「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のVFXを手がけたILMのクリエイターたちが制作現場の裏側を語る
全世界の期待を背負って2015年12月18日に公開されたシリーズ最新作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、J・J・エイブラムス監督の意向により可能な限りCGを使わずに実写で撮影されたのですが、宇宙を題材にした映画ということもあり、CGを使って表現せざるを得なかったシーンがたくさんあります。その「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のVFXを手がけたのがルーカスフィルムが所有するスタジオ「インダストリアル・ライト&マジック(ILM)」であり、VFXを主に扱うメディアのfxguide/fxphdが制作スタッフにインタビューを実施し、興味深い撮影の裏側が明らかになっています。
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これはILMで最高責任者を務めるロジャー・ガイエット氏。同氏によると、現実には存在しない世界を可能な限り現実に近づけるため、できるだけ多くの写真を撮影してからポストプロダクションに望んだそうです。
ガイエット氏は「私が考えるにVFXは正しいライティングで最初の撮影をこなすことがとても重要です。正しいライティングで撮影すれば、ポストプロダクションも正しいスタートを切ることができます。我々は、映画に実際に登場するオブジェクトのセットをできるだけ多く組み立てて写真を撮影しました。本当のセットがあれば正しいライティングができるし、出演者たちも自然な演技ができますからね。後は、世界中のいろいろな場所に行って素材を集めましたよ」と撮影からポストプロダクションまでのプロセスを語っています。
これはラムダ級シャトルが着陸するシーンでのCGが作られていく様子。
ラムダ級シャトルからカイロ・レンが登場するシーン。実写とCGが組み合わさることで、よりリアルに感じられます。
ガイエット氏によれば、映像技術におけるテクノロジーは想像をはるかに超えるくらい発達していて、撮影とポストプロダクションの境目がなくなってきているとのこと。それを示すとても良い例がBB-8です。今作から登場した新しいキャラクターのBB-8は、まずモデルを作ってそれをスキャンしてから特殊効果を追加しているそうです。「モデルを実際に作ったことで、BB-8に個性をだすことができ、また、一緒に演じる役者の演技にも良い影響を与えられたはずです」とガイエット氏は語っています。
アニメーションの責任者であるポール・カバナフ氏は「ドロイドには表情というものがないのですが、BB-8の場合、モデルを最初に作ったことで感情を与え命を吹き込むことができました。正直なところ、BB-8が映画を全部持っていった気もします」とBB-8の魅力について説明。
BB-8のアニメーションに関しては、最初にロンドンでCADを使ってBB-8のモデルを作り、そのデータをパーツごとにわけてからアニメーションの作業を行ったとのこと。
「一度だけBB-8のアニメーションテストを実施したのですが、そこでたくさんのアイデアが生まれました。例えば、BB-8のアンテナをグラグラと揺れているような不安定な状態にした方が面白いんじゃないかとかね。これはJJも気に入ってくれました。後、当初はBB-8が移動するときの動きは直線的なものだったんですけど、右や左に少し蛇行するほうがいいんじゃないかとか。BB-8をどれだけかわいく見せられるかという点についてはかなり試行錯誤しました」とカバナフ氏は語っています。
BB-8の感情表現については、頭部の動きを使用。悲しいときは頭部を前方に移動させたり、興奮しているときは頭部を急に後ろに下げたり、左右に素早い動きで回転させたりして、BB-8の感情を表現したそうです。また、BB-8のレンダリングはものすごく質が高く、カバナフ氏が今見てもCGなのか実際のモデルなのか区別が付かないほどとのこと。制作したスタッフが見ても実写かCGかわからなければ、観客が気づくのはかなり難しいはずです。
BB-8に関しては、ディズニーが公開しているムービーを見ると、その魅力がよくわかります。
キャストたちもメロメロ!? 『#スターウォーズ/#フォースの覚醒』かわいすぎる新ドロイド<BB-8>の魅力が詰まった映像を公開!#BB8 #BB8の冒険 https://t.co/TR6OAaJi21
— ディズニー・スタジオ (@disneystudiojp) 2016, 1月 18
BB-8も印象的ですが、旧三部作のファンにとってうれしかったのがミレニアム・ファルコンの復活です。ミレニアム・ファルコンに関しては、エピソード4の撮影で使われたミニチュアのミレニアム・ファルコンを実際に見て、写真を撮影して、そのデータを元に新しいミレニアム・ファルコンを2年かけて作り上げたとのこと。
環境エフェクトの責任者である行広進氏は「エピソード4の撮影で使われたミニチュアのミレニアム・ファルコンを見たときは本当に感動しました。僕たちは旧三部作に基づいたデザイン言語を新しいミレニアム・ファルコンに反映させたかった。だから、ミニチュアをじっくり見て勉強することから始めました。旧三部作に関わっていたポウル・ヒューストンに、どうやってこのデザインにたどり着いたのか、デザインの思考過程はどんな感じだったのかなど、多くの話を聞くことができ、また、旧三部作のオリジナルスケッチやプロダクションデザインを拝見し、新しいミレニアム・ファルコンのデザインに取り入れました。ミニチュアでは映画を見ても気づかなくらいの小さなディテールがあって、本当に素晴らしかったです」と語っています。
VFXで大きなチャレンジとなったのが「見ている人にCGだと気づかせずに映画の世界に引きずり込むこと」であり、本作では2100ものVFXのシーンが制作され、これは映画1本としてはものすごい量になるそうです。
惑星全体が兵器のプラットフォームとして作りかえらたスターキラー基地のCGができあがっていく様子。
伝説の女海賊マズカナタは、女優のルピタ・ニョンゴさんをモーションキャプチャーして作られ豊かな表情を見せてくれました。
ニョンゴさんに実際のセットで演技をしてもらい、それを元にCGをのせていく感じで、ソフトウェアはFace Shiftを使い、そこにILMの独自技術を加えているそうです。
ムービーでは、上述以外にもXウィングが湖を飛び回るシーンの話なども出てくるので、気になる人はチェックしてから「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を見てもおもしろそうです。
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