従来のスーパーコンピューターの1000倍以上の速度で演算可能な「1分子コンピューター」につながる技術が登場


かねてから世界各国でスーパーコンピューターの開発が行われ、「世界最速」が競われていますが、従来のスーパーコンピューターの1000倍以上の速度で演算が可能になる「1分子コンピューター」につながる技術が登場しました。

従来のシリコントランジスターを基盤とした情報デバイスよりも100倍以上コンパクトで、1000倍以上速い革新的な情報処理技術としても期待を集めており、シリコントランジスターの高集積回路が持つ問題点を解決する手段として活躍する日が来るかもしれません。

詳細は以下から。
ナノより小さい1分子コンピューター内の情報書き換えに成功
-分子1個で任意の超高速演算を可能にする新しい光技術-


大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 分子化学研究所のプレスリリースによると、現代の高速情報処理技術はシリコントランジスターの高集積回路に依存しており、これ以上高集積化が進行して絶縁体の幅が数原子層レベルにまで到達すると、電子が染み出すことで熱やエラーが発生するそうです。

現在のシリコントランジスターは電荷を情報の担い手(情報担体)として用いていますが、電荷を用いる限り、最新のナノテクノロジーを利用してもこの問題点は避けられないとのこと。

この問題を解決するために、同研究所の大森賢治 研究主幹/教授らは分子にある「電気的に中性な物質の量子力学的な波(波動関数)」を情報担体として利用することに着目し、書き込まれた情報を一瞬で書き換える技術を新たに開発。

新たに開発されたのは1兆分の1秒以下のごく短い時間だけ光るようなレーザーパルスを用いて多数の波動関数に同時にアクセスし、100万通り以上の異なった情報をnm(ナノメートル)以下のサイズの1個の分子に入力できるようにするという技術で、2020年までに計画されている最高性能のDRAMの100倍以上にあたる情報密度を実現できるそうです。

なお、大森教授らは0.3nmサイズの分子の中の波動関数を使って従来のスーパーコンピューターの1000倍以上の速度でフーリエ変換を実行することに成功し、分子1個が超高速コンピューターとして機能し得ることを2010年3月に実証しましたが、この時点では特定の2種類の論理演算しか実行できませんでした。

しかし今回、従来は干渉しないと考えられていた分子の中の異なったエネルギー状態の波動関数が、10兆分の1秒だけ光る高強度の赤外レーザーパルス照射によって混じり合い干渉するという、全く新しい物理現象を発見し、この干渉現象を用いて分子内の複数の波動関数の強度を変化させることで、それらの強度の組み合わせとして書き込まれた情報を外部から書き換えることに成功。

今回発見された新しい物理現象「高強度レーザー誘起量子干渉」の参考図。


この成果は分子コンピューターで任意の論理演算を実行するための基盤技術や、固体や液体の中で乱された波動関数を復元するための基盤技術の開発にも役立つものとして期待されており、研究成果は、2011年4月10日(英国時間)に英国科学雑誌「Nature Physics」のオンライン速報版で公開されるとしています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log