Evernoteを苦しめる「5%問題」は本当に取り組むべきことを照らす道しるべになる

By Brooks Duncan

2012年、非上場企業ながら「企業評価額10億ドル(当時のレートで約790億円)」とアメリカの経済関連出版社ダウ・ジョーンズに評価されたのが、オンライン上で使用できるノートアプリ「Evernote」です。かなり多機能で、メモをとったり重要なデータをストックしておいたり、リマインダーとして使ったりオンライン上で共同作業を行うために使ったりすることも可能なEvernoteですが、最近は設立初期から在籍していた副社長が辞任したり海外オフィスを複数閉鎖したりと不調が続いています。そんなEvernoteの不振は多くのIT系企業が抱える「5%問題」によるものだ、とIT関連のニュースを取り扱うVentureBeatのライターであるChris O'Brienさんが考察しています。

Evernote's 5% problem offers a cautionary lesson to tech companies | VentureBeat | Business | by Chris O'Brien
http://venturebeat.com/2016/01/05/evernotes-5-problem-offers-a-cautionary-lesson-to-tech-companies/

10億ドルの価値があると評価され、Evernoteは長らく急成長を遂げているIT企業のひとつと考えられていました。しかし、「現在のEvernoteの凋落ぶりを見ると、私が2013年8月に当時のCEOであったPhil Libin氏にインタビューした時から、同社が問題を抱えていたことは明らかだ」とO'Brienさんは語ります。

O'BrienさんがEvernoteのLibin氏にインタビューを行った際、Libin氏は今後100年間続く企業に成長させるためのビジョンを話してくれたそうです。インタビュー自体は非常に和やかに進んだそうですが、終わりになってLibin氏は今になって振り返ってみると非常に面白く感じる言葉を口にしました。それは、その後Evernoteを悩まし続けることになる根本的な部分を示すような言葉だったそうです。

By Cory M. Grenier

インタビュー時、EvernoteがしばしばDropboxやBoxなどのクラウドストレージサービスとひとまとめに語られることについて言及した際、Libin氏は「Evernoteはもっともっともっと多くの特徴を備えています」と語り、クラウドストレージとは異なる特徴を有していることをアピールしました。この時、Libin氏はEvernoteがとても多くの機能を持っていることを認めたわけですが、それが逆にEvernote全体の足を引っ張ることにつながっています。

現在のEvernoteは、あまりに機能が多いので新規ユーザーにその特徴を説明しようとすると何を教えれば良いのか分からなくなるような状態です。実際、元CEOのLibin氏もEvernoteが開催したカンファレンスでユーザーから「私はEvernoteを長年使用してきて、とても愛しています。でも、私は最近になってEvernoteで出来ることのほんの5%しか使っていなかったことに気付いたんです」と言われたことを明かしています。

また、Libin氏自身もインタビュー時点でEvernoteが多機能すぎるが故に抱える問題を理解しており、「問題は、この5%がユーザーによって異なることです。もし、すべてのユーザーが同じ5%の機能を使用している場合、他の95%の機能をカットしてしまえば開発にかかる多くの資金を大幅にカットできます」と語っています。

しかし、その後もEvernoteは少しずつ多機能化を進めていきました。Evernoteの施策は、プロダクトに新しい機能や特徴を追加し続けるということで、根本的な問題解決に踏み切ることはありませんでした。そして2015年、Libin氏はEvernoteのCEOを辞職してベンチャーキャピタリストとなり、Evernoteは職員の18%をカットすることになっています。Libin氏のあとにEvernoteの新CEOに就任したChris O'Neill氏は、「サービスと機能をふるいにかける」と語っており、同社が抱える問題は多くの人々に知られるところとなっています。

By TAKA@P.P.R.S

このEvernoteが直面した「5%問題」は、「サービスの核を維持しながら新機能や新サービスを作ることがどれだけ重要か」を示す良い事例です。シリコンバレーでは「新しいものを作り続ける」という考え方が一般的で、これは「もしも手を止めてしまえば、新規参入者に簡単に追い抜かれてしまうかもしれない」という考えがあるからだそうです。また、エンジニアやデベロッパーは、開発に夢中になると大局を見失いがちになるという点もこの「5%問題」には含まれています。

しかし、新機能を追加することは、エンジニアにとっての修行にもなり得ます。例えば写真共有アプリの「Snapchat」は、サービスのコアとなる部分へのフィードバックを基に、思慮深く新機能を追加していくことで成功を収めています。SnapchatのCEOであるEvan Spiegel氏は、チームが開発したものの多くを実装せずに廃棄していることを明かし、「我々は、チームが開発しているものの恐らく1%ほどをリリースしています」とコメント。チームが開発したあとにそれに対して「ノー」を突きつけるのは難しいことではありますが、企業は「Snapchat(企業の核となるサービス)について友達に説明するのは簡単かどうか」を考え続けるべき、とO'Brienさん。

さらにAppleを例に考えてみると、Appleは2015年に多くの製品・サービスを発表しました。しかし、Apple Watch、Apple TV、Apple Musicなどは現在のところそれほど成功を収めているようには思えません。しかし、これらはすべてAppleの核である「iPhoneおよびiOS」をより便利に拡張してくれるものであり、企業の核部分が大きくブレてしまったEvernoteとは大きな差があります。

By Michael(tm) Smith

「5%問題」はIT系企業に関わらずすべての企業が直面しうる問題のように感じます。現在取り組んでいることが本当に正しいのか迷った際は、一度立ち止まってアイデアについてもう一度フラットな視点で考え、数年後に「自分の会社が何をしているのか?」を簡単に回答できるかどうか考えてみると、そのアイデアが本当に重要なものなのかそれとも不要なものなのかが判断できるかもしれません。

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