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パリ同時テロを生き延びた「イーグルス・オブ・デス・メタル」が「あの時何があったのか」を語る約30分のインタビュー映像公開


11月13日(金)にフランスのパリで銃撃と爆発が同時に多発し、少なくとも130人が死亡しました。イーグルス・オブ・デスメタルというバンドのコンサート会場もテロの標的となり、現段階で89人の犠牲者を出していますが、事件から約10日を過ぎて、惨劇を生き延びたバンドのメンバーたちが「実際に会場で何が起こったのか」をインタビューで語っています。

Eagles of Death Metal Discuss Paris Terror Attacks - YouTube


インタビューはニュースサイトVICEの創設者シェーン・スミス氏によって行われました。


シェーン・スミス(以下、スミス):
まずは何があったのか、最初から振り返っていきます。コンサートの最中、3人の男が入ってきて銃を撃ち始めたのですね?


エデン・ガリンド(ギタリスト。以下、ガリンド):
最初はスピーカーの音だと思ったのですが、私はすぐに「違う」と気付きました。


これが実際の映像。音楽に混じってバンバンという音が会場に響き、ステージにいたバンドマンたちは体を低くしたり、バックステージに回ったりしています。


ガリンド:
それが何か分かった時、ジェシーが私のもとに走ってきて、ステージの角に集まろうと言いました。彼らが私たちをターゲットにしているのか、何が起こっているのか、分かりませんでした。

狙撃者が銃のカートリッジを交換しているのを見たのであろうスタッフの一人が「移動するぞ!」と叫び、私たちはステージから逃れました。階段を上り上の階に移動しようとしましたが、スタッフが銃を持っている人を上階に見つけたのです。


スミス:
どうやってその状態から逃げ出したのですか?

ガリンド:
もう一度階段を下りて非常口から外に出ました。小さな路地でしたが、ファンの子たちが私たちを見て助けてくれたんです。「こっちだ!」って。


スミス:
間違っていたらすみません。マット、あなたはファンと一緒に部屋に閉じ込められたんですよね?


マット・マクジャンキンズ(ベース&ボーカル。以下、マクジャンキンズ):
はい。銃撃が始まった時、僕はベースを投げてカーテンとモニターデスクの後ろに隠れたんです。するとお客さんたちがステージに上がって僕の方にやってきたんです。僕らのマネージャーはスティーブって言うんだけど、彼もやってきて、顔を見合わせたんです。そこには出口がなかったから。だからそれをみんなに説明しようとしました。


スミス:
あなたは走って逃げたんですね?

マクジャンキンズ:
みんな走って逃げました。本能的に。私から見えるところで銃撃が起こって、チカチカと光が点滅しているのが見えました。ステージから降りて逃げるか部屋に逃げるかの選択で、私は祈りながら部屋に逃げると、部屋では多くの人が助けあっていました。撃たれて血を流している人もいました。イスを使ってドアにバリケードを作って……。部屋には冷蔵庫とシャンパンのボトルがあったんだけど、それを持って。


スミス:
武器として?

マクジャンキンズ:
そうです。他に何もなかったから。

僕の目の前にいた女性は足を撃たれて血を流していて、男性や彼女の友だちが彼女の足を圧迫して、彼女が楽になるようにしていました。


マクジャンキンズ:
銃撃音がすぐ近くまで聞こえて10分から15分ほど続いた後に音がやんで少し安心していたら、また始まりました。そして爆発が部屋まで伝わってきました。多分、ビル全部が揺れたんだと思います。その時は誰かが部屋を吹き飛ばしたのか、分かりませんでした。でも、後からそれが銃撃犯が自爆した時の爆発だったと分かったんです。


スミス:
ジュリアン、あなたはドラムを演奏していて、何を見ましたか?

ジュリアン・ドリオ(ドラマー。以下、ドリオ):
初めはショックでした。銃撃の最初の音はすごくパワフルで、すぐに何か悪いことが起こったのだと分かりました。ほとんど反射的にイスから降りて、ドラムとアンプの間から様子を見ていたら、すぐに第二ラウンドが始まったんです。銃撃者が観客を撃ち始めるのを見て、私は体を低くしてドラムライザーの後ろを通り、ステージの右側に逃げました。ステージの反対側に到着すると、エデンがさっき言っていた通りみんながドアから逃げるところで、私は立ち上がって彼らについていきました。


スミス:
ジェシー、あなたは恋人のチューズデイを探していたんですよね?君には何が起こったのですか?

