サイエンス

農薬と同じくらい効果的な「アリ」を使った害虫駆除とは?

By NeilsPhotography

農作物を害虫から守るには農薬を使うのが一般的ですが、農薬には人体に有害な物質が含まれているほか、農薬を散布するための人的リソースや農薬の購入費用がかかります。そんな農薬と同等の効果が得られて、何もしないでも勝手に害虫を持続的に駆除できるという「アリ」を使った害虫駆除方法がオルフス大学の研究で明らかになりました。

Ants are as effective as pesticides
http://scitech.au.dk/en/roemer/5-2015/ants-are-as-effective-as-pesticides/

世界人口が増加している中、農家の人口は減少傾向にあるため、現代の農業には害虫を作業なしでコントロールでき、なおかつ持続可能な新しい方法が求められています。生態学者が発表したアリを使った害虫駆除策によると、化学薬品を使わないため安全で、コスト効率が良く、自動的に持続可能であるとのこと。


アリを使った害虫駆除策を発表したのはオルフス大学の生態学者であるJoachim Offenberg博士で、20年間アリについて研究を続けています。Offenberg博士が害虫駆除のため調査したのは「ツムギアリ」と呼ばれる、樹上に葉を丸めた巣を作って生息する熱帯種のアリです。このアリを選んだのはツムギアリが花や果実の近くに作る巣を害虫から守る生態を持っており、熱帯地域で自然の害虫コントローラーとしての役割を担っているためです。

ツムギアリを農薬として使うには、まず野生のツムギアリの巣を集めてきます。集めた巣をビニール袋に入れ、農作物に引っかけて砂糖水を与えれば、ツムギアリは農作物に新しい巣を建設し始めるとのこと。巣が完成したら、他の農作物と農作物の間をひもや木のつるでつなげると、「アリの歩道」となって農作物の間を行き来して害虫を駆除するようになります。気をつける点は、ケンカしないよう別の巣がある木とつなげないことと、乾期には少しだけ水分を与えること。木からペットボトルをぶら下げておけば、中にたまる水分を摂取させることができ、ほとんど手間はかからないそうです。

By ace_alejandre

Offenberg博士の研究では、特にカシューとマンゴーに集まる害虫駆除に効果を発揮。農薬で害虫駆除を行ったデータと比較すると、アリによるパトロールでは収穫量が49%も高くなり、収穫したナッツの品質も向上し、収益も71%も上昇したとのこと。マンゴーでアリを使った調査でも、農薬と同じかそれ以上の効果を示し、実の品質が向上したほか、収益は73%上昇するという結果を残しました。

「アリのテクノロジーは農薬より低コストで、農薬と同等以上の効果を発揮します」とOffenberg博士は説明します。ただし、ツムギアリの巣は葉のキャノピー(ひさし)が必要で、使用範囲は熱帯地方の林業に制限されるため、万能薬ではないということを警告。ヨーロッパではヨーロッパアカヤマアリを使った害虫駆除が有名であり、地面に生息するアリであれば、トウモロコシやサトウキビのような一年生作物の害虫駆除にも使用可能とのことです。

By Rushen

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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