地球外生命存在の可能性調査に向けてNASAの「エウロパ探査計画」にゴーサイン
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、かねてから準備が進められてきた木星の衛星「エウロパ」に探査機を送り込んで調査を行う計画の実行に向けてゴーサインを出したことを発表しました。エウロパには地表の下に大量の水が存在していると考えられており、地球外生物の存在を確認する大きな手がかりを得る調査ということになりそうです。
All Systems Go for NASA's Mission to Jupiter Moon Europa | NASA
http://www.nasa.gov/press-release/all-systems-go-for-nasas-mission-to-jupiter-moon-europa
実施に向けて本格的に動き出すことになったエウロパ探査計画について、NASAは以下のムービーを公開しています。
Alien Ocean: NASA’s Mission to Europa - YouTube
「木星の月」であるエウロパは地球の月とほぼ同じ大きさを持つ天体。表面は氷に覆われていますが、その下には大量の水あるいはシャーベット状の氷が存在していると考えられています。
いうまでもなく水は生命の存在にとって欠かせないもの。そのため、大量の水が存在するということは、生命が存在するための最初のステップをクリアしているといえます。
エウロパの構造は中心に核となる物質があり、地殻の上には厚さ160kmに及ぶ「海」が存在していると考えられています。以下の予想図で水色に示されている部分がエウロパの海で、その外側は氷に覆われています。
氷の表面を外から見ると、多くの筋状のひび割れが存在することがわかっています。これは何らかの動きが表面化で起こっていることを示しており、エウロパが「生きた星」であることを意味しています。
NASAはその詳細を調査するために、エウロパ探査に向けたコンセプト案を作成してきました。これは現在計画されている探査機の予想CG。
地球を旅立った探査機は、数年という長い期間をかけて木星、そしてエウロパへと到達します。
しかしここで1つの問題が存在しています。木星の周囲には、木星が生みだしている強い磁場と高い放射能域が存在しており、長期間の滞在は困難とされています。
そこでNASAは、木星を周回する軌道に探査機を乗せず、周期的に近づいたり離れたりを繰り返す軌道をとることを立案。木星の重力を利用して行ったり来たりを繰り返すスイングバイを45回実施することで、長い期間にわたる観測を実現しようとしています。
このほか、エウロパには興味深い現象も確認されています。宇宙望遠鏡「ハッブル」は、エウロパの表面から大量の水蒸気によって水柱が吹き上がる光景を観測しました。
その水柱は高さ200kmにまで達したとみられ、毎秒3トンもの水が噴出していたものと考えられています。
探査機は、そんな水柱めがけて突入する調査を行うことも計画されています。
噴き出す水の中に突入して、まさにその中身を「味わう」ことで、エウロパ内部の詳しい組成を調査することが計画されているのです。
これらを調査することで、なぜエウロパは氷に閉ざされずに水が存在できるのか、そのエネルギー源はどこからやってくるのかなど、多くのメカニズムを解明することが期待されています。
もしエウロパで生命が存在し得るとすれば、それは地球と直接関係のない場所でも生命が存在できるという証しになります。そしてそれは、広い宇宙の中で、地球以外にも生命が存在することを強く確信させることにつながるのです。
これまでNASAではエウロパ探査計画のコンセプト案(Concept)を作成してきましたが、その審査が完了して計画(Formulation)と呼ばれる実際の開発段階に入ったことが発表されました。NASA・サイエンスミッション理事会のジョン・M・グランズフェルド副長官は「今日、われわれは地球以外での生命の兆候を探索するというミッションがコンセプト案から計画段階へ進むエキサイティングな一歩を進めることになりました。過去20年に行われたエウロパの探査では、われわれをかき立てるさまざまな手がかりを得ることができました。そしていま、われわれは人類が心の奥底に持っている疑問に対する答えを探す時がやってきたのです」と語っています。
1990年代に行われた探査機「ガリレオ」による木星探査では、地球の月とほぼ同じ大きさを持つエウロパは氷に覆われた表面の下に、深さ160kmにも及ぶ水の海が存在しているという有力な証拠が発見されています。これは、地球の海で最も深いマリアナ海溝の約1万1000メートルと比べても16倍の深さを持つもので、エウロパにはなんと地球の2倍もの量の水が蓄えられているとも考えられています。塩を含む大量の海水と隆起の多い海底の形状、そして木星の引力が海の潮汐(満ち引き)を起こすことで生ずる地殻の潮汐加熱のエネルギーと、それによって生成される化合物質が組み合わさることで、エウロパには原始的な生物が生命を保つための養分が存在していると考えられています。
この計画を実行するためには、探査用衛星を数年かけて木星の衛星軌道に投入するロケットを2020年代に打ち上げることが必要になります。衛星は木星の周回軌道を2週間周期で回りながら、エウロパの近くをかすめて飛ぶスイングバイを45回にわたって行って、氷に覆われたエウロパの表面を高解像度カメラで撮影し、その組成や内部の様子を調査することが予定されています。
By DVIDSHUB
このプロジェクトのマネジメントに関しては、NASAのジェット推進研究所(JPL)が任務を負うことになっており、同研究所は2011年からジョン・ホプキンス大学 応用物理研究所(APL)と連携して複数回にわたるフライバイ飛行の研究を進めています。また、探査機に搭載される機器類はAPLおよびJPL、そしてアリゾナ州立大学、テキサス大学オースティン校、サウスウェスト研究所、コロラド大学などが共同で担当することが発表されています。
エウロパ計画の担当役員であるジョーン・サルト氏は今回の認可について「科学にとって素晴らしい日です。エウロパに生命が存在し得るのか、これを知らしめるミッションにおけるマイルストーンとなる最初の一歩を踏み出せたことに興奮しています」と語っています。
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