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1000倍以上の通信速度実現にも期待、光ファイバー1本で109Tbps(1秒間にDVD約2900枚分)の伝送に成功


今や高速通信を実現するために、無くてはならない存在となった感のある光ファイバーですが、1本の光ファイバーが伝送できる物理的限界と考えられていた数値を突破した世界最高記録となる109Tbpsの伝送速度を実現したそうです。

これは1秒あたりDVD約2900枚分のデータを伝送できるという圧倒的な速度で、将来的には従来の1000倍以上の通信速度を実現することも期待されています。


光ファイバ1本の伝送容量109テラビットの世界記録を樹立|NICT 独立行政法人 情報通信研究機構

独立行政法人 情報通信研究機構のプレスリリースによると、同機構はオプトクエストと住友電気工業と共同で、新型の光ファイバー1本で今までの世界記録である毎秒69.1テラビットを大きく超えた毎秒109テラビット(=毎秒13.625テラバイト、4.7GBのDVD換算で2899枚分)の信号伝送実験に成功したそうです。

現在用いられている光ファイバーを用いた通信は、細い糸のような光ファイバーの中に「コア」と呼ばれる直径9ミクロンの通路を1本設けて信号を送信するというもので、コアのエネルギー密度は太陽の表面並みに非常に高く、注入できる信号出力の限界があり、最悪光ファイバー自体が熱破壊を起こす恐れがあるため、毎秒100テラビット近辺が限界だと考えられていたとのこと。

光ファイバーへの信号出力を大きくした場合の問題点。出力後の光の波形に歪みが生じる「非線形光学効果」や1.5Wの出力で熱破壊現象が発生する「ファイバーフューズ」などがネックとなり、1つのコアでは限界がありました。


「時分割多重方式」「波長分割多重方式」「多値変調方式」というようにデータの伝送方式が進化するにつれて、飛躍的に向上してきた伝送容量も、光ファイバー自体の限界によって2001年ごろから増加が鈍る形に。


しかし今回の実験では光ファイバー開発当時には技術的に難しいと考えられていた、1本の光ファイバーに複数のコアを備えた「マルチコアファイバー」を実現することで、毎秒109テラビットで16.8kmの伝送実験に成功。すべてのコアで良好な通信品質を確認したとされています。

従来の光ファイバーとマルチコアファイバーの比較。「それぞれのコアから漏れた信号が干渉しあう」「ファイバの結合時にコアがずれる」といった技術的問題が解決され、7コアを実現しています。


伝送実験の概要。15.58テラビットで伝送できる既存の光ファイバー7本を7コアのマルチコアファイバー1本にまとめています。


光ファイバーを道路に、情報(光信号)を自動車にたとえた場合、従来の1コアファイバーでは車線を横方向に拡張していく研究開発が行われてきましたが、マルチコアファイバーを使うと、コア数だけ階層的に車線を増やせることに。これにより他の光通信技術と組み合わせることで、現在の1000倍以上の伝送容量が期待できるとされています。


2012年には下り最大330Mbpsの高速無線通信「WiMAX 2」が開始されるなど、モバイル分野でも飛躍的な通信速度向上が実現される予定ですが、やはり問題となるのは基地局の基幹回線部分の通信速度。光ファイバー1本で圧倒的な通信速度を実現できるようになる画期的な技術であるだけに、早期の実用化が望まれるところです。

・追記
2012年9月に、この実験の10倍の速度である1Pbps(ペタビット毎秒)の伝送実験が成功しました。

12コアの光ファイバ1本で毎秒1ペタビットもの高速大容量伝送実験に成功 - GIGAZINE

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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