CIAは映画「ゼロ・ダーク・サーティ」にどれだけ協力したか


2012年に公開された映画「ゼロ・ダーク・サーティ」はビンラディン殺害作戦を描いた作品で、第86回アカデミー賞音響編集賞を受賞しています。単に政権を持ち上げるだけのプロパガンダ映画ではなく、批評家・観客からの評価も高い作品ですが、その製作にはCIAが大きな役割を果たしていました。

Tequila, Painted Pearls, and Prada — How the CIA Helped Produce 'Zero Dark Thirty' | VICE News
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映画公開前の2011年8月、この「ゼロ・ダーク・サーティ」を撮るために、キャスリン・ビグロー監督らがオバマ政権から重要情報を手に入れたと報じられ、ビグロー監督はこれを否定しています。しかし、FOIA(情報公開法)に基づいてVICE Newsが入手したCIAの100ページ以上にわたる資料は、CIAと映画との関わりを示しています。

ビグロー監督と脚本家のマーク・ボール氏は前作「ハート・ロッカー」が2008年に公開となったのち、次回作を、2001年9月11日に発生した全米同時多発テロ事件の首謀者であり、いつまでも逃げ続けていたビン・ラディンに関するものと決めました。仮のタイトルは「トラボラ」で、2006年に行われて失敗したビン・ラディン捕獲作戦が中心になる予定だったようです。

前述のCIAの資料によると、ビグロー監督らとCIAが接触を持ったのは、この「トラボラ」の製作が進められていた2010年のこと。当時のCIA長官であるレオン・パネッタ氏は話を聞き、映画製作への協力を約束しました。

2011年5月2日、アメリカ軍はビン・ラディン殺害を決行。これを受けて、脚本のボール氏とCIAが会合を行い、「トラボラ」用の脚本を諦めて、改めて、CIAがどうやってビン・ラディンを探し出したかという作品を作ることになったそうです。6月24日に、ビン・ラディン発見に功績のあった職員の表彰式が秘密裏に行われましたが、ボール氏は部外者であるにも関わらず招待されました。この時点で、ボール氏は新企画「ゼロ・ダーク・サーティ」のために動いていて、その「研究の促進」のため、CIA職員や施設へのアクセスが許可されていたことがわかっています。

資料によると、ビン・ラディン殺害作戦に実際に関わったチームメンバーが、映画の制作者側に対して、作戦の情報を提供し、一方で、ビグロー監督らはCIA職員らに食事などをおごったりしていたそうなのです。映画の主人公として描かれているCIA分析官・マヤは特定の人物をモデルとしたキャラクターではなく、何人かを合わせたキャラクターだと言われていますが、そのモデルの1人だとされる女性には、ビグロー監督から映画製作を手伝ってくれることのお礼として、タヒチの黒真珠のイヤリングが送られたとのこと。ただし、このイヤリングは高価なものではなく、高くても200ドル(約2万3000円)ほどのものだそうです。

マヤのモデルである女性職員とボール氏は、食事に行ったりショッピングに行ったりしたことが報告されています。ここまではかなり協力的な体制に見えますが、2012年になるとCIAは女性職員に対して、ボール氏と接触しないよう通達。ボール氏は最後に、「ハート・ロッカー」のときに映画で描かれたことが不本意だったという人物に訴えられた経験から、女性職員に上映承諾書を書いてもらおうと交渉しましたが、サインはもらえなかったようです。

映画は実際の出来事に関わった人への取材などに基づいて作られているということが明かされていますが、そのリアリティがCIAとの綿密な協力によるものなら、いろいろと納得です。なお、この件に関しての監査で、映画製作者からの利益供与について、また秘密情報が映画製作者に漏らされたことについて、「いかなる証拠も見つからなかった」とのことです。

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in 映画, Posted by logc_nt