従来のPCの1億倍高速な量子コンピューターはどのような仕組みで動いて物理的限界を突破しているのかがわかるムービー「Quantum Computers Explained」

「量子コンピューター」は、従来のコンピューターをはるかに凌ぐ性能を持つ可能性を秘めた技術です。GoogleとNASAは「QuAIL(量子人工知能研究所)」を設立し、「世界初の市販量子コンピューター」と呼ばれるD-Wave開発の「D-Wave 2」の運用・テストを行ってきたのですが、新たにD-Wave製の最新量子コンピューター「D-Wave 2X」が「組み合わせ最適化問題」を既存のコンピューターに比べて最大1億倍高速に解くことを発表し、世間を驚かせています。
そこで気になるのは「そもそも量子コンピューターって何?」「従来のコンピューターと何が違うの?」という点。そんな量子コンピューターに関する疑問に答えてくれるムービー「Quantum Computers Explained」がYouTubeで公開されています。
Quantum Computers Explained – Limits of Human Technology - YouTube

人類が持つ技術は長い間、火と尖った棒でした。

しかし、今はそれらが発電所や核兵器に変わっています。

人の脳は進歩しました。

1960年代からは機械が進歩を続け、年々より小型に、より強力になっていきました。

しかし、それにも物理的な限界が訪れます。

どのような問題が起きたのかというと、「小さくなりすぎた」のです。この問題を基礎から説明してくれるのが、このムービーというわけ。

コンピューターの構成要素は単純で、それは記憶・演算・制御の装置でできています。

コンピューターの中にはチップモジュール・基礎モジュール・論理ゲート・トランジスタがあります。

トランジスタは単純なスイッチで……

情報を流したり止めたりしています。

そこを流れる「情報」は、データの最小単位である「ビット」で表され……

0か1の値をとります。

ひとつでは0か1のどちらかしか表せないビットですが、これが複数あれば、より複雑な情報も表すことが可能。

そして、論理ゲートは単純な演算を行う部分。

例えばANDゲートは、全部1だと1を送り……

それ以外は0を送るという至極単純なもの。

しかし、これが組み合わされば足し算が可能となり……

足し算でかけ算も可能になるので、あらゆる計算が可能になります。

そこに存在するのは単純な計算の集まりだけ。

なので、7歳の子どもが集まって計算しているようなものです。しかし、その数が増えれば物理学やゼルダの伝説のようなゲームのプレイも可能となるわけです。

物質が小さくなると量子の性質が現れます。

トランジスタは電気のスイッチ。

電流は電子の動きであり、スイッチはこの流れを遮断しています。

今のトランジスタの大きさは14ナノメートル。

これはHIVウイルスの8分の1のサイズで……

赤血球の500分の1しかありません。

このサイズまで小さくなると、電子はトンネル効果により……

壁をすり抜けてしまいます。

量子の世界に通常の物理学は使えず、機械も使えなくなってしまいます。

技術は物理の限界に到達したのです。

この問題を解決するために考案された新しい機械が量子コンピューター。

従来のコンピューターではビットを使うところ……

量子コンピューターは2つの状態を取れる粒子である量子の特徴を用いた量子ビットを利用します。これは0と1の状態があり、光子の偏光状態に近いそうです。

量子ビットはひとつの状態ではなく、一度に2つの状態で存在することができるわけですが……

これを「重ね合わせ」と呼びます。

光子は偏光板に通した瞬間に垂直偏光か水平偏光かが決定されます。

観測されない限り量子ビットは0と1の両方であると考えられ……

特定の状態は観測した瞬間に決まる重ね合わせが肝です。

通常、4ビットで情報を表すときには……

16通りあるうちのひとつしか表すことができません。

しかし、量子ビットを使えば……

16通りすべてを一度に表すことができます。

この増加は指数関数的で、20個の量子ビットを使えばなんと100万通りを並列することもできます。

さらに量子もつれという現象があります。これは2つの量子ビットが離れていても……

同時に同じ状態になる現象です。

これにより、一方を見るだけでもう一方の状態を知ることができます。

しかし、量子ビットの操作は難しいもの。

論理ゲートではひとつの入力にひとつの出力をしているのですが……

量子コンピューターの量子ゲートでは、入力が回転して……

出力として別の重ね合わせが現れます。

量子ビットに入れた入力が量子ゲートを通ってもつれ、それを観測すると……

そこでは可能な計算が全部同時に行われているわけです。

ただし、求めたい結果はその中のひとつなので、それを探し出す苦労があります。

しかし、量子の性質をうまく利用すれば超高速な計算が可能になります。

私たちの生活に量子化は必要ありませんが、いくつかの領域では重要なものになるかもしれません。

その例が、データベース検索。

従来のデータベース検索はすべての要素を参照する必要があるので、例えば自分の好きなポケモンを調べようとすると……

「これも違う、これも違う」といった具合にひとつひとつデータを参照する必要があるので、表示までに時間がかかります。


対して、量子のアルゴリズムでは……

その平方根の時間で検索が可能になります。

つまり、100万秒(約12日)かかった検索もわずか1000秒(16分40秒)で終わります。

1番大変なのは情報セキュリティ。

現在、ネットや銀行では公開鍵暗号を使う方法によって情報を暗号化して守っています。

しかし、公開鍵暗号は計算すれば解読できるもの。

それは従来のコンピューターでは何年もかかる計算なのですが……

量子コンピューターを使えば一瞬で済みます。

量子コンピューターはシミュレーションにも使えます。

シミュレーションは膨大な計算が必要な分野であり……

分子構造の解析などに役立つでしょう。

量子力学自体の研究にも当然使え……

医学も飛躍的に進歩するでしょう。

量子コンピューターは道具ではなく革命かもしれません。

「技術に限界はあるのか?」

その答えは「やってみなきゃわからない」と、ムービーが締めくくられています。

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