なぜ10代はリスクを冒しがちで移り気で気分屋で不機嫌なのか?
by Antoine Gady
人間のライフサイクルの中でも、10代の思春期は変化に富んだ時期であり、感情の起伏が非常に激しい年齢でもあります。ティーンエージャーの気分が不安定になりがちな理由を、脳と体の仕組みを分析して科学的に解説したムービーが「Why Are Teens So Moody?」です。
Why Are Teens So Moody? - YouTube
脳の発達に重要な時期は、主に0歳から5歳だといわれています。脳が急速に成長していくのが0歳から5歳の間だからです。
しかし、最近の研究では、13歳から19歳の思春期も同じくらい脳の発達に重要な期間だということが新たに明らかになっています。思春期には、脳内で灰白質が作られます。
女性は12歳、男性は14歳ごろになると、脳の大きさが成人とほぼ同じになります。
脳が十分に大きくなった後、脳を効率よく働かせるために、不要な灰白質がそぎ落とされていきます。同時に、「髄鞘(ずいしょう)」が多く生成され、脳の電気信号の伝達を高速にする機能が発達していきます。
思春期の体の変化は、視床下部と呼ばれる間脳の器官から始まります。まず視床下部で生成された「キスペプチン」というタンパク質が下垂体へ運ばれます。
下垂体では、男性ホルモンの一種であるテストステロン、女性ホルモンのエストロゲン、黄体ホルモンの働きを持つプロゲステロンが分泌されます。
ホルモンの影響で卵巣や精巣の活動が活発になり、第二次性徴期を迎えます。
ホルモンは感情にも影響を及ぼすため、映画を見た後に突然泣いてしまったり、高速道路で車をぶっ飛ばして走らせるといった行動に出やすくなります。また、10代の脳は映像や音楽に反応しやすく、例えばワン・ダイレクションのように音楽とビジュアルを併せ持つアイドルグループなどに夢中になる理由ともなっています。
計画を立てたり、リスクの発生を予想したりする脳の部位は、ティーンエージャーの時期には発達途上段階です。
そのため、ティーンエージャーはリスクの高い行動を取りたがる傾向があり、避妊せずに性行為に及んだり、お酒を飲んだり、車で暴走したりといった無謀な行為にしばしば走ることがあります。興味深いことに、ドライブシミュレーターを使った実験では、大人とティーンエージャーが事故を起こす確率はほぼ同じという結果が出ています。
しかし、大人数でのドライブは若者ドライバーの集中力を阻害しやすく、大人よりも危険な運転になってしまうとのこと。
若者が周りの影響を受けやすいということは、逆に言うと、同世代の若者とお互いを理解しやすくなるということでもあります。好きな音楽を順位付けするという実験を10代の若者を対象に行ったところ、同じ世代の若者が好む曲を事前に知らされている場合は、同世代の好みに合わせて自分の音楽の好みを変える傾向にあることが判明しています。
小さい子どもや大人とは違って、10代の若者は「自分は孤独だ、社会から孤立している、自分は必要とされていない」と激しく感じることがあるという特徴を持っています。
思春期に若者が家族よりも友達を大事にするという傾向は、人間の生物学的な特徴に基づいています。安全で安心できる自宅から飛び出して外の世界に触れることで、遺伝子的に多様な人間と混ざり合い、近親交配を防ぐという本能があるためです。
また、人間はストレスのかかる環境下に置かれると、ホルモンを分泌して……
脳細胞のショックを和らげています。
しかし、ティーンエージャーの場合は、ストレスがかかってホルモンが分泌されると体内時計が乱れ、大人よりも3~4時間遅い生活リズムになることもあります。
ティーンエージャーは健康状態が非常によく、体内の免疫機能がしっかりと働いています。
気温の変化に対応しやすく、ガンにもなりにくいとされています。
しかし、健康状態がいいにもかかわらず、幼児期よりも死亡率が200~300%も高いというというデータもあるとのこと。理由として、自動車事故や、殺人、自殺などが挙げられています。
思春期には、脳の白質と灰白質の変化や脳細胞同士の結合によって、さまざまな問題が起こると多くの研究者が分析しています。
思春期には脳内でシナプス結合が非常に多く発生します。
さらには脳の可塑性が高いため、物事を素早く学習したり覚えたりすることが可能。毎日の行動がルーチン化している成人の脳とは異なり、若者の脳は新しい環境に素早く対応できます。
ムービーの最後は、「若者が無謀で激しい行動に出ることに価値があるのではなく、今までの生活に変化を生み出して、周りの人の人生も変えていくような行動が必要です」と締めくくられています。
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