イルカの目には、人間はどのように映っているのか?
by Jeremy Bradford
イルカは音波を発して周囲の物体を認識する「反響定位(エコーロケーション)」という能力を持っていることが知られていますが、イルカが海中で人間をどのように見ているのかが新たに研究から明らかになっています。
Image Shows How Dolphins See People : Discovery News
http://news.discovery.com/animals/whales-dolphins/image-shows-how-dolphins-see-people-151207.htm
以下の画像が、イルカが人間を見ている様子で、左側が水中の映像、右側は高解像度版です。人間のシルエットがはっきり映っていることが分かります。この研究はイルカのコミュニケーションについて調査しているNPO団体SpeakDolphin.comが行ったもので、設立者・Jack Kassewitz氏は、「研究の成果を見て私たちはみんな言葉を失いました」と語っています。
研究は、メキシコのプエルト・アベントゥラスにあるイルカ研究センターで行われたもの。Kassewitz氏はチームメンバーのJim McDonough氏と共に、センター内の研究プールで泳いでいるメスのイルカAmayaの前に潜りました。水中で息を吐くと、泡が画像に写ってしまうため、2人はできるだけ息を吐いてから水に潜り、体が浮かないように重りのベルトを巻き付けていました。Amayaが水中に潜った2人を認識すると、音波を発して、地上のスタッフがその音波を高性能オーディオ装置で記録しました。
水中で記録したデータは、イギリスにあるCymaScopeの研究施設に送られ、音響物理学者のJohn Stuart Reid氏がデータを出力。CymaScopeではイルカの視界を画像に変換するために、ホログラフィーに似た技術を使っているとのこと。出力した画像からは、イルカは音波を使って物体の存在を測定する能力「エコーロケーション」を用いることで、人間の姿を詳細に認識していることが判明しました。AmayaとKassewitz氏の距離は数メートル離れていたのですが、Amayaは人間の全身を認識していたのですが、ただ、SpeakDolphin.comのメンバーは当初、「イルカは人間の顔をはっきりと見てる」と想定していたのですが、実際はイルカが人間のシルエットだけを認識していることが明らかになっています。
by Israel_photo_gallery
さらに、研究チームではイルカは「音と映像」を用いた言語を使っていると推測していて、イルカたちは互いに見た映像を共有していると考えています。Kassewitz氏は、「もしこの仮説が真実であれば、動物のコミュニケーション能力について将来的に興味深い研究が進められるでしょう」と語っています。
イルカの視界をさらに正確にとらえるには、まだ人類の技術が追いついていないとのこと。Kassewitz氏によれば「イルカは5000万年に渡ってエコーロケーション能力を進化させてきたが、海洋生物学者が研究を行っているのはおよそ50年ほどでしかありません。私はわずか5年ほどしか研究していないので、今後も研究を進める必要がある」と語っています。
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