写真の女性が恋人のチューズデイ・クロス氏。


ジェシー・ヒューズ(ボーカル。以下、ヒューズ):
私は楽屋に逃げました。でも扉を開けてもチューズデイはいなかったので、再び廊下に出ると、狙撃者がいたんです。狙撃者は私の方に向き直り背中に背負った銃を取ろうとしたんですが、ドアの枠に銃が引っかかってそれができませんでした。そこで私は方向転換しました。みんなが私の後ろからついてきていたのを知っていたので、「こっちに来ちゃだめだ!」と言って来た道を戻ったのです。

非常口にまで到着しましたが、チューズデイは見つからなくて……。ジュリアンが「何をやってるんだ、早く行こう」と行ったのですが、私はどうすればいいか分かりませんでした。でもジュリアンを見つけたチューズデイの声が聞こえて、彼女の無事が分かりました。外に出たらみんながドライブスルーみたいに列を作っていたので、「走って!」と叫びました。みんなどうすればいいか、分かっていなかったんです。


スミス:
デイビット、あなたはステージの外にいたんですよね?

デイビット・キャッチング(ドラム。以下、デイビット):
いつもならフロアの真ん中にいるんですが、この時は部屋の後方、扉の方にいました。コンサートが始まって、みんな笑ったり踊ったり、一緒に歌ったりして、楽しんでいました。すごく感動的だったのですが、突然、どこかからノイズが聞こえたんです。私の真後ろで誰かが爆竹を使ったのかと思いました。


スミス:
銃撃はあなたの後ろで起こったということですか?

デイビット:
その通り。ドアを通ってやってきた彼らは無作為に銃撃を始めました。ケガをしたり、殺されたりで人々が地面に倒れだして、逃げる人も。でも逃げる場所なんてなかったんです。彼らは私の方にやってきました。私の方を見て撃とうとしましたが、弾はコンソールに当たって、ボタンがあちこちに飛び散りました。そこで私は銃撃された風に装って地面に倒れたんです。あちこちで人が撃たれて血を流していました。銃撃者は銃を撃ち続け、「Allahu akbar(アッラーフは偉大なり)」と叫んでいました。そこで私は何が起こったのかが分かりました。

私の前では女性が胸と足を撃たれて叫んでいて、彼らの注意を集めないためにも、私は彼女に静かにするように伝えました。

スミス:
どうやって逃げたのですか?

デイビット:
弾を詰めるため、銃声がやんだんです。彼はバックパックから銃弾を取り出そうとしていて、「弾を装填している、行くぞ!」と私は叫びました。私と周囲の人6人は地面から飛び起きて、部屋の右側から逃げました。弾を装填し終えた銃撃者が再び撃ち始めたため私たちは再び体を低くし、もう一度銃の装填が行われるのを待ってから動き出しました。

ショックを受けて動けなくなっている女の子を押したりしながら進んでいると、銃弾が壁や扉に当たるのが聞こえました。彼らがこちらに撃ってきたんです。ガラス製の扉を押そうとしたのですが、その前に銃弾が当たって扉が砕け散りました。砕けた扉から出て、倒れている体を飛び越えて逃げました。


スミス:
会場から逃げ出したあなたたちは警察に向かいました。そこで何をして、誰に電話をかけましたか?


ヒューズ:
私はジョシュに電話をかけました。何か問題が起こると、私たちはいつもジョシュに連絡するんです。そして……よく分かっていないことについて心配するのを、少しやめたんです。


ガリンド:
私たちが警察に到着したとき、そこはカオスでした。子どもたちは血だらけで、ニュースもまだ流れてなくて、何が起こっているのか分からなかったのです。携帯電話でニュース記事を読んだ人から情報を知りました。ジョシュに電話した後……


ここで、「ジョシュを呼んでくるよ」とヒューズが席を立ちます。


画像の男性がバンドの創設者でありドラマーのジョシュ・オム氏。


スミス:
ジョシュ、あなたが1998年にこのバンドを作ったんですね?長い間、バンドのメンバーからニュースやメールを受け取ってきたと思いますが……あの時何があったのですか?あなたはどう行動を取ったのですか?

