能力を備えています。そして、最新の極小ロボットたちは、自身以外のロボットを組み立てることができるだけでなく、極小ロボットが自身で使用するためのツールも作り上げることができるようになっています。

SRI's Micro Robots Can Now Manufacture Their Own Tools - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/automaton/robotics/industrial-robots/sri-micro-robots-can-now-manufacture-their-own-tools

数年前、SRIは何百もの極小ロボットを用いて「ロボットに小さな構造物を作らせる」という「MicroFactoryプラットフォーム」計画をスタートさせました。そもそも、極小ロボットを使って複雑な構造物を制作するには複数の極小ロボットが綿密に協力し合うことが必要です。その場合、各ロボットにはそれぞれ特定のタスクを割り当てることになりますが、それでは退屈すぎるとSRIの研究者たちは考え、「極小ロボットが自分たちでカスタムエンドエフェクタを開発できる工具工場を制作しよう」ということとなり、ロボット用の工場としてMicroFactoryが制作されました。

SRIの極小ロボットは小さな磁石のようなもので、内蔵されたプリント基板に組み込まれているプログラムがロボット自体を電磁石のように操ることで、動きやスピードをコントロールします。以下のムービーはSRIの極小ロボットがどのように動き、道具を使うとどのようなことができるようになるかを示したものです。

Magnetically Actuated Micro-Robots for Advanced Manipulation Applications - YouTube


以下の赤丸で囲まれた部分にあるのが極小ロボット。内蔵のプリント基板で生成した電磁場をコントロールすることで自由自在に動き回ります。


極小ロボット(赤丸)は高速で移動可能で、最大速度は35cm/秒。


赤丸部分にある3つの障害物を避けながら高速でジグザグ走行することもできます。


さらに、以下のように壁を垂直に登っていくことも可能。


他にも、滑らかな曲面ならば自由自在に動き回ることができる模様。


以下の写真に写っているのは73体の極小ロボットで、1秒間に19回も移動を繰り返しています。


赤丸部分にいるのはエンドエフェクタとして棒を取り付けられた極小ロボット。


この棒を銀色の筒の中に突っ込んで……


壁に棒を押し当てます。これは壁に接着剤をペタペタつけているところ。


接着剤をつけ終わったらロボットが下がっていき、新しい他のロボットが登場。


新しいロボットは赤色の容器に棒を押しつけて……


黒色のカーボン棒を持ち上げます。


そして壁にペタリ。


この極小ロボットを使って高強度のトラス構造を作ってみるデモがスタート。


ロボットが移動して……


トラス構造の素材となるカーボン製の棒を持ってきました。


そして、もう一体のロボットがカーボン棒を取り付ける部分に接着剤を塗り、棒を設置。


そして紫外線を当てて接着剤を硬化させればトラス構造の完成です。


これを繰り返して作られた29cmの長さのトラス構造。


極小ロボットで作ったトラス構造はとても頑丈で、さまざまな重りを支えられます。


このように極小ロボットではさまざまなタスクを行えるわけですが、基本的には同一のロボットに異なるエンドエフェクタを装着しています。つまり、極小ロボットを使って何かをするにはロボットにとりつけるエンドエフェクタを毎回変更しなければいけないわけで、これでは異なるロボットを作成することとほとんど労力が変わりません。

そこで、SRIは極小ロボットが自分で作成したツール(エンドエフェクタ)を使って効率的に作業を行えないかの実験を行っています。以下のムービーでは極小ロボットが自分で自分を組み立てる様子や、極小ロボットが使用するツールを同じ極小ロボットが作り上げている様子が見られます。

SRI Micro Robots Self Assembly & Tools Fab - YouTube


赤丸部分にある小さな点は、ロボットを構成するパーツとなる極小ロボット。


これが「インキュベーター」と呼ばれるスライドガラスと銅線でできた構造部分に入っていき……


各ロボットをくっつけて、くの字の新しいロボットが誕生。


以下のロボットは5つのパーツで構成されていますが、パーツの数や形は自由自在だそうです。


そして次のムービーでは赤丸部分にいるロボットが青色の容器に棒を押し込み……


次は銀色の容器に棒を押し込み……


最後に極小ロボットに棒をちょんちょん当てます。


ロボットはとても小さく、指と比較してもこのサイズ。


極小ロボットに棒を当てて何をしていたのかというと、赤枠部分にあるような多種多様な形の棒を自作していたわけです。


極小ロボットがロボットやツールを自作する「MicroFactory」は、特定の用途のロボットを購入したりさまざまなタスクが行えるロボットを購入して目的に応じたツールを買い与えたりするよりもはるかに素早く、効率的とのこと。

さらに、SRIは地面の上を滑らせるのではなく「磁気を使って空中を浮遊させながらロボットを動かす」という新しい移動方法にも取り組んでいる模様。もしも空中浮遊が可能になれば、200ナノメーターというさらに小さなロボットの実現も可能になるそうです。

MicroFactoryの開発者である Ron Pelrine氏は、この極小サイズのロボット技術は従来のオートメーション技術を革新する可能性を秘めている他、製造関連を超えた幅広い分野で活躍する可能性もある、と説明しています。

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in ハードウェア,   動画, Posted by logu_ii

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