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広告削除アプリ「Crystal」が広告主向けに有料で広告を「表示させる」プランを開始


iPhoneのブラウザ「Safari」でコンテンツ内の広告をブロックする有料アプリ「Crystal」の販売が好調に進んでいますが、アプリの開発元は次の一手を打っているようです。Wall Street Journal(WSJ)が報じたところによると、Crystalを開発しているMurphy Appsは広告を出稿する側(広告主)に対し、有償で広告ブロックを回避するプランを提供していることが判明しています。

Apple Propels an Ad-Blocking Cottage Industry - WSJ
http://www.wsj.com/articles/propelled-by-apple-ad-blocking-cottage-industry-emerges-1443115929

Best-selling iOS ad blocker Crystal will let companies pay to show you ads | The Verge
http://www.theverge.com/2015/9/24/9393941/clear-ios-ad-blocker-offering-paid-whitelist

2015年9月にリリースが開始されたiOS 9以降では、ブラウザ「Safari」に広告ブロック機能が実装されています。この機能を使用するためにはサードパーティー製のアプリを別途インストールする必要があるのですが、そこで多く使用されているのが「Crystal」です。2015年9月17日にリリースされ、日本のApp Storeでは120円で販売されているアプリですが、すでに10万回を超えるダウンロードが行われ、Murphy AppsはAppleの取り分を除いたあとの利益として既に7万5000ドル(約900万円)を手にしていると考えられています。

Crystal


Murphy Appsを運営するDean Murphy氏にとって、わずか1週間で900万円という利益は好調以外の何ものでもないわけですが、Murphy氏はさらにこのアプリを活用したビジネスを展開し始めているとのこと。Murphy氏は、有名な広告ブロックツール「Adblock Plus」を開発・提供しているEyeo GmbHとの間で、AdBlock Plusが運用している広告ブロック回避の「ホワイトリスト」を共有することで合意に達しています。

AdBlock Plusで運用されている「ホワイトリスト」は、広告主がEyeoに料金を支払うことでAdBlock Plusのブロック機能を回避するというもの。既にGoogleやMicrosoftなどの企業が料金を支払ってブロックを回避していますが、このホワイトリストにリストアップされるためにはさまざまなハードルが設けられており、例えリスト入りを申請しても実際に認められる割合は高くないとのこと。その実態や、掲載が認められる「控えめな広告」の審査基準は以下の記事でも確認することが可能です。

Adblock Plusのホワイトリスト入りしているのは申込企業の9.5%にすぎないと公式発表 - GIGAZINE


Murphy氏は、App Storeでの売上に加え、Eyeo社から定額の支払いを毎月受け取ることになるとのこと。Eyeoとの連携についてMurphy氏は「コンテンツ提供者の利益を守るためです」とコメント。その理由を「いくらCrystalが多くのユーザーに使われるようになったとしても、ユーザーがコンテンツ提供者をサポートすることにはつながりません。私は、ホワイトリストを活用することは良いことだと思いますし、実際に私が見たところでは、いかにも「悪い広告」とみなされる広告をブロックしているように見受けられます」と語り、「控えめな広告」による広告収入をコンテンツ提供者にもたらすことで業界をサポートすることが目的であると見られています。

しかし、これら「ホワイトリスト」の仕組みは、一方では広告をブロックするアプリを販売し、もう一方では広告ブロックを回避する機能を有償で販売するというマッチポンプのようなものであるという批判があるのも事実。巨大なお金が動く広告プラットフォームの「金の流れ」を自らに引き寄せる方策が世界のあちこちで練られているようです。

なお、世界最大の広告プラットフォームの生みの親であるGoogleは、あるサイトに対して少額の寄付を行うことでページ内の広告を消したり、その広告スペースに別の自分の好きなコンテンツを表示できる「Google Contributor(貢献者)」の提供をアメリカで開始しています。これまで、Google Adsenseなどの広告システムを構築してきた同社が真逆とも言える個人寄付の仕組みを提供しているところが興味深いサービスといえ、以下のページではマット・カッツ氏がその狙いについて解説しています。

Give Google Contributor a try

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in ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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