MacBookのApple純正ACアダプターの構造はどうなっているのか分解して確認
機械を見ると「中身がどうなっているのか分解したい」という衝動に駆られる男性は多いもので、最近ではスマートフォンやサイクロン掃除機、ファミコンのコントローラーまでバラバラに分解するレポートが公開されています。電源やマイコンなどを分解しまくってその構造をブログで公開しているケン・シリフさんが、高品質で知られるAppleのMacBook用ACアダプターを分解して、その構造を解説しています。
Macbook charger teardown: The surprising complexity inside Apple's power adapter
http://www.righto.com/2015/11/macbook-charger-teardown-surprising.html
シリフさんが分解するのはMacBook Pro用の型番「A1172」というACアダプター。木製の彫刻刀で継ぎ目からケースを開けると……
中身はこんな感じ。金属製の保護パーツは半導体放熱用のヒートシンクを兼ねているとのこと。
裏側にも金属パーツ。その下には基板が見えています。
スイッチング電源の大きな利点の一つは、広範囲の入力電圧に対応できること。単純なプラグ交換だけで、50Hzから60Hz、120Vから240Vまでをカバーするので世界中のあらゆる地域で使えます。ダイオードブリッジ整流器は、金属パーツで放熱しています。
放熱用の金属パーツを取り除くと電源の中身があらわになりました。
「Primary」と書かれた方が一次側で、紫色で示された部分にPFC回路などが含まれています。「Secondary」と書かれた左上の部分が二次側で、円柱状のコンデンサーは一次側、二次側ともに液体電解コンデンサが使われています。「Input」と書かれた部分から入った交流が、「DC out」と書かれた部分から直流に変換されます。
交流電力を整流して直流電力を得る際に、パルス状の電波波形になり効率が悪化します。そこで効率を高めるための回路がPFC回路で、基板裏にはPFC回路を制御するためのチップが搭載されています。
コンデンサーは電圧がかかると電荷を貯め、電圧がかからないと電荷を放出する性質があり、断続的な電流(脈流)を安定させる役割を担います。3本の液体電解コンデンサーの後ろに挟まるように見えるのはモニター回路のマイコンボードとのこと。
マイコンボードは25セント硬貨くらいのサイズ。MPS430マイクロコントローラーを採用しており、常時、電圧と電流を監視。問題が生じたときに充電をストップさせます。
基板裏側はこんな感じ。「SMPS controller」はスイッチング電源のキモとなる集積回路。チップは小さな抵抗、コンデンサー、ダイオードなどで囲まれています。赤い破線が描かれたラインで、高電圧側(左)と低電圧側(右下)を絶縁体で分離しているとのこと。なお、このACアダプタは、4.6A、18.5Vの85Wまで対応しています。
MacBookのMagSafeコネクタは、真ん中のピンがデータ用、その両サイドが電力用、最も外側がグラウンド。左右対称なので、上下の向きを気にせずに使えます。
これはMagSafeコネクタに含まれる小さな「DS2413」チップ。チップには充電器のシリアルナンバー、型番、消費電力などの情報が入っていて、この情報をMacBookが参考にしてACアダプターが使えるかどうかを判断しているとのこと。
なお、MacBookの純正充電器と、とある偽物の充電器の中身を比べるとこんな感じ。コンデンサーやコイルの数は雲泥の差。
裏面を見ても、回路の複雑さがまったく違うのが一目瞭然です。なお、偽物にはPFC回路はなし。中身を見れば、なぜ純正品が65ドル(約8000円)で偽物が15ドル(約1800円)という値付けであるのかよく分かります。
しかし、シリフさんによると、複雑で手の込んだ作りのApple純正のMacBook用ACアダプターは、皮肉にも信頼性は高くなく、しばしば発火事故を起こしているとのこと。期待通りの信頼性ではないが、内部の構造は一つの作品と呼ぶにふさわしいものではあると述べています。
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