ニューヨーク地下鉄で80年間使われた列車制御システムに替わって導入される「CBTC」を説明したムービー
2015年現在、ニューヨークの地下鉄では1930年に導入された列車制御システムを現役で使用しています。80年にわたってニューヨークの地下鉄を支えてきたシステムですが、機器が古いためメンテナンスが難しいことや、増加する乗客に対して効率的に列車を制御できないといった問題に対処するため、「CBTC(Communications-Based Train Control)」という最新の無線を使った列車制御システムの導入が決定済みで、ニューヨーク地下鉄を運営するMTAが新旧のシステムを説明するムービーを公開しています。
CBTC: Communications-Based Train Control - YouTube
ニューヨーク地下鉄サービス提供部門のトップであるWynton Habersham氏が、80年前に導入された現状の列車制御システムについて説明しています。「近代化が進むなか、このような古いシステムはいまや廃止されているところが多くなっています」とのこと。
年季の入った様子が見て取れる巨大な制御装置。
以下は各システムをつなぐ重要なケーブルが収められた連動機。もしこの場所で火災が起きると地下鉄の全てのシステムがダウンしてしまうため、非常に大きなリスクを抱えているそうです。そのため、ニューヨークの地下鉄は新たなシステムの導入を進めているとのこと。
現状のニューヨーク地下鉄では路線を「閉塞区間」と呼ばれる区間で分割する「固定閉塞方式」と呼ばれる列車制御システムが使われています。
閉塞区間は列車の通過を検知し、1つの閉塞区間には列車1編成しか進入できないようになっているため……
列車同士の衝突を防ぐことができるシステムとなっています。
ただし固定閉塞には「列車の正確な位置を把握できない」「列車の速度を正確にコントロールできない」という制限があり、「列車同士の間隔を狭くする」「頻繁に操作する」といった操作ができないという問題が発生します。つまり、ニューヨークのような利用者の多い大規模な路線では、運行の遅延につながってしまうわけです。
さらに、設備を線路上に敷設する必要があるため、メンテナンスも困難です。
そこで、ニューヨーク地下鉄が採用を決定したのが、「CBTC」と呼ばれる無線を利用した列車制御システム。日本でも2014年にJR東日本が採用しています。
CBTCは列車側に装置を搭載する移動閉塞方式で、常に列車の正確な位置・速度などを計測して無線で発信することができます。
従来の方式より安全かつ効率的に列車間の安全距離が取れて、運転間隔の短縮につながるわけです。
これがCBTCの設備を搭載した列車の運転台。
計測した各データがパネルに表示されるとのこと。
ハンドル周辺はこんな感じ。
列車の底面に取り付けられているのが「TIA(Transponder Interrogator Antenna)」と呼ばれる無線通信に不可欠なアンテナ。列車同士の通信はここで行われています。固定閉塞方式のように、線路に各種設備やケーブルを敷設する必要がなくなるため、メンテナンス費用のコストダウンにもつながるとのことです。
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