「DNA検査」を3つ同時に受けてみたら明らかになった興味深い事実とは?

By Ars Electronica Center

地球上の生き物の細胞内には一部のウイルスを除いて必ずDNAが存在していて、私たちの体を形づくる「設計図」が保管されています。DNAの解析が進むにつれてさまざまな病(やまい)との因果性が認められてきたことから、今度はDNAを分析することで自らの疾病の傾向を事前に把握し、将来のリスクに備えるという「DNA検査」を実施するケースが多く見られるようになってきました。そんな中、ある女性が家系からくる疾病リスクを把握するためにDNA検査を実施したところ、驚くべき事態に遭遇することになりました。

I Had My DNA Picture Taken, With Varying Results - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2013/12/31/science/i-had-my-dna-picture-taken-with-varying-results.html


DNA検査を受けたのは、ニューヨーク在住のKira Peikoffさん。28歳の女性で現在は健康面に不安は感じていないものの、家族には冠状動脈性心臓病やリウマチ性関節炎、アルツハイマー病、そして乳ガンをわずらう人がいたことから、DNA検査を受けて将来の疾病リスクを調査しました。まだ進化途上にあるというDNA検査の信頼性を心配したKiraさんは、検査を3つの検査機関で同時に実施することで「検査の検査」を行うことにしましたが、その過程はハプニングの連続で、その結果も驚くべきものだったそうです。

◆検査の依頼先を決める
検査の依頼先としてまず候補に挙げたのは3社で、最初にアプローチしたのはGoogleから出資を受けて2006年に設立されたベンチャー企業である「23andMe」社でした。同社ではわずか99ドル(約1万円)の検査料でDNA検査を行うというサービスを提供しており、利用者は23andMe社から送られてくる検査用キットに自分の唾液を採取して返送すると、240項目以上もの検査結果を得ることができるというシステムになっていました。

By Ian Ruotsala

検査を依頼したKiraさんですが、23andMe社はニューヨーク州での保健局の許可を持っていないため、検査用の検体を受け取れないという規定に引っかかってしまいました。プロジェクトの第一歩めからつまずくことになってしまったKiraさんですが、なんとかニュージャージー州に住む親族の協力を得て検体を提出することに成功。しばらくして検査結果を受け取りましたが、23andMe社はなんとその直後にアメリカ食品医薬品局(FDA)の規定する基準を満たしていないと判断され、検査用キットの出荷停止命令が下るということになってしまったそうです。

また、候補に挙がっていた残る2社に関しても、すでにサービスを停止してしまっていたことが判明したため、Kiraさんはさらにリサーチを行わざるを得ない状況になったとのこと。最終的に、285ドル(約3万円)の費用で25種類の病気リスクを判定してくれる「Genetic Testing Laboratory(GTL)」と、399ドル(約4万2000円)で24種類の病気リスクを判定してくれる「Pathway Genomics」に依頼することを決め、それぞれの3社の結果を検証することにしました。

◆戻ってきた検査結果を検証すると……
2か月後、出そろった各社のレポートを検証したところ、Kiraさんは驚きの結果を目にすることに。23andMeのレポートで最もリスクが高いとされていたのは「乾癬(かんせん)」と「リウマチ性関節炎」の2つでしたが、G.T.L.からのレポートの中で最もリスクが低いとして挙げられていたのは、なんとその「乾癬」と「リウマチ性関節炎」だったというのです。

冠状動脈性心臓病に関しては、23andMeとG.T.L.は両者ともに「平均レベル」という結果だったのに対し、Pathway Genomicsは「平均以上」という回答を挙げています。また、2型糖尿病の結果で興味深いのは、G.T.L.は10.3パーセントという数値に対して「中程度」のリスクと判定したのに対し、23andMeは15.7パーセントという高い数値にもかかわらず「低リスク」という判定を行っていたのです。企業によって病気リスクの基準がバラバラであることはもちろん、一方の結果では心配を、もう片方の結果からは安どを覚える表現が行われていたという事実に驚きを覚えたそうです。

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通常、DNA検査を行う際にはDNAに含まれる遺伝情報である塩基のうち、SNP(一塩基多型)と呼ばれるセグメントを読み取って検査を行います。しかし、このセグメントと病気との関係は、人によってさまざまであるというのが問題の原因となっているようです。ヒトのDNAに含まれる30億個すべての塩基を検査しようとすると、じつに3000ドル(約31万円)もの費用が必要になってきますが、今回の検査で検証されたのはわずか100万個に満たないSNPでしかありませんでした。

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コロンビア大学の生命論理学者であり臨床精神医学の教授であるRobert Klitzman博士はこの状況を「一冊の本を読もうとするときに、各ページの1文字目だけを読んでいるようなものです。DNA情報の全体のうち99.9パーセントを見ずに結果を出そうとしているということであり、得られる情報はおのずと限られています」と述べています。また、DNAと多くの病気の因果関係が解明されていないことも原因の一つとなっています。DNAが持つヒトゲノム情報は、病気の原因全体のうちわずか5~20パーセントしか占めていないと言われているのです。病気の発生原因は遺伝要因と並んで外因によるものが存在していることは無視できるものではありません。

この結果に対し、23andMe社はコメントを拒否しています。G.T.L.社を統括するGeneral Genetics Corporationは「遺伝子検査の結果は非常に複雑であること、また外因によって影響を受けるなどの長期的視点において作用をもたらすファクターが存在することから、検査結果は専門家による解釈を求めるべきである」という回答を返しています。Pathway Genomics社は「弊社は米国病理医協会並びに、米国保健福祉省による臨床検査室改善法に合致して公認された機関です。よって、当社の検査結果は公認を受けていない機関よりも高い信頼性を持つものと考えられています」という回答を行っています。

専門家は、「予測技術における科学に十分な信頼性をおけない状況である以上、利用者はその結果をうのみにするべきではない」として、その調査結果は「『楽しみの一つ』ぐらいのレベルで捉えて、あまりシリアスに受け止めないように」とアドバイスを行っています。そして極めつけに「健康に対して有効にお金を使いたいと考え、そしてもし手元に数万円のお金があるのであれば、体重計を買いましょう。そして毎日きちんと計測し、しかるべき行動をとるほうがいいです」と締めくくっています。

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