遺伝子検査の結果で生命保険の加入が拒否されるかもしれない
By University of Michigan School of Natural Resources & Environment
アメリカでは2008年から遺伝子情報差別禁止法(GINA)が施行され、健康保険の加入において遺伝子検査を要求することや、遺伝情報による保険加入の拒否などが禁止されています。しかし法律は生命保険・長期医療保険・身体傷害保険をカバーしておらず、会社は保険加入希望者から得た健康状態や家族歴などの遺伝情報から「危険過ぎる」と判断した人の加入を拒否することができます。
If You Want Life Insurance, Think Twice Before Getting A Genetic Test | Fast Company | Business + Innovation
http://www.fastcompany.com/3055710/if-you-want-life-insurance-think-twice-before-getting-genetic-testing
UnitedHealthcareの調査によると、アメリカの遺伝子検査市場は年間50億ドル(約5700億円)の規模に達しており、10年以内に150億ドル(約1.7兆円)~250億ドル(約2.8兆円)の規模に成長すると試算されています。検査費用も安くなりつつあり、遺伝子検査企業のイルミナは約1000ドル(約11万4000円)でヒトゲノムを全てシーケンスすることができるほか、乳がんの原因遺伝子であるBRCA1の検査であれば、アメリカでは250ドル(約2万8000円)ほどで行うことが可能です。
急成長している遺伝子検査市場ですが、アメリカでは(PDFファイル)遺伝子情報差別禁止法(GINA)で生命保険・長期医療保険・身体傷害保険などの保険は制限されていません。生命保険の加入にあたって遺伝子検査が要求されることはないものの、保険計理士が遺伝子検査結果を含む健康診断の結果を顧客に尋ねることは、慣例的に発生しているそうです。今後、保険加入にあたって遺伝子検査を求める保険会社の登場や、遺伝子検査を明示しない顧客が保険に入りにくくなる、といった事態の発生が懸念されています。
健康保険以外の各種保険に遺伝子検査情報が必要になれば、遺伝子検査市場の縮小につながる恐れがあります。いくつかの団体はGINAの法改正を求めており、10年以上抗議を続ける団体も存在するのですが、既存の保険モデルは遺伝子疾患のリスクを含んで設計されておらず、法改正の実施は保険業界のビジネスモデルを根底から覆すことにつながる可能性があります。そのため、GINAの改正には保険業界からの強い反対運動が起きているとのこと。
By Pictures of Money
日本ではGINAのような遺伝子情報差別する法律が整備されていませんが、保険や雇用における遺伝情報の取り扱いが問題となりつつあり、遺伝子検査企業Color Genomicsや23andMeは、利用者に対して遺伝情報を開示するリスクについて説明しています。アメリカの生命保険業界においては、保険会社が健康状態の質問を要しない手頃なレートかつ最低限の保証範囲を備えた最小プランの生命保険の用意が、遺伝子検査と保険の妥協点として提案されています。
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