ジョシュ・オム(イーグルス共同設立者。以下、オム)
実際に起こったことを受け止めるのに少し時間がかかりました。まだニュースにもなっていなかったですし。それからすぐツアーオフィスに行って、いろいろ……彼らを連れて帰るためにできることは全てしました。


ヒューズ:
私は何でもジョシュに頼ってきたんです。私はマットやデビーをステージに置いてきてしまっていて、彼らに何もなかったと思いたかった。ジョシュがいるとそういうことを考えなくていいから……。君が理解してくれるといいけれど。愛しているよ。君がいつもバンドを支えてくれているんだ。


イーグルス・オブ・デス・メタルを作ったのはジョシュ・オム氏とジェシー・ヒューズ氏の2人。スミス氏はバンドの全メンバーに対するインタビューとは別に、2人に対してバンドの今後などについてインタビューを行っています。


スミス:
ニュースを聞いた時、どういう状況でしたか?

オム:
スタジオにいた時にメッセージを受け取ったんですが、初めは意味が分かりませんでした。


オム氏がスミス氏に見せている実際にやりとりされたメッセージは、「みんな撃たれたんだ」「何だって?」「彼らがみんなを撃って、人質を取られたんだ」というもの。


ヒューズ:
ジョシュは一番最初に電話で状況を知った人の一人なんだ。

オム:
これまでバンドのメンバーでテロリズムについて話すこともありました。友人を守ったニック・アレキサンダーは……


ヒューズ:
彼は誰も傷ついて欲しくなくて、血を流しながら死んだんだ。


ここで同じ会場から生き残った人々の話に。ボーイフレンドと共に会場にいた女性は1時間ほど『殺人鬼たちに見つからないように』と願いながらステージの左側に隠れていたそうです。爆弾は彼女たちの隣で爆発しましたが、トランクが置いてあったおかげで爆発から逃れることができた、とのこと。「助かったのはバンドのおかげだ」と女性はつづっています。


ヒューズ:
何人かが私たちの楽屋に隠れたのですが、殺人鬼たちは楽屋に入ってきて、私のレザージャケットに隠れた子ども以外はみんな殺されてしまいました。

スミス:
殺人鬼たちがあなたの楽屋に入ってきたのですね?

ヒューズ:
はい。みんな恐怖しながら死んだふりをしました。こんなにたくさんの人々が殺されたのは、多くの人たちが友だちを見捨てなかったからです。多くの人たちが他の人々をかばったからです。

理由は自分でも分からない、としつつも亡くなった人たちの名前を紙に書き出したジョシュは「信じられない。彼らの両親と話したい」と発言します。


スミス:
彼らに何と伝えたいのですか?

オム:
何を言うべきなのか分かりません。これは本当に不運な出来事です。膝をついて、「あなたの望むことは何でも」って……。言う言葉がない、言葉では足りないんです。もしかすると何も言うべきではないのかも。

ヒューズ:
全てのロックンロールを愛する人たちに誓います。ロックンロールは私にとってよいものだし、かけがえのないものです。私に素晴らしい友人も授けてくれました。

もしアドルフ・ヒトラーに憎まれたのなら、それはすばらしいことです。私は奴らの怒りを収めるのに人生をささげるのではなく、友人を笑わせ楽しませることに時間を費やしたい。パリに戻って、演奏を行うのが楽しみです。パリに戻りたいし、バタクラン劇場が再オープンしたら演奏する最初のバンドになりたいと思っています。


スミス:
それはなぜ?

ヒューズ:
私の友人たちはロックンロールを聴きにきて、死にました。私はあそこに戻って演奏しないと。

スミス:
ツアーは最後まで行いますか?

オム:
ツアーは最後までやり終えなければなりません。私たちやファンのためだけではなく、ニックのためだけでもなく、私たちの生き方の問題だけではなく、これは政治的なものを越えた、人間性の問題なんです。


スミス:
人々は愛やサポートを示していますよ。


オム:
みんなが一致団結しているのは知っているけれど、正直に言うと今は「何かいいことが起こる」と思えないんです。みんなが力を合わせるチャンスなんだけど、何が起こっていて何をすべきかを人々が理解するのには時間がかかると思います。

……5分ほど休憩をとっても?


ここでインタビューは再びメンバー全員に対するものに切り替わります。

スミス:
イーグルス・オブ・デス・メタルはこれからどうなるのですか?


