携帯電話を傍受・盗聴してスパイ捜査に使う機器の秘密のカタログが流出
アメリカ国内で法執行機関がスパイ捜査を行うための機器を集めた秘密のカタログが流出しました。独立系ウェブメディアのThe Interceptがリーク情報をもとに公開したサイトでは、携帯電話基地局になりすましてスマホの情報を集める捜査手法「スティングレー」に用いられる機器などがズラリと並んでいます。
A Secret Catalogue of Government Gear for Spying on Your Cellphone
https://theintercept.com/2015/12/17/a-secret-catalogue-of-government-gear-for-spying-on-your-cellphone/
Behold, the catalog of cellphone spying gear the feds don’t want you to see | Ars Technica
http://arstechnica.com/tech-policy/2015/12/behold-the-catalog-of-cellphone-spying-gear-the-feds-dont-want-you-to-see/
The Interceptが公開したスパイ用機器の数々は、以下の特設ページで閲覧可能。全カテゴリーで53機種の機器がリストアップされており、「Survey Equipment(測定機器)」「Fixed Wing Geo-location (Manned)(有人固定翼機用 地理位置情報測定)」「PGL Payloads on UAVs(無人機搭載用 精密位置情報測定機器)」「Ground Based Geolocation (vehicular)(地上からの地理位置情報測定 車両搭載用)」「Direction Finding Systems(電波方位検出装置)」「Battlefield Data Recovery/SSE (戦場データ取得システム)」のカテゴリに機器が分類されています。
The Secret Surveillance Catalogue
「Survey Equipment」(測定機器)には、携帯電話などの通信を傍受してモニタリングするための機器が並んでいます。
1万台以上の端末を見つけ出して音声通話の内容などをモニタできるDRT 1101Bは、相手に傍受されていることを気づかれずにスパイ捜査を行うことが可能とのこと。この機器を製造しているDRT社はボーイングの子会社であり、別名「Dirt Box」と呼ばれることもある機器の価格は7万8850ドル(約960万円)というもの。
DRT 1101B – The Secret Surveillance Catalogue
「Fixed Wing Geo-location (Manned)」(有人固定翼機用 地理位置情報測定)にリストアップされているのは、その名のとおり有人の航空機に搭載して通信を傍受するための機器。
少し古めかしい外観の「Typhoon」は、ヨーロッパなどで広く使われるGSM方式の通信を傍受するための機材とのこと。航空機に搭載して上空から電波を送受信することで、市街地では5km範囲、郊外だと30kmの範囲をカバーするGSMの仮想基地局として動作し、全通信の傍受を可能にするとカタログではうたわれています。価格は17万5800ドル(約2100万円)ですが、すでに旧規格となりつつあるGSM対応の機器のため、最新規格に対応する機器も登場しているとのこと。
Typhoon – The Secret Surveillance Catalogue
「PGL Payloads on UAVs」(無人機搭載用 精密位置情報測定機器)は、UAV(軍事用ドローン)に搭載してスパイ活動を行うための機器をラインナップ。なぜか、このジャンルの機器は全て価格が記載されていません。
「Twister - Firescout APG」は複数バンドのGSM通信を傍受するための機材。写真のように、UAVの機体に取り付けて任務を行うように設計されています。製造しているメーカーはノースロップ・グラマンで、アメリカのそうそうたる軍需産業企業が関わっていることが見えてきます。
Twister - Firescout APG – The Secret Surveillance Catalogue
「Ground Based Geolocation (vehicular)」(地上からの地理位置情報測定 車両搭載用)には、主に車両に搭載して情報収集を行うための機器が集められています。
「Spartacus II」は単体で動作可能なスタンドアローン型のPGLシステム(精密位置情報測定システム)。価格は18万ドル(約2200万円)です。
Spartacus II – The Secret Surveillance Catalogue
「Direction Finding Systems」(電波方位検出装置)では、ターゲットとする電波の発信位置を特定するための機器が並んでいます。
「THORACIC」は身に付けて持ち運びが可能なシステムで、小型の端末と服の中に隠せるタイプのアンテナを装備することで、市街地でも気づかれることなく探知を行うことが可能なデバイス。
THORACIC – The Secret Surveillance Catalogue
「Battlefield Data Recovery/SSE (戦場データ取得システム)」では2つの機種が登場。
この装置は、ターゲットとなる端末から登録された電話番号、SMSの送受信内容、カレンダーの登録情報、音声ファイルなどあらゆるデータを抜き出すことが可能なもの。端末からデータを吸い出すことで、その端末を使っている人物のバックグラウンドを把握し、人物が所属する組織の全貌を明らかにしていくために使われるとのこと。CELLBRITEのシステムは1万ドルをやや下回る9920ドル(約120万円)で販売され、1年あたり900ドル(約10万円)でサポートとメンテナンスを受けることができるようです。
CELLBRITE – The Secret Surveillance Catalogue
なお、上記ページのレイアウトなどはThe Interceptorが独自に行ったものとのこと。オリジナルの無加工画像は以下のページで閲覧が可能です。
The Intercept
https://theintercept.com/document/2015/12/17/government-cellphone-surveillance-catalogue/
このカタログをThe Interceptorにリークした人物は、アメリカ国内の法執行機関に軍事化の波が見られることを懸念して行動に出たとのこと。9/11同時多発テロ事件以降、かつては軍の作戦執行に用いられていたこれらの機器がアメリカ国内の捜査機関などで用いられるようになっている状況に異を唱えるためのリークということのようです。国民の安全を守るための捜査がどこまで許容されるのか、プライバシーの保護はどのように確保されるのか、そもそもテロがどういう経緯で起こることになったのかなど、いろいろと考えをめぐらすと実に根の深い問題が見えてくるようです。
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