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0からスタートして400万人のユーザーを獲得した着こなし共有アプリ「Chicisimo」はどのようにして開発されたのか?


Googleが「Style Ideas」と呼ばれる機能をリリースするなど、近年になってAmazonやGoogleなどがファッションや着こなしといった分野に参入していきているのは、「着こなし」が人々の毎日に根付き、固定客をのぞめ、かつユーザーからたくさんのデータを得ることができるためだといわれています。eコマースを使ったアパレル市場の収益は2022年には1230億ドルに上るという予測も。そんな中、0からスタートして数年でユーザー数を400万人にまで増やしたアプリ「Chicisimo」の創業者であるGabriel Aldamizさんが、どのようにアプリ開発が進められたかについて振り返っています。

How we grew from 0 to 4 million women on our fashion app, with a vertical machine learning approach
https://medium.com/@aldamiz/how-we-grew-from-0-to-4-million-women-on-our-fashion-app-with-a-vertical-machine-learning-approach-f8b7fc0a89d7

Chicisimoはユーザーが自分のファッションコーディネート写真を投稿して他の人から評価してもらったり、着こなしのアイデアを人からもらえるようにするアプリ。もともとブログとして始まったのもですがアプリがリリースされ、2018年時点では400万人のユーザーが存在します。

Chicisimo - The outfit ideas app to decide what to wear
https://chicisimo.com/


人が別の誰かにファッションの提案を行う時、「スタイル」や「テイスト」といった微妙な要素が関わってきます。人間はこれらを理解し、既にある着こなしから新しい提案をすることが可能ですが、アプリの場合はまずコンピューターに「スタイル」や「テイスト」を理解させることから始まります。

Chicisimoの開発チームは以前にも音楽の分野などで「テイスト」をベースにしたプロジェクトで機械学習を取り入れてきました。過去の経験から、コンピューターが「テイスト」を理解すれば、より関連性があり意味のあるコンテンツを提供できるようになり、オンラインのファッションは変わるはずだとチームは考えました。


特に開発チームが注力したのは正しいデータセットを作ることと、「モバイルアプリ」「データプラットフォーム」という2つのものの開発。ChicisimoのCEOであるGabriel Aldamizさんは、開発がどのように進められたのかを以下のように振り返っています。

◆1:人々が自分のニーズを表現するアプリの開発
過去のアプリ開発の経験から、人々にアプリを「使わせてみる」ところまでは簡単でも、「使わせ続ける」ことは非常に難しいということを学んでいたAldamizさんは、Chicisimo開発にあたってイテレーションをできるだけ速いスピードで行うことを心がけました。

Chicisimoは、カギとなる機能だけを搭載したごくごく初期のアルファ版がまずアメリカ国外で公開されました。このアプリはChicisimoという名前ではなく、正式版がリリースされるとApp Stpreからも削除されたもの。ユーザーがアプリにアップロードした写真も、現在は残っていません。しかし、アルファ版のおかげで、イテレーションのためのリアルなデータと良質なインプットが得られたとのこと。

特にAldamizさんが重点を置いたのは、「人とコンテンツをマッチさせるためのアルゴリズム作り」と「リテンションを高める要素の理解」でした。

Aldamizさんによると、リテンションを高めるのに役立つのは以下の3つ。

(1)コホート分析によってリテンションを高めるものが何かを認識する
チームは、ユーザーが「どのような行動をとったか」ということだけではなく、「何に有用性を感じたか」ということをMixpanelを使ってコホート分析しました。これは非常に難しいことでしたが、測定可能な価値を見いだすことで分析・テスト・改善を繰り返していったそうです。そしてこの中でリテンションを悪くするものも特定し、取り除いていったとのこと。


(2)オン・ボーディング・プロセスを再考する
Aldamizさんのいうオン・ボーディング・プロセスとは、「ユーザーを失う前に、できるだけ早くアプリの価値を見いだしてもらうこと」です。Aldamizさんは「ユーザーが初めてのセッションの7分以内に行動を起こさなければ、彼らは二度と返ってこない」と考えており、異なるタイプの人々に何度もテストを繰り返してもらうことで、ユーザーが「行動を起こす」ためのアプリ体験を作っていったそうです。

(3)自分たちがどのように学んでいくかを決める
データによるアプローチは重要ですが、人々に愛されるプロダクトを作るためには、データよりも重要なものがあります。Chicisimoの場合は、「何を着るか問題は非常に重要である」ということの理解でした。それが人々に敬意を示す方法になったとのこと。