ヒューズ:
私たちはデュラン・デュランの「Save A Prayer」をカバーしているんですが、ファンたちが「イーグルス・オブ・デス・メタルをUKチャート1位にしよう」というキャンペーンを行っていて、それを知ったデュラン・デュランがSave a Prayerのカバー曲に対して入る印税を被害者のために寄付すると発表したんです。

オム:
それをきっかけに、新たな挑戦をすることにしました。私たちの曲で「I Love You All The Time」という曲があるのですが、この曲がカバーされたことによる印税は全て寄付しようと思っています。DJでもデスメタルバンドでも、誰でもいい。カバーしてくれたら全ての印税を寄付します。それから、iTunesやSpotify、Amazonなど、I Love You All The Timeのカバーを販売してくれそうなところには私たちが働きかけます。とにかく、カバー曲で寄付を集めて今回の銃撃事件で被害にあった人々に何かしたいんです。


スミス:
ファンに向かって何か言いたいことはありますか?

オム:
「動かないで、僕たちが行くから」


デイビット:
私たちがファンのことを忘れることは決してありません。がんばり続けましょう。

ヒューズ:
みんなを愛しています。私たちはきっと乗り越えられるし、力を合わせてやっていきます。みんなが私たちのためにやってくれたこと全てに感謝します。こんなに色んなことをみんな、特にフランスの人たちがやってくれるとは思っていませんでした。今、特にみんなと一緒だと感じていて、感謝しています。


ドリオ:
ライブでのお客さんと私たちとのつながりは特別なものです。そのことに感謝しているし、もう一度ファンたちに会えるのを楽しみにしています。

マクジャンキンズ:
音楽は私たちにとって人生そのもので、やめる方法はありません。でも、人々の話を聞いていると、「やめたくない」と思えるんです。もし私たちがコンタクトを取りたい人がいるなら、いつでも歓迎します。毎晩演奏して、彼らの笑顔を見られるからやっていけるんです。だからコンサートや演奏をするんです。それしか理由はありません。私たちには彼らが必要なんです。


ガリント:
私たちにメッセージをくれた全てのファンに感謝します。どれも本当に素晴らしくて、たくさんあるので、返信に時間がかかっていますが……。私たちの心は、フランスの人々や、被害者、家族と共にあります。

テロの標的となった「イーグルス・オブ・デス・メタル」はバンド名を聞くとメタルバンドを想像しますが、実はこのバンド名は「ゆず・オブ・デスメタル」ぐらいのノリで、全くデスメタルではなく、ジョークとして付けられているもの。以下の記事からイーグルス・オブ・デス・メタルがどういうバンドで、このバンド会場を標的としたテロにどういう意味が含まれている可能性があるのかを読むことができます。

町山智浩 パリ同時多発テロとイーグルス・オブ・デスメタルを語る
http://miyearnzzlabo.com/archives/31423

町山智浩)ねえ。でも、この人たち。ここに来た人たち、はっきり言ってバカロック聞いて笑う人たちだから、イスラム教徒とか移民に対して差別意識が高い人はいないと思うんですよ。あんまり。

(町山智浩)これは僕が自分で追跡してわかったんですけど、9月17日に彼らね、インタビューで。イーグルス・オブ・デスメタルのメンバーがロック雑誌の『ローリングストーン』っていう雑誌でインタビューに答えていて。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)こういう風に言っているんですよ。『僕が出した新しいアルバムは中東のテロに対するメッセージだ』ってはっきり言ってるんですよ。


(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)『いま、中東で起こっていることはとても悲しい。だから僕らはこういう音楽を出して、世界中がもっとみんな楽しくなって、怒りを鎮めて、女性や同性愛の人へのリスペクトももっとして、みんながお互いにもっと楽しく優しくなってほしいんだ。癒やす時なんだ』って言ってるんですよ。

(山里亮太)これ、じゃあテロリストたちはそれを見て、ひょっとしてここを標的にちゃんと決めて来たっていう可能性もあるっていうことですか?

(町山智浩)可能性もあると思いますね。僕はね。っていうのは、要するに楽しくしている人たちが憎い人たちなんだろうなって思うんですよ。やった連中は。まずひとつは。

◆追記 2015年12月10日 15:50
ロックバンド「U2」のパリ公演で、イーグルス・オブ・デスメタルが事件後初となるライブ演奏を行ったムービーが公開されています。

U2 & Eagles of Death Metal - People Have The Power @ Bercy Arena (Paris) - YouTube

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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