なぜアメリカがFIFAのスキャンダルを取り締まろうとしているのか、一体何が起きているのかまとめ

By Ryan Fung

国際サッカー連盟(FIFA)は、スイスに本部のあるサッカーの国際統括団体です。競技団体としては世界最大規模を誇り、世界でも有数の裕福なスポーツ関連団体としても知られるFIFAですが、多大な利益をもたらす「ワールドカップの招致」や「放送権」などを巡り、長年「贈収賄疑惑」がささやかれ続けてきました。

そんなFIFAについにアメリカとスイスの司法当局による捜査のメスが入り、これまで関係者により行われてきた組織的な違法行為や贈収賄の数々が明らかになり、FIFAの現副会長であるエウヘニオ・フィゲレド氏とジェフリー・ウェブ氏を含む関係者7人が逮捕されています。

FIFA副会長ら9人を収賄の罪で起訴 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150527/k10010093841000.html


FIFA副会長ら7人逮捕 W杯放映権など巡り収賄容疑:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASH5W6HL4H5WUHBI013.html


今回逮捕されたのは、FIFAのエウヘニオ・フィゲレド副会長とジェフリー・ウェブ副会長、その他の関係者5名の合計7名。アメリカ司法省では、逮捕した7名を含む関係者8名を起訴しています。フィゲレド副会長はウルグアイ出身で、アメリカ国籍も持つ元サッカー選手。引退後、ウルグアイのサッカー協会や南米サッカー連盟などFIFA傘下の組織で会長などを務め、2014年夏から現職にあります。ウェブ副会長はカリブ海にあるケイマン諸島出身の元銀行マンで、2012年から現職。FIFAには現在合計8人の副会長がいますが、そのうち2人が起訴されたということで大きな注目が集まっています。

◆現役副会長2名はなぜ逮捕され訴えられたのか
アメリカ司法省によると、起訴された9人は1990年代初頭から24年間にわたってスポーツ関連企業から賄賂を受け取り続けていたそうで、その見返りに中南米で開催されるサッカーの試合やそれらの放送権、スポンサー権などを優遇していたと見られています。9人が受け取った賄賂の合計は推定で1億5000万ドル(約186億円)を超えるとされています。

フィゲレド副会長、ウェブ副会長ら7名は5月28日・29日に開催されるFIFA総会のためにスイスに集まっていて、アメリカ側からの要請を受けたスイス司法当局により5月27日、FIFA本部のあるスイス・ジュネーブで逮捕されました。

By Images Money

なお、贈収賄の疑いで起訴された今回の件とは別に、「2010年に開催地が決定した、2018年ワールドカップロシア大会と2022年ワールドカップカタール大会の招致でも不正が行われた疑いがある」として、スイス司法当局は独自に調査を進めていたことを発表。既にスイスの検察により、FIFA本部から関連書類が押収されているそうです。

起訴までの流れの詳細については以下のページにまとめられており、あまりにも真っ黒過ぎるFIFAの内情の極々一端を垣間見ることができます。

2010年から現在までのFIFA汚職報道まとめ - 想像力はベッドルームと路上から


◆なぜ今回の件はアメリカ主導で進められているのか
ここで気になるのが、「なぜアメリカ主導でFIFAの副会長ら9人が起訴されることになったのか?」という点です。アメリカの当局が外国籍を持つ人物を起訴する場合、被疑者の犯行がアメリカと関連していることを証明する必要があるのですが、今回の贈収賄事件の場合、賄賂の受け渡しやマネーロンダリングなどが全てアメリカ国内で行われていたため、起訴までの一連の流れは非常にスムーズに行えたそうです。ちなみに、事件の捜査はロレッタ・リンチ司法長官の指揮のもと司法省・FBI・IRSが合同で行っており、これは、「マフィアの壊滅作戦時くらいにしか前例がない」という大規模な捜査だとのこと。

Fifa scandal: Why the US is policing a global game - BBC News
http://www.bbc.com/news/world-us-canada-32889845


FIFAとその傘下のサッカー連盟は、ワールドカップなど連盟主催の大会のスポンサーを募り、放送権を販売することで活動資金を得ています。今回起訴された9名は、特定の企業から賄賂を受け取ることで、不正に大会のスポンサー権や放送権を斡旋してきたとみられます。

事件に関する記者会見で、ケリー・カリー検事は「この種の贈収賄や不正行為は、サッカー界では20年以上に渡って行われている。そして、我々の調査自体も長期間行われてきた」と述べており、アメリカ司法省がいかに本気で捜査に取り組んでいるかが分かります。なお、アメリカ側がFIFA幹部による贈収賄事件以外のFIFAの暗部にまで捜査の手を進めているかどうかは不明です。

最前列の1番右に座っているのがロレッタ・リンチ司法長官。

By Douglas Palmer

◆「コパ・アメリカ」創立100周年大会も不正行為による招致
FIFA傘下で、北アメリカ・中央アメリカ・カリブ海諸国にあるサッカー協会を統括する北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)のマイアミオフィスは、FBI捜査官による調査をすでに受けています。起訴されたウェブ副会長はCONCACAFの現会長であり、同じく起訴されたジャック・ワーナー氏はCONCACAFの元会長であるため、FBIは今回の贈収賄事件に関する物証を探しているものと見られますが、その詳細は明かされていません。

なお、贈収賄で取引されていた権利の中にはCONCACAFが統括する地域でのメディアや予選に関する市場開拓権が含まれており、北中米カリブ海のサッカー大陸選手権大会である「CONCACAFゴールドカップ」や「CONCACAFチャンピオンズリーグ」といった国際的な大会も大きく関わっていたものとみられます。なお、南米サッカー連盟が主催する世界最古のナショナルチームによるサッカー大陸選手権大会である「コパ・アメリカ」が、創立100周年を祝う記念大会を2016年にアメリカで開催する予定となっているのですが、これはジェフリー・ウェブ氏が不正行為で招致したものであることが明らかだそうです。

記者会見の際、リンチ司法長官は「我々の調査により、国際的なスポーツマンシップが責任者の懐に1億1000万ドル(約136億円)を超える大金を集めるための道具に成り下がっていたことが明らかになった。この1億1000万ドルというのは、ワールドカップを招致するのに必要な正当なコストの約3分の1である」とコメントしています。

By alex de carvalho

なお、一部の報道では、贈収賄事件の調査にはCONCACAFの元事務局長であり、FIFAの元理事でもあるチャック・ブレイザー氏が協力していたとされています。ブレイザー氏はCONCACAFの資金を1500万ドル(約19億円)以上も横領したと言われており、アメリカの政府当局から司法取引を持ちかけられていたのではないかと考えられています。

連盟内部で大きく揺れ動くFIFAですが、5月29日の総会後には会長選を控えています。会長職には1998年からゼップ・ブラッター氏が就いていて、事件発覚までは再選確実とみられていましたが、状況は不透明になってきました。

・関連記事
世界最高の選手リオネル・メッシの何がすごいのかが統計的データ分析で明らかに - GIGAZINE

「キャプテン翼」からサッカーの素晴らしさを教えてもらった世界中のプロ選手たち - GIGAZINE

Googleがビッグデータを解析してW杯を予測すると全試合的中、準々決勝も当ててしまうのか? - GIGAZINE

統計データで振り返るFIFAワールドカップ・ブラジル大会 - GIGAZINE

サッカーの無回転キックやフリーキックがなぜあのような軌道をとるのか? - GIGAZINE

1930年のウルグアイ大会から2010年南アフリカ大会まで、FIFAワールドカップ歴代公式ボールを振り返る - GIGAZINE

132

in メモ, Posted by logu_ii