磁石で脳をコントロールして「幸福な気持ち」にさせる実験が成功
By new 1lluminati
磁石を使って脳の特定回路をコントロールし、「幸福な気持ち」を引き出すことにバージニア大学の科学者たちが成功しました。
Magnetic mind control works in live animals, makes mice happy | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/03/magnetic-mind-control-works-in-live-animals-makes-mice-happy/
Nature Neuroscienceで公開された論文によると、目に見えない力を使って脳内にある報酬回路を刺激して、例えばおいしい食事をした経験などを呼び起こすことでネズミの行動を微調整することに成功したことが明らかになりました。この「目に見えない力」というのは「磁場」のことで、ある特定の磁場を作り出すことで、この磁場の中にいるネズミが過去の幸福な経験を呼び起こすことに成功し、これを用いて行動をコントロールすることに成功したというわけです。
今回の発見は脳の機能や機能異常などの研究において新境地を開くことになるかもしれないとのこと。また、脳障害などに対する新しい治療法になる可能性も秘めている模様。
By Windell Oskay
「我々の知る限りでは、今回の実験結果が磁気を使って神経系をコントロールできた初の実証実験です」と語るのは、論文の著者でありバージニア大学の生物医学者であるAli Guler氏。もちろん、過去数年間にわたって多くの科学者たちが脳の特定回路をコントロールしようと取り組んできたわけで、その中には光信号を用いるものや薬物を用いるものまでさまざまなものがありました。
しかし、これまで研究されてきた方法にはいくつかの欠点がありました。例えば光信号の場合、脳の奥深くに光信号を放つのは非常に困難であり、有用性は低いと言わざるを得ませんでした。また、薬物を使用する方法の場合、脳の奥深くに到達することは可能ですが、時間と共に特定回路以外にも効果が広まってしまうという欠点があります。
By Stephen Bowler
このように、脳をコントロールすることは生物学的に非常に難しいものと思われていたのですが、磁場を用いた方法ならば、瞬時にかつターゲットの回路以外に影響を及ぼすことなく、特定回路を刺激することが可能になる、とGuler氏は論文で主張しています。
今回発表された研究では、神経回路を通して体に信号を送るための電荷を構築するカギとなる「イオンチャンネル」を用いた実験が行われています。研究では機械的圧力に反応を示すことで知られているイオンチャンネルの「TRPV4」を、鉄を貯蔵するたんぱく質のフェリチンと融合させる遺伝手術を行い、これにより誕生したハイブリッドたんぱく質を「マグニート」と呼んでいます。これは磁場と細胞が反応していることを確認するために使われており、実際にこのマグニートに磁石を近づけると、マグニートは急に動き出してイオンチャンネルを開き、これにより細胞内にイオンが流入して電位変化が起こり、脳信号を飛ばすことが可能になる、という反応が見られたそうです。
さらに、脳発達のモデル生物であるゼブラフィッシュにこのマグニートと呼ばれるたんぱく質を注入したところ、磁場により行動が変化するかもしれないことが判明。続いて研究チームはマグニートを体内にもつネズミを使った実験を行い、磁場により活性化したマグニートが、報酬系に深く関わる神経伝達物質の「ドーパミン」に反応する細胞が活性化したことから、ネズミを幸福な気持ちに変化させることができることを発見したというわけです。
なお、この技術は害獣駆除にも役立つかも知れない、と海外ニュースサイトのArs Technicaは報じています。
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