上記のような取り組みにより、開発チームは山のように新しいの知識を得ることができ、それをプロダクト開発に大きく役立てることができたといいます。これまでの流れを変えるような新しい知識や学習内容に出会った時には、「人がどのように問題に関わるのか」と「人がどのようにプロダクトに関わるのか」という2点にフォーカスを当てていく必要がある、とAldamizさん。この2つを理解することが人々に愛されるアプリの開発につながるためです。


同僚と話している時に「これはデータではなく、人間に関することだ」という意見をもらったAldamizさんは、服装や着こなしに関連する問題や解決策を女性たちと直接話しあったり、メールで意見を受け取ったりすることで調査を進めました。また、外部にも目を向け、興味深いアプリを開発している人たちと話しあい、役立ちそうな記事を再読するということも繰り返し行われました。

そのようにして作られたアプリはApp Storeで注目されたことなどが功を奏し、2018年1月までにアプリは95万7437ビューに、インプレッションからアプリのインストールまでのコンバージョンレートは0.5%に達したとのこと。

◆2:人々のファッションのニーズを学ぶデータ・プラットフォームを作る
Chicisimoの目指すところは、ユーザーのテイストを理解し衣服のアイデアを示すこと。正しいコンテンツを正しいタイミングで示せば人々をあっと言わせることができますが、これは言うは易し行うは難しという事柄。

Chicisimoは100%ユーザー生成コンテントであるため、システムは自動的にコンテンツの種類を分類し、適切なインセンティブを作り出し、コンテンツがユーザーのニーズに合うかを理解する必要があります。いくらデータが集まっても、システムが適切にデータを処理していくことができなければ、情報を利用することはできずカオスが生まれるだけになってしまいます。

そこでチームはまず、Social Fashion Graphというツールを開発しました。これは1枚のデータのうちいくつかのパーツに構造を持たせるというもの。Social Fashion Graphで作られたグラフはニーズ・着こなし・人々の関連性を可視化していくもので、このコンセプトがプラットフォーム作りに役立ったといいます。Social Fashion Graphによって質の高いデータセットを作りだせるようになり、アプリの学習に役立てられました。


開発チームによると、「衣服のコーディネートは音楽でいうプレイリストだ」とのことで、協調フィルタリングを使って関連性を捉えていくことで、アプリ内のさまざまな場所において「オススメ」を提供していくことができたそうです。

ただし、Social Fashion Graphを適用してもまだデータの中にノイズは存在します。人々は1つの「ニーズ」を異なった方法で表現し、同じような服の組み合わせてであってもニーズが異なったり、逆に全く違う組み合わせでも同じニーズを持つことがあるためです。


このニーズとは、「学校に着ていく服」や「週末のファッション」といった「コンセプト」のこと。人々の表現の多様性を捉えるため、開発チームはコンセプトという要素をシステムに取り入れます。そして「異なる方法で表現された同じニーズ」を等価と捉え、最終的に「何を着るべきか」というニーズのリストが作成されました。このリストの作成でデータセットを整理することができたとのこと。

着こなし・ニーズ・人という3つを構造化することができれば、大量のデータも理解できるようになります。ユーザーが自由に表現を行っても正しいシステムが背後で動いていれば、データが構造化され、コントロールが取れるようになるとのこと。一方で、構造化されていないデータは開発チームに新しい知識と柔軟性を与えてくえるとAldamizさんは語ります。

Chicisimoの開発チームはまだまだ課題を抱えていますが、それらは自分たちの「管理下」にあると感じているとのこと。2018年2月現在はSocial Fashion Graphに「購入可能な服」という新たなる要素を加えようとしている最中で、この要素はユーザーが「次に何を購入すべきか」を検討する手助けを行うはずです。

◆3:アルゴリズム
音楽のアプリ開発において「オススメ」のシステムを作るのは、そこまで難しくなかったとAldamizさんさんは振り返っています。ユーザーが好む歌を把握するのは簡単であり、その音楽を気に入った人が次に聞きそうな曲も把握しやすいためです。


しかし、クローゼットを思い浮かべればわかるように人が「既に持っている服と同じような服を買う」ということは少なく、「既に持っている服に合う服を買う」というような選択を行います。このようなシークエンスは関連性が見えにくく、「オススメ」システムを作るのは難しかったとのこと。また、「スタイル」という要素は複雑であり、コンピューターが捉えたり分類したりするのは困難だったそうです。

しかし、ディープラーニングが登場したことで状況は一転したとAldamizさん。正しいデータセットを用意すれば、データを集めたり精査したりする必要がなく、「オススメ」に関連したより細かい部分を調整したり、to focus on delivering value through the algorithms 。ディープラーニングによって作ったアルゴリズムはまだアプリにこっそり使われている程度ですが、これからのフィードバックを受けてさらに改良してくとのことです。

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in ウェブアプリ, Posted by darkhorse_log

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