CIAに依頼され「スパイの秘密道具」を実際に作っていた発明家「Q」ことパリ・テオドール

by Apionid

腕時計型のカメラや口紅型のピストルなど、映画の中のスパイは敵に存在を察知されないために独特の道具を使っていますが、CIAやFBIを顧客に持ち、このような武器を実際に作っていた発明家が存在します。通称「Q」と呼ばれていた発明家について、テクノロジー関係の記事を掲載するWar Is Boringがまとめています。

This Weapons Designer Was a Real Life Man of Mystery | War Is Boring
http://warisboring.com/articles/this-weapons-designer-was-a-real-life-man-of-mystery/

通称「Q」として知られるパリ・テオドールは、1943年のニューヨークで、彫刻家であり大学教授でもある父と大道芸人兼バレエ講師の母との間に生まれました。子どもの頃はテレビ番組の子役として活躍し、19歳でダンサー兼振り付け師のリー・ベッカーと結婚しました。

1966年、テオドールはニューヨークに「Seventrees」という小さなお店を開きます。お店のスローガンは「Unseen in the Best Places(見えない場所が最も良い場所だ)」というもので、表向きには手製のホルスターを扱っていました。しかし、実際のところ、お店はCIAのスカウトにあったテオドールが特製の銃を提供する場所だったとのこと。


1934年、連邦火器法(NFA)はショットガンやマシンガンなどの製造者・所有者について登録制度を導入しましたが、この時、ペン型短銃といった仕込み銃などについては規制されませんでした。

テオドールが製造していたのは、この手の武器。イスラエル製の短機関銃UZIや22口径の弾丸に火を付けるためのライターが仕込まれたブリーフケースなどを製造していたと言われています。FBIもテオドールの顧客の1つだったのですが、FBIは秘密捜査中の警察が使用するために12発の弾丸が発射できるクリップボードを注文したそうです。

1970年、テオドールはArmament Systems Procedures Corporation(ASP)という新しい会社を設立し、非常に小さな9ミリ拳銃を発明します。当時のアメリカではスミス&ウェッソンS&W M39という拳銃が人気を集めており、テオドールの拳銃はS&W M39を改造したものでした。

テオドールの9ミリ拳銃はS&W M39をベースに、カットできる部分はカットし、全長も短くし、エッジをなくして服やホルスターの中で引っかかったりしないように表面はテフロンで加工されました。200以上のデザインを熟考した結果、最終的に拳銃はS&W M39よりも約1.5cmほど短い全長17cmほどに。のちにスミス&ウェッソンはテオドールの拳銃と同じサイズの拳銃を作りますが、当時、小型の拳銃は珍しいものでした。


テオドールの作ったASPピストルがユニークなのは、照準器が特殊だったこと。通常、拳銃にはターゲットに狙いを定めるためののぞき穴のような照準器がついていますが、ASPピストルの場合は本体に黄色い線が入っており、線を挟んでターゲットと狙撃者が1列になるだけで、照準が合うというものでした。これによって、いちいちのぞき穴をのぞく必要がなくなり、よりスピーディーに発砲できるわけです。


火器の専門家であるイアン・マッカラン氏は、「ASPピストルは実践による知識に基づいたシステムが採用されていた」と語っています。「小型拳銃」の用途からいって、長距離において正確に発砲できる必要はなく、ASPピストルはいかにターゲットに対して効率的に、即座に発砲できるかという点にポイントが置かれたわけです。

またASPピストルは全てカスタムメイドで、「ASPピストルが欲しい」という人はS&W M39をASPに持っていかねばいけなかったというのも興味深いところ。しかも、価格は現在の価値にして2000ドル(約23万7000円)相当だったそうです。特殊なやり方でうまくマーケットを切り開けなかったASPですが、1980年代には個人投資家によって買収され、一から製造が行われるようになったとのこと。

ASPは本の中をくり抜いてピストルを入れたスペシャル・エディションや、短剣のようなデザインのレターオープナーなど、現代の「スパイ」のイメージとまるっきり同じものも作っていました。セキュリティ会社The Fairfax Groupの社長マイケル・ハーシュマン氏はテオドールのことを「本質的に、彼は発明家だった」と語っており、その通りテオドールは生涯のうち10以上の特許を取得したと言われています。

ただし、残念なことに、現在テオドールの発明の多くは国家機密となっており、日の目を見ることがありません。アンネの日記が著作権切れとなったことが話題になりましたが、テオドールの発明や文書も公有財産となるのを期待するしかなさそうです。

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