精密かつ正確に立体物に水圧転写することが可能になる画期的な印刷技術「Computational Hydrographic Printing」
水に浮かべた特殊なフィルムに立体物を沈め、水圧の力で均一にデザインをプリントする「水圧転写」は、マグカップから車のホイールにまで印刷できる手法として知られていますが、凹凸の多い立体物だと正確に転写ができないこともありました。そこで、3Dモデルを使って図柄を作成、フィルムを出力し、コンピューターで印刷を制御することで、驚くほど緻密で正確な水圧転写を可能にしたのが「Computational Hydrographic Printing」です。
Computational Hydrographic Printing - hydrographics.pdf
(PDFファイル) http://www.cs.columbia.edu/~cxz/publications/hydrographics.pdf
実際に水圧転写を行う様子は以下のムービーから確認可能となっています。
Computational Hydrographic Printing (SIGGRAPH 2015) - YouTube
通常の水圧転写技術は以下のような感じ。まず、図柄の入った特殊なフィルムを水の上に浮かべます。
そこにオブジェクトを持ってきて……
ずぶりとフィルムに沈めます。
水圧が均等にかかっていくため、空気やしわなどが入ることなく、オブジェクトの表面にきれいに図柄を転写可能なのですが、手作業で行うため「ここにこの柄をのせたい」というような細かな設定ができませんでした。
そこで、コロンビア大学の研究チームが開発したのが、コンピューターを使った水圧転写装置。三脚を2つ並べ、その上に十字型の装置を設置しています。
装置に印刷を行っていきたいオブジェクトを取り付けます。
フィルムのどの部分がどういう形でオブジェクトに転写されていくのかは、以下のように、事前にコンピューターでバーチャルシミュレーションが行われています。
そこから計算して図柄を作成。
従来の水圧転写と同じように、水面にフィルムを浮かべてオブジェクトを沈めていくと……
顔の凹凸に合わせたプリントが可能になるというわけです。
右下にあるのは、実際にプリントする前にコンピューターで作成されたデジタルモデルですが、比較してみてもかなりの正確性でプリントが行われていることが分かります。
さらに、水圧転写を複数回に分けて行うことで、立体物の全体にくまなく印刷することも可能です。まずは顔。
体の右側面。
左側面も印刷すると……
ヒョウ柄の猫の置物が完成。
後ろ姿。
どこから見ても隙間なく印刷できています。
この他、シマウマや……
アーティスティックなウサギ。
ゾウのマグカップなど。
人間の顔。
地球儀なども簡単に作れてしまうわけです。
コンピューターで図柄を作成・出力して、印刷も自動で行うため、特殊な技術を持たなくても簡単に水圧転写が行えるようになります。現在は家庭用の3Dプリンターやフライス版が販売されていますが、Computational Hydrographic Printingが家庭用のデバイスとして市場に出ることになれば、手軽な印刷技術としてこれまで以上に水圧転写が活用されることになりそうです。
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