人間の脳細胞を持って賢くなった「半人間脳マウス」が誕生

By Leo Reynolds

人間と他の動物を決定的に分けるのは、高度に発達した人間の脳がもたらす高い知性です。ある研究チームではそんな人間の脳細胞をマウスに移植して定着させ、「半人間脳」状態のマウスを作り出すことに成功しました。

The smart mouse with the half-human brain - health - 01 December 2014 - New Scientist
http://www.newscientist.com/article/dn26639-the-smart-mouse-with-the-halfhuman-brain.html

この実験を行ったのは、アメリカ・ロチェスター大学メディカル・センターのSteven A. Goldman博士の研究チーム。博士は臓器提供を受けた人間の胎児から取り出した未成熟のグリア細胞を子どものマウスの脳細胞に移植し、成長を観察。すると1年後、マウスに移植された人間のグリア細胞はマウスが元来持っていたグリア細胞に取って代わる形で増殖し、当初は30万個だった細胞の数は1200万個にまで増加したとのこと。Goldman博士はその様子について「人間の細胞がマウスの細胞を追い出す形で、マウスの細胞はすき間の部分へと追いやられたように見えます」と語っています。

今回の実験で増殖したグリア細胞は、ヒトの脳では脳神経細胞のおよそ50倍の数が存在し、人間の思考に大きな役割を果たしていると考えられています。ヒトのグリア細胞はマウスのそれよりも10~20倍程度の大きさがあり、信号を伝達する突起状物質を100倍も多く備えているとみられています。今回の実験ではヒトのグリア細胞が、中枢神経系に存在して脳活動の最も高度な役割を果たすと考えられているアストロサイトが形成される部位に移植されることで、マウスの知性にどのような影響を与えるのか、関心の集まるところでした。

By UBC Public Affairs

音と電気ショックを与えて危険予知を学習させる実験を行ったところ、グリア細胞を移植されたマウスは通常のマウスよりも高い記憶力を見せたことが判明しており、Goldman博士は「明らかに通常のマウスよりも賢いマウスであると言える」としています。

しかし同時にGoldman博士は「これは根本的にマウスの脳です」と語り、決してマウスの脳が変質して新たなものになったのではないという見解を強調します。博士は「これはマウスに人間が持つ特有の能力を与えるものではありません。移植された人間のグリア細胞はマウスの脳の処理能力をアップさせましたが、それでもマウスの脳であることから変化はありません」と語っており、映画「スチュアート・リトル」や「アルジャーノンに花束を」に登場するような天才ネズミを実現するようなものではないとしています。

By Natasha Fadeeva

博士の研究チームでは、マウスよりも知性の高いラットでも同様の移植を実施し、同じように細胞の増殖が確認されています。さらにはサルを使っての同様の実験が検討されましたが、「潜在的な倫理的問題」を理由に中止したとのことです。

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