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「修理はユーザーの権利」と話すバラバラ分解集団「iFixit」の実態に迫る


最新のガジェットが発売されるたびに速攻でバラバラに分解している「iFixit」では、分解することにより、そのガジェットを自力で修理するのがどれぐらい難しいかを発表しています。iFixitはなぜこのようなことを行っているのか、どのような信念があるのかについて、IT関連メディアのMotherboardが迫っています。

How to Fix Everything | Motherboard
http://motherboard.vice.com/read/how-to-fix-everything

通常であれば購入した電子機器が故障したときは開発したメーカーに修理を問い合わせる必要があり、壊れた電子機器が高価なスマートフォンである場合、専用のサポートプランに入っていないと新品を購入するのと変わらない修理代金を支払うこともあります。


修理代金を支払わずに自分で修理するとしても、専門の知識がないと難しかったり、ユーザー自身が修理するのは保証の対象外になったりすることがあり、購入者が自ら修理を行うのはお世辞にもオススメできないのが現状。こういった環境を作ったメーカーを、iFixitの創設者でありCEOでもあるKyle Wiens氏は「ユーザーが購入した電子機器をユーザー自身が修理するのは当然の権利である」と批判しています。

Wiens氏が大学生のとき、何とかしてお金を貯めて高価なAppleのノートPC「iBook」を購入しましたが、購入から数日後に故障してしまい、インターネットで調べても公式の修理マニュアルを見つけられなかったため、自分で分解して修理することにしたそうです。しかし、Wiens氏は専門知識に乏しかったため、分解してもどこをどう直せばいいのかがわからず、結局修理できないまま元に戻すことになりました。

By Iñigo

「なぜ公式マニュアルが存在しないのか?」と疑問に思ったWiens氏が調べると、デジタル化された情報の著作権を規定する法律「デジタルミレニアム著作権法」に基づいて、Appleが公式マニュアルを公開していた数個のウェブサイトを閉鎖に追い込んでいたことを見つけました。「Appleが著作権を理由にユーザーが自分で修理するのを妨げていたことは衝撃的な事実でした」とWiens氏は当時の出来事を振り返っています。

Appleがユーザーによるデバイスの修理を許可していないことに疑問を抱いたWiens氏は、友人と協力してiBookとPowerBookの修理マニュアルを作成して1部15ドル(約2000円)で販売することにしました。売れ行きは好調ではなかったのですが、無料で修理マニュアルを公開したところApple関連のブログで取り上げられ、Wiens氏の名前はDIY業界で知れ渡ることに。

Wiens氏は「私たちは全ての電子機器にオープンソースの修理マニュアルが必要という判断に至りました。ユーザーが自分で電子機器を修理するには、企業に修理マニュアルを公開してもらう、もしくは自分で修理マニュアルを作るの2つしか選択肢がありません。私たちは、企業に修理マニュアルを公開させることをあきらめていませんが、今は自分たちで修理マニュアルを作って公開することに力を注いでいます」と語っています。

By The DEMO Conference

Wiens氏がiFixitを通して世界に訴えたいのは、購入した電子機器の修理に関するユーザーの権利だけではありません。Wiens氏がMotherboardに語った「私たちの競合相手はごみ捨て場です」という言葉には、同氏の電気電子機器廃棄物(E-waste)の問題解決に貢献したいという思いが込められています。

E-wasteとは電子機器製品の廃棄物のことであり、有害物質が含まれている場合もあって発展途上国で環境問題として取り上げられています。E-wasteによる環境問題を知ったWiens氏は「世界最大のE-waste処理場」と形容されるアフリカのガーナに出向き、実際に起こっている現場の悲惨さを目の当たりにしたそうです。Wiens氏によると「先進国がE-wasteをガーナを含めたアフリカ諸国で廃棄している」というのが一般的に捉えられていることですが、実際に起こっているのは「先進国で開発された製品を購入した発展途上国のユーザーが、製品の故障時に自分で修理することができず、直して再び使用する方法が全くないに等しいため、壊れたままE-wasteとして捨てるしかない」ということでした。

Wiens氏は「最新の電子機器の構造は年々複雑になっていくのに、開発するメーカーはユーザーに修理方法を公開してくれません。100万台のプリンターには100万通りの使い方があるように、捨てるのにも100万通りの捨て方があります。私たちはiFixitを通して人々に電子機器の修理方法を教え、E-wasteという大きな問題の解決に貢献したい。私がiFixitを運営しているのは、これが理由です」と主張しています。

By Curtis Palmer

企業が修理を独占していることに対して反対の姿勢を見せているのはiFixitだけではありません。インターネットオークションでは、個人が修理向けに作った「Xperiaのスクリーン」や「iPhoneのホームボタン」など既存の電子機器の部品が販売されているのを見かけることがあります。Motherboardによれば企業のロゴが入っていない部品を修理用に作って販売する行為はアメリカで違法にならないとのことで、アメリカでは電子機器の部品を販売したり修理を手がけたりする多くのショップが営業しており、その活動を支えるコミュニティまで存在しています。

こういった電子機器の修理を手がけるショップの多くは修理に必要な部品をアメリカ国外から輸入しているのですが、アメリカ合衆国税関・国境警備局により2014年に強制捜査が行われ、国内の多数のショップから1億6200万ドル(約199億円)相当の修理用部品が押収される事態に発展し、多くのショップが経営難に陥っているとのこと。

iFixitや修理専門ショップのように、ユーザーの修理をサポートする立場の人たちは政府や企業の反対を受けているわけですが、iFixitはDIYを支えるコミュニティと共に、ユーザーが自分で修理する権利を明確にするべく、今後も修理マニュアルの公開を続けていくそうです